シリアスBL8
 


〜キス魔の逆襲〜







『・・・・・ン!』


恐ろしく低い声で『名』を呼ばれ、
少年は必死に暗い廻廊を走った。
けれど歩幅が違いすぎる為、後ろ髪を掴まれすぐに捕まってしまう。

『・・・・っ!』

強引に上を向かせられそのまま壁に投げつけられる。
華奢な身体は衝撃に耐えきれず、
少年は意識を失いながらズルズル崩れ落ちていった。
追いかけてきた男はそんな少年を抱き上げ口元に満足そうな笑みを浮かべるのだった。

『俺を裏切ったらどういう目にあうか、今からたっぷりと分からせてやろう』















『・・・、あぁ!!』

ベッドに四肢を繋がれている。
その上で性器を限界までいたぶられ、
解放できないよう根を戒められている。
少年はその状態のまま強く頬を張られた。
見れば身体の所々に赤い鬱血や青い鬱血が出来ている。
足の間からはドロリとした白いものが流れ落ちてきているが、
折檻を与えている男は少しも衣服を乱していないので
どうやら男のモノではないようだ。


『・・・ン?・・・言え・・だ・・・寝た?』

男の言葉は途切れ度切れでよく聞こえない。
だが少年は頑なに頭を左右に振るだけで何も答えようとはしなかった。

『ひっ』

答えない少年に焦れた男は性器を鷲づかみ、頬を二度三度張る。
口端から血液が零れ、とうとう少年は意識を手放してしまう。
けれど男はソレを許さず、顔にコップの水をかけるのだった。

『・・・まだお寝んね・・・・早・・・アイ・・・』

少年は虚ろに目を開け、ぼやけている男を見上げる。
そして小さな声で慈悲を請うのだった。

『言・・ない・・・キャ・・・許し・・・』

一体少年は何を言ったのか?
いつものようにガラスでもあるかのように
その先へ近づけないイングラムは少しでも会話を理解しようと耳を近づける。
けれどそれ以上距離を縮めることは出来ない。
毎回毎回”同じ内容の夢”の前後のようなのであるが・・・。
少年が・・・『アイン』が『誰か』から逃げ、捕まり・・そして・・・。










「・・・・・・」

目を覚ますと少年は規則正しく寝息をたてていた。
額に触れてみると熱はまだ高く、イングラムは難しい顔でべっドから起き上がる。

「・・・ん、ぅ」

するとクォヴレーはイングラムの服の裾を掴み眉間に皺を寄せるので、
イングラムはそっとその眉間に唇をよせる。
一緒の機体に乗り、例の男からなんとか逃げ切ったのはよかったが、
クォヴレーはそのまま高熱をだし3日間はもう寝込んでしまっているのだ。

「今朝は大分熱が下がったようだが・・・。意識が戻らず、か・・」

眉間から唇を離し、イングラムは穏やかに微笑む。
けれど表情は直ぐに厳しいものに変わった。

「(久しぶりにあの夢を見たな・・・、今回は前回の続きではなく前のようだったが)」

前回見たときは失態でもして折檻されたのかと思っていたイングラムだが、
今回の夢でそうではないと理解した。
眠るクォヴレーを見下ろしながら夢の台詞を思い出す。
よく聞き取れなかったが、おそらく男はこういっていたのだろう。





『・・・アイン?・・・言え!誰だ?・・・誰と、寝た?』




イングラムの予想ではアインはキャリコに惹かれているはずだ。
それなのにどうして彼から逃げ回り、他の誰かと関係を持ったのだろうか?
考えても分からない。
アインの記憶がクォヴレーに戻らない限り、分からない。
けれどイングラムは何故か複雑そうな顔をしていた。


「(記憶が戻ったら・・・クォヴレーは・・・)」

銀の髪をすき、もう一度眉間に口付けようとした・・・その時。

「ゴッホン」
「!?」

咳払いに驚き、振り向くとそこにはヴィレッタが立っていた。
彼女も先ほどのイングラムほどではないが、
複雑そうな表情をして立っている。

「ヴィレッタ」
「・・・クォヴレーを抱きしめて寝ていることにも驚いたけど、
 まさかキスまでしているとは思わなかったわ」
「・・・・・・・」
「・・・好きなの?」

二人が寝ているベッドに腰を下ろし、イングラムを問い詰める。
だがイングラムはフイと視線をそらしクォヴレーの髪をすいていた。

「見え透いた無視は大人気ないわよ。好きなら好きと認めなさい。
 ・・・・別に私は軽蔑したりなんかしない」

問い詰めるヴィレッタに、イングラムは苦い表情をする。
どうやら彼女にだけは知られたくなかったようだ。

「・・・・る?」
「え?」
「好きではなく、愛している、と言ったなら・・どうする?」

視線を反らしたまま声小さく答えるイングラムに、
ヴィレッタは表情を柔らかくし、安心したように息をついた。

「別にどうも?・・・そうね、ただ・・・」
「・・・・・」
「おめでとう、と言うわ」
「・・・・おめでとう?」

予想していなかった言葉に反らしていた視線を彼女に戻した。
瞬きするのも忘れ、ただまっすぐただ一人の家族を見つめる。

「ええ、おめでとう。・・・それ以外に言う言葉はないわ。
 ・・・・イングラム、私は貴方がクォヴレーを愛している、といっても軽蔑はしない」
「・・・・・」
「むしろ安心したわ」
「・・・・安心?」

穏やかに微笑むヴィレッタの表情が今度は曇っていった。
ヴィレッタはずっと気になっていたのだ。
2年前、イングラムは生還してからというもの何処か他人と距離を置いて生活していた。
恋人も親しい友人も作らず一人で。
彼のたった一人の家族として、ヴィレッタはずっと心を痛めていたのだ。

「貴方はもう人を愛することを諦めてしまったのだと思っていたから」
「!」
「だから安心したの・・・・。この際ゲイでもショタでもなんでもいいわ」
「・・・ゲイ・・・ショタ・・・?(この場合そうなるのか??)」
「よかったわ、・・・本当に」
「ヴィレッタ・・・」

ヴィレッタは再び微笑み、手をパンと叩く。
湿っぽい話は終わり、という合図なのだろう。

「・・・う・・・ん・・・・」

だが思いのほか叩く音が大きかったのか、クォヴレーが苦しそうに呻きだした。
二人はハッとして慌てて自分の口を手で覆うが、
それを合図のようにクォヴレーは悪夢に魘され始めていくのだった。

「・・・またