シリアスBL番外5
 


イングラムが執務室へ戻ると、クォヴレーが昼寝をしていた。
ソファーに寄りかかり、手にはリモコンが握られている。
どうやらクリスマスの”サンタ”からのプレゼントを見ていたらしい。
微笑を浮かべながら自分の上着をクォヴレーにかけてやろうと近づいたその時、
イングラムはハッとした。
なぜならばクォヴレーは脂汗をかきながら、
眉間に皺を寄せ苦しそうに呻いているからだ。
唇がブルブル震えて、声にならない言葉を言っており、
読唇術を心得ているイングラムはすぐに何をいっているのか理解する。





『もう・・許してくれ・・・』




確かに小さな唇はそう『言って』いた。




















キャリコが任務から帰還すると、
幼いバルシェムがホォ・・とため息をついていた。
手元には『地球』の雑誌が置いてありなにやら食べ物の特集のようである。

「(何を見ているんだ?)」

足音を立てずに背後へと近づいて、雑誌を盗み見る。
雑誌にはこう書かれていた。


『クリスマスケーキ特集!!』




「(クリスマス???地球の行事か???)アイン」
「!?」

誰もいないと思っていたのに急に声をかけられ
アインは心臓が飛び出てしまうのではないか?
驚きに目を見開きながら後を振り向いた。
そこには仮面で表情が分からないとはいえ、
不機嫌な雰囲気をかもし出している『ギメル』、キャリコが立っていた。

「キャリコ・・・いつからいたんだ?」
「今さっきだ。」
「そうか・・・」

アインは静かに瞳を伏せる。
キャリコの機嫌が悪い・・・、
彼の纏っている空気だけでそのことがアインはわかるようになっていた。

「(また指令に何か言われたのか??
 今夜は部屋に呼ばれそうだな・・・ウサをはらすために)」

案の定アインは「今夜部屋に来い」とキャリコに命令された。
逆らうことを教えられていないアインは、
長い睫を伏せながら小さく頷きキャリコを残してその部屋を後にする。
『身支度』をするためにだ。
トボトボと部屋を出て行くアインの姿が完全に見えなくなると、
キャリコはドカッと今までアインが座っていた席に腰を下ろした。
そして仮面を外し、目を押さえながら天井を見上げる。

「・・・どうして俺はあんな風にしか接せないのか・・・フフフ」


















シャワーを浴び”脱がされやすい格好”でアインはその部屋の扉をノックする。
中から冷たい声で「入れ」と聞こえてきたのを確認すると、
大きく深呼吸をした後、憂鬱な気分で扉を開け中へと入った。

「キャリコ・・・?」

部屋の明かりは既に落とされていた。
目を凝らし奥を見ればなにやらボゥ・・・と光っている。

「・・・・?」

見たこともない『光』を不振に思いアインはゆっくりソレに近づいていく。
近づくにつれその光の向こうに誰かがいることを確認できた。
青い癖のある髪が肩まである男。
日中は仮面で素顔を隠しているが、夜だけは素顔をさらけ出す。
『光』へ完全に近づくと、男の細い目が更に細まった。

「・・・!」

その顔は滅多に拝見できない『微笑』だ。

「遅かったな、アイン」
「・・・すまない」
「おかげで生クリームが少しだけ乾いてしまった」
「生・・・クリーム???」

首を傾げると、細長い指がすっとあの『光』を指差した。
そこには先ほど雑誌で見た『ケーキ』というお菓子があり、
真ん中に1本だけ蝋燭が立っており火が灯っている。

「(あの光の正体は蝋燭か)」

知識では知っていても実際に蝋燭の明かりを見るのは始めてであった。
小さいけれども一生懸命に明かりを作り出している蝋燭。
アインは蝋燭の光に魅入られるように見つけていると、
クスッと小さく笑うキャリコの声が遠くから聞こえてきた。

「なかなか綺麗なものだな、蝋燭というのは」
「・・・・そうだな」
「一見、微風だけで直ぐに消えてしまいそうなのになかなか粘り強い」
「・・・・・そうだな」
「ユラユラ揺れて・・儚げで・・・直ぐに消えてしまいそうで、
 ・・だがなかなか消えなくて・・・アインのようだ」
「・・・・え?」

それは誉め言葉なのだろうか?
蝋燭から視線をキャリコへ移し、まっすぐに見つめた。
するとキャリコも見つめ返してきてフッと笑うのだった。

「!!」

優しい微笑にアインは心臓が締め付けられていく。
いつもいつも厳しい目や嫌悪の目で見つめられ、乱暴に抱かれる。
そのたびに避けそうになる無い筈の『心』。
けれど時折こうして恋人に向けられるような目で見られてしまえば、
アインの思考回路は混乱し壊れていく。


二人はしばらくだまったまま見詰め合っていた。
だがキャリコは見詰め合うことに飽きたのか、
アインの腕を引っ張り自分の膝の上へ座らせると、
フォークでケーキを一口サイズに切り、ソレをアインの口元へ運んできた。

「急いで用意したから安物だが・・・・
 我々はお菓子とは無縁の生活をしているし、
 安物でも美味しく感じるだろう?・・・さぁ?」

唇に生クリームが触れる。
すると鼻にバニラエッセンスの甘い臭いが漂ってきて、
アインのお腹がぐぅ〜となった。
はしたない、と怒鳴られるのを覚悟し目を瞑ったが、
返ってきたのは小さな含み笑いだけで咎められはしなかった。

「・・・・んっ」

スルッと口からフォークが抜ける。
するとアインの口周りには口に入りきらなかった生クリームがつき、
キャリコがソレをそっと舌で拭い舐めとった。

「甘いな・・・」

甘いものは好きではないのか少し眉間がよるキャリコ。
だが直ぐに表情を元に戻し、
再びケーキをアインの口へと運び始めた。







やがてケーキがなくなるとお皿の上には小さな人形だけが残った。
赤い服に赤い帽子、口には白い髭がついている。

「・・・あれは?」
「あれはサンタだ」
「さんた???」
「地球のクリスマスという行事において、
 プレゼントを配りまくるという変わり者だ」
「・・・・ふーん・・・あれも食べられるのか?」

キャリコの膝の上、アインはジーッとサンタを見つめる。
溶けやすい材質で出来ているのか、サンタは少しだけ溶けかかっているようだ。

「もちろん食べられる。だがアレは甘いから最後にとっておいた。
 一番甘いものを先に食べるとケーキの味が分からなくなうからな」
「そんなに甘いのか?」

口を斜めに上げキャリコはサンタを手に取りソレを口に含む。

「・・・・ぁ」

アインが残念そうに小さく声を出すと、目を細め後頭を固定した。
そしてゆっくりと口を近づけていく・・・。

「・・・・ん・・・んん」

キャリコの唾液と一緒に渡されるサンタ。
サンタは砂糖で出来ているのかむせ返るほどの甘さであるが、
時折眉をしかめるような苦さが舌を伝う。

「んんっ」

口に含んでいるサンタの味に異常さを感じアインは頭を振る。
いつもならそんな抵抗をしようものなら、尚のこと手ひどく扱われ、
気絶するほど快楽と痛みの間を彷徨わされるのだが、
今回は以外にも唇が離れて行き、
中のサンタもキャリコと一緒に出て行ったのだった。

「・・・・?」

抵抗したのに何故咎めないのだろうか?
アインはキョトンとキャリコを見上げるが表情は確認できなかった。
なぜならキャリコはフッと息で蝋燭を消してしまい、
部屋には明かりがなくなってしまったからだ。

「あっ」

キャリコに抱きかかえられ、そのままベッドへ投げられる。
暗闇なのにまるで見えているかのような的確な手つきでボタンを外されていく。

「キャリ・・・っ!!」

上着を脱がされそのままうつぶせにひっくり返されると、
脱がされた上着で両手を戒められる。
手を拘束され行為に及ぶのはいつものことだ。
キャリコは何故かいつもアインを拘束し、いたぶりながら犯すのだ。

「キャリ、コ・・・!!・・・あぁっ!!」

あっという間に下肢に纏っているものを脱がされたかと思うと、
妙な異物感が蕾に触れ、中に進入してきたのだった。

「なに、を、入れて・・・?」

振り返ろうとするが、直ぐにキャリコが覆いかぶさってきて、
性器を扱きながら耳元で囁いてくる。

「んぅっ!!」

直接的に与えられる刺激にアインは背を撓らせ、
キャリコの言葉に耳を傾ける。

「最後に食べたサンタ・・・甘かったか?」
「・・・・くぅ・・・うぅ・・・」

長い指がたくみに絡まり、敏感な部分を嬲ってくる。
アインは足に指でシーツを掴み、口でシーツを銜えコクコク頷く。

「甘かったか・・・まぁ、砂糖の塊だからな。
 だが・・・少し苦味もあっただろう?」
「・・・・った・・・」
「ん?」
「苦かった・・ひぁっ・・!!・・・」

耳朶をかじられアインは悲鳴をあげる。
ネットリと耳の中まで舐められ、
キャリコが胸の飾りに触れる頃には既にそこは硬くなっていた。

「んんぁ・・・あっ・・・」
「苦かったか・・フフ・・・そうだろうな」
「・・・?」
「アレは中に媚薬が入っていたからな。お前はまだ耐久がないから効くだろう?」
「び、・・びや・・・く・・?」
「セックスの際、気持ちよくなれる薬のことだ」
「・・・あ、・・」
「あの媚薬は飲んでもいいが、内部に直接入れたほうが効き目がいいんだ。
 だから入れてやったぞ?・・・お前の・・・ココに」
「!!」

突起を弄っていたはずの指がいつの間にか後孔へ移動しており、
そこに宛がわれていた異物が更に奥へと入れられていく。

「あっ・・・あ、くぅ・・・っ」
「あぁ・・・砂糖だから中の熱で溶けて薬が染み出し始めているな」
「・・あぁ・・か・・ゆ・・い・・・」
「フフ・・・」

キャリコの指がカリカリ襞をなぞっていく。
そのたびに触れられた場所からなんともいえない疼きが湧き上がり、
アインの身体は沸騰していくのだった。

「なかなかの効き目だ・・・どれ、もっと奥まで入れてみようか?」
「やっ・・!あぁぁぁ!!」

冷たく細長い何かが中に入っている砂糖のサンタを上へと押し上げていく。
一体何で押し上げたのか?
確かめるべく後を振り向くが、見たものに驚愕する。
いつの間にベッドライトをつけたのかアインの身体は薄暗く照らされており、
振りむいたキャリコの表情伺う事が出来た。
キャリコは冷たい笑みを浮かべゆっくりと蝋燭でサンタを奥へ奥へ入れていく。

「い、いやだっ!!」

身をよじりキャリコから逃れようとする。
しかしそれがよくなかったのか、下半身に力が入ってしまい、
何かが弾ける音がするのだった。
足の間から甘ったるい匂いのするドロリとしたものが腿を伝っていく。

「馬鹿だな、力を込めるから砂糖が割れて媚薬が流れ出してきてしまったじゃないか」
「・・・、うぅ・・・」
「中が・・・奥が疼くんじゃないか・・・?」

キャリコの指が既にヒクつき始めている入り口をそっとなぞった。
そんな些細な刺激だけでアインは目を見開き嬌声を上げてしまう。

「あっ・・・いや・・だ・・」
「フフ・・痒いだろう?アイン・・ココとか・・」

蝋燭をゆっくり動かし、キャリコは的確に中の弱い部分をなぞっていく。
最も感じる前立腺を擦られ、身体はブルブル震え真っ白になっていく。

「痒い・・か、ゆい・・・奥が・・・あぁぁぁっ」
「奥?・・・ここか?」
「ちがっ・・・」

ぬちゅん、という音とともに内壁を蝋燭で擦られる。
けれどそんな細モノでの刺激では足りないのだ。
緩い擦られ方では足りない。
蝋燭の長さでは奥の痒い場所まで届かない。

「もっと・・・奥、だ・・・」
「もっと?・・・だが蝋燭では届かないぞ?」
「・・・・う、ぅぅ・・・」
「アイン?・・・どうするんだ?蝋燭では届かない、どうしたらいい?」

どうしたら身体の奥底から湧き上がってくる疼きをとめることが出来るのか?
内壁の痒さは徐々に我慢できる範囲を逸脱していき、
アインの眦にうっすらと涙が溜まり始める。

「あぁ・・・っ、・・助けて・・くれ・・キャリコッ」

必死で懇願する。
けれど背後のキャリコの声はあくまで冷たいものだった。

「どうすれば助かると思うんだ?」
「・・・・っ・・」
「お前は痒いときいつもどうしている?」
「・・・か、・・痒いとき・・・?」

自分は痒いときどうしていただろうか?
喘ぎ声を漏らしながらアインは必死で考える。

「かく・・・かいて・・・あぁぁっ」

キャリコの細長い指が蕾の入り口をそっとなぞり、
数ミリだけ中へ進入させ入り口をかいた。
たったそれだけの刺激でアインは仰け反り甘い声を上げてしまう。

「もっと・・もっと・・奥・・・!!」
「もっと奥か・・・奥をどうして欲しい?」
「擦って・・・擦って・・・かいて・・くれ!」
「・・・何で?」
「・・・なに・・・で?」

今まで味わったことのない疼きにアインはわけが分からなくなっていた。
虚ろな目のまま背後を振り向きはしたなく口から涎を流している。
その涎をキャリコがそっと拭ってやると、アインの身体はビクッと震え、
懇願するように一心にキャリコを見つめ続ける。

「アイン、今のお前を救ってくれるモノは唯一つだ」
「・・・唯一つ・・?それは・・・なんだ・・・?」

力の入らない身体をなんとか動かしキャリコと向かい合う体勢になる。
キャリコはいつものように冷たい笑みを浮かべており、
どこもかしこも敏感になってしまっているアインの頬を殊更優しく撫で始めた。

「・・・ぁっ」

頬を撫でられただけなのに、全身が粟立っていく。
これ以上は堪えられない、アインはもう一度キャリコに懇願した。

「・・・助けてくれ・・・」
「あぁ・・・、お前が望めば俺はいつでもどこでもお前を助けてやろう。
 ・・・さぁ、アイン・・・今のお前の状態を救えるのは俺の何だ?」
「今の・・・オレを救えるもの・・?」
「奥をかいて、擦って欲しいのだろう?
 指でも蝋燭でも届かない最奥を・・・
 指でも蝋燭でも届かないのであれば、あとは何が残っている・・・・?」

アインの瞳が見開いていく。
そこまで道筋を立てて言われればどんなに鈍い人間でも気が付くだろう。
アインが悟ったことを感じ取ると、
嫌な笑みを浮かべたまま、アインの手の拘束を解くキャリコ。
縛られていたせいで痺れて震えている手を、
キャリコの下半身へ導いていくアイン。
そっとその場所に触れるとそこは既に軽く湿っており十分すぎるほど大きさを誇示していた。
ゴクンと生唾を下し、ゆっくりファスナーを下ろしておく。
下着から猛々しいものを取り出すと、アインは理性も何もなくソレにむしゃぶりついた。

「・・・・っ」

キャリコは吐息を漏らし、アインの髪に指を絡ませる。
すでに十分すぎるほど成長していというたソレは
アインの口の中で益々大きさを増していく。

「んっ・・んっんっ」
「・・・美味そうな声をだして・・・淫売が・・・」
「・・ふぅ・・・んっ」

なじる言葉に胸が締め付けられていく。
けれどそれ以上に身体は切ない状態になっているので、
アインは必死に奉仕をし続けた。
経験上アインは分かっていた。
キャリコは一度口でイかせなければ決して挿入行為に入らないことを。

「・・・、!!あぁっ」

必死に口を上下させていたのにその行動は後ろ髪を引っ張られることで阻まれてしまう。

「・・・は・・・あぁ・・」

舌と性器の間に粘ついた糸が出来ている。
アインの口の周りにはアインの唾液と
キャリコの先走った精液が混じりあい怪しい光を放っていた。

「・・・いい表情だな・・・・口と顔と・・・どちらがいい?」
「・・・・あっ・・あ・・・く・・・ち・・・」
「口?・・・そんなに飲みたいのか?」
「・・・口・・・痒い・・・あれ、舐めた・・・から?」
「あぁ・・・なるほど・・・では少しだけかいてやろうか?」
「・・・・ふぅ・・・んっ・・・!!」

キャリコは後頭を掴んだまま強引に唇を寄せてきた。
舌で上あごを何度もなぞり『かいて』やる。
アインは何度も身体を痙攣させ・・・そして・・・・。

「・・・・!!あっ」
「!」

びゅくっ・・・と、キャリコの顔に白濁したものが飛び散った。
まさか口の中を嬲られるだけで爆ぜると思っていなかったアインは、
青い顔でキャリコをまっすぐに見つめた。

「・・・・俺より先にイくなと・・・躾けたはずだが・・・?」
「・・・・・・!ひっ・・・あぁぁっ」

射精直後でまだ敏感な性器を力任せに握られる。
悲鳴をあげてアインは何度もキャリコの手を叩くが、
キャリコは冷笑を浮かべながらのたうつアインを見ているだけだった。
アインの頭を抑え、キャリコは数回自身を扱く。
低いうめきとともにビュクッと勢いよくアインの顔にかかった精液は、
アインの涙とともにシーツへ落ちていった。

「も、・・もう許して・・・くれ!!」
「許す・・?フフ・・自分がいけないことをしたと理解しているわけか?
 人形の癖に?感情があるのか?」
「・・・あ、・・・あぁぁぁ・・・・許してくれ・・・痛い・・・」

アインはベッドに背中を預け、足を大きく左右に開く。
自分で腿をもち自ら受け入れる秘所をさらけ出す。
ヒクヒクと蠢くその場所からは媚薬がトロトロ流れてきており、
アインはすでにそうとう限界なのだろう。




・・・・・堕ちた




満足そうにキャリコはその様子を見下ろした。
こうなった時のアインはもうキャリコしか見えてはいない。
瞳にキャリコだけを移し、細くしなやかな身体はキャリコの愛撫だけに反応を示す。

「・・・今夜はいつもより堕ちるのが早いな、アイン」
「・・・うぅ・・キャリコ・・・キャリコ・・・」

アインの頬を優しく撫でれば咽をヒクつかせ身体は大きく震える。
頬を愛撫する長い指に自身の放った精液をつけ、
その指で唇を何度もなぞればアインは自分の唇を美味しそうに舐めた。
笑みを浮かべて見下ろしながらキャリコは細い腰を抱き寄せ力強く抱きしめる。
そのとたん、ゾクンと目覚めていくキャリコの欲望。
アインが正気を失った時にしかしない行為。
・・・・それが『抱きしめる』であった。
小さな身体を抱きしめると余計に欲しくなる。
アインが理性を失った時にだけ、キャリコは優しく出来るのだ。

不器用な彼の不器用な愛・・・・。

「アイン・・・、俺が欲しいか?」

耳元で囁かれる官能への誘い。
アインは身体をキャリコへ摺り寄せながら無我夢中で叫んだ。

「欲しい・・・!欲しい・・・!!」
「・・・理性を失ったお前は可愛いな・・・アイ、ン」
「・・・・あっ・・・!」

ヒクつく場所に男根をゆっくり埋めこんでいく。
アインの悦びの声にかき消されよく聞こえないが、
キャリコも包み込まれる悦びに感嘆の声を漏らしていた。























「・・・・・・・」

目を覚ますと妙に身体がだるかった。
おそらく『媚薬』の後遺症なのだろうと、アインは納得するが、
途中から記憶が抜け落ちているのでなんともいえない焦燥感があるようだ。

キャリコより先に達してしまったところまでは覚えている。
しかしそこから先は記憶があいまいだ。
決して抱きしめてくれないキャリコが
抱きしめて優しくキスをしてくれたような気もするが、
アインはブンブンと頭を振るう。

「(そんなはずはない・・・キャリコはオレを抱きしめない。
 ・・・当然だ、オレはダッチワイフにすぎないのだから)」

ズキッと胸が痛む。
アインはもう知っている。
自分が彼に惹かれていることに。
だから抱かれる。
暴力的なセックスにも耐えられる。
けれど朝一人で起きるのは物悲しかった。

アインは重たい身体を起こし何気なくサイドテーブルを見る。
するとそこにはいつものようにメモの走り書きと食べ物が残されていた。
サイドテーブルに近寄りメモを見る。
そこには達筆な文字で一行、

『司令室へ行って来る』

と、書かれていた。
隊長なのだから朝は指令の部屋へ行くことはアインだって知っている。
なのに何故毎回書置きを残していくのだろうか?
それに・・、

「・・・・今朝はケーキか・・・もう一個買ってあったのか?」

それに何故かいつも食べ物が残されていくのだ。
アインには理解できなかった。
人形、淫売、とあざける彼の反比例な行動。
時折見せる微笑・・・・・。
すべてが意味不明なのである。

書置きを元の場所へ戻し、
指で生クリームをすくい舐める。
口の中いっぱいに甘さが広がっていくが、
アインの胸中は苦しさでいっぱいであった。

「・・・・食べ物より、キャリコがいい・・・。
 ・・・・抱きしめて欲しい・・と願うオレは・・人形失格かもしれない」

目に収まりきらない涙が頬を伝う。
その涙は音も立てずケーキの上に落ちていくのだった。


















「・・・・レー?」
「・・・・・ん・・うぅ・・・」
「クォヴレー??」
「・・・・・!!」

頬に軽い痛みが走り、クォヴレーはハッと目を覚ました。
すると目の前に心配そうな表情のイングラムが居た。

「・・・しょ・・・さ・・・?」
「大丈夫か?魘されていたかと思えば泣き出すし・・・心配したぞ?」
「・・・泣き・・・?」

いわれて見ればなんだか頬が濡れているようだ。
一体何故泣いていたのだろうか・・・・・?
思い出せずクォヴレーは首を傾げる。
それにどうして自分は今ソファーで寝ていたのか分からず反芻するのであった。
そして混乱していた記憶が整理され、経緯を思い出す。
DVDを見ていたはずなのにいつの間にかソファーで転寝をしてしまったらしい。
クォヴレーは気まずそうにイングラムを見上げるが、
彼の表情は依然として心配そうな顔であった。

「怖い夢でも見たのか?大分魘されていたぞ??」
「・・・怖い・・・?」

クォヴレーは首を左右に振る。
夢の内容を覚えてはいないが、それが怖い夢でなかったことだけは断言できるのだ。

「・・・怖い・・・ではなく・・・切ない夢だった・・・気がします」
「・・・切ない夢?」
「・・・オレは何かを望んでいて、でもそれは決して手に入らなくて・・・、
 でも欲しくて・・・空回りして・・・切ない・・・そんな夢です」
「・・・そうか」

顎に手をかけ軽く上を向かせる。
目は赤く充血しており、イングラムはいたたまれない表情をした。

「余程、切ない夢だったのだな・・・目が真っ赤だ」

長い指で今だ流れ続けている涙を拭うと、目じりにそっと唇を寄せる。

「???少佐???」
「・・・涙が止まるまで、こうしていようか・・?」

イングラムの優しいボイスにクォヴレーは一瞬頬を染めるが、
すぐにそれを断った。

「だ、大丈夫です!!(そんなことされたら心臓が・・!!)」
「遠慮はいらないぞ?・・・・子供なのだから時には甘えなければ」
「オレは子供ではない!!・・・・あっ」

タメ口をきいてしまったことにあわてて自分の口を手で押さえる。
しかしイングラムはニッと笑うだけで、
咎めるどころかそのままクォヴレーをソファーへ押し倒してくるのだった。

「うわぁぁぁ」
「そうか、それは失礼した。では大人流の慰め方なら、どうだ?」
「・・・大人流・・・?んっ???」

頬に髪の毛が触れたかと思うと直ぐに唇が塞がれた。

「んん・・??」

身を捩り頭を捩るが、
体重をかけられ抑えられているのかイングラムの下からは逃げられなかった。
それでは、と、頭をふろうとするが、
頭と顎を固定されており動かすことすらかなわなかった。

「ん、・・・んん・・・ふぅ・・・」

始めは胸板を叩いて抵抗していたが、次第に抵抗できなくなり、
両手はダランとソファーに投げ出された。
イングラムはその手をとり、
自分の指をクォヴレーの指をからませ、頭の横に固定する。
クォヴレーはもう抵抗しなかった。







どれくらいキスをされていたのだろうか?
不意に唇が離れたので、
閉じていた目をゆっくり開いたその時
クォヴレーは思わずソファーから逃げようとした。
けれどそれはイングラムに腕を掴まれてしまったので出来なかった。
クォヴレーはたまらず声を荒げる。

「放せ・・・!!」
「・・・なぜ?」
「!!」

掴まれる手の力が強まる。
必死に自分の腕を引っ張るがその手から逃れることが出来ない。

「は、放してくれ・・・!!」
「クォヴレー、どうした?」
「いやだ!!怖い!!」
「・・・怖い??」
「少佐の目が怖い!!・・まるで・・・肉食獣のような・・・」
「!!」

クォヴレーの叫びにパッと手を放す。

「・・・・!!」

急に拘束の力が緩み、勢い余って尻餅を付いてしまった。

「うわっ!!」
「大丈夫か!?」
「・・・・・つぅ・・・」
「すまない・・・・」
「少佐?」

クォヴレーは恐る恐るイングラムを見上げる。
するとそこには先ほどの獰猛な光は宿っておらず、
かわりに困ったように微笑んでいるイングラムが居た。

「男の本能というか・・・怖がらせてしまったな」
「・・・本能??」
「・・・・抱きたい、と言っただろ?」
「・・・・え?」

意味を理解できないクォヴレーに困った顔が完全な苦笑に変わる。

「まだ早いようだな・・・」
「・・・少佐?」
「・・・クォヴレー」
「!!」

床にへたり込んでいるクォヴレーを引き寄せると、
今度はそのまま優しく抱きしめてやる。

「いやだ!!」
「・・・何もしない、大丈夫だ」
「・・・イングラム・・・?」

なぜか切なげなイングラムの声に、
最初は硬くなっていたクォヴレーも、
次第に身体の力を抜きそのまま身体を預けた。
優しく寄り添うように・・・・・。

「ゆっくり進むとしよう・・・お前のペースに合わせて」
「・・・・進む?(どこにだ??)」
「・・・まずはその辺の理解だな」
「??????」

毎回毎回この上司の台詞は理解に苦しむ。
小首をかしげ質問しようとしたその時、ソレは大きく訴えたのだった。





ぐぅ・・・・・・・。






「!!?」
「・・・・・?」


途端、クォヴレーは顔を真っ赤にし自分のお腹を押さえる。
目を真ん丸くしながらイングラムが時計みれば3時はとうに過ぎていて、
どうやらクォヴレーのお腹は『おやつ』を訴えているらしい。

「・・・そういえば俺はお前をむかえに来たんだった」
「・・・むかえ??」
「クリスマスパーティーの準備が出来たんだそうだ」
「パーティー???昨日やりませんでした??」
「昨日はイヴだ、クリスマスは今日」
「・・・・何が違うのです???」
「違い?」

イングラムは難しい顔で何かを考え始めた。
どうやら彼も違いがよく分からないらしい。
知りたいお年頃のクォヴレーは目を輝かせてイングラムを見てくるが、
イングラムはゴホン、と咳払いをしてソファーから立ち上がった。

「少佐?」
「・・・・つまらない話は止めだ。とにかくパーティー会場へ行くぞ」
「・・・????」

バツがそうに今だソファーに座っているクォヴレーを無理矢理立たせ、
出口へ引っ張っていく。
扉を開け、会場まで始終無言であったイングラムに
クォヴレーはされるがまま連行されていってしまうのだった。
そして気付いた・・・・。


「(・・・きっと少佐も違いを知らなかったんだな)」


・・・・と。


有り難うございました。 何気なくキャリアイです。 クリスマスなのでキャリコにもいい思いを、と。 どうでしたでしょうか???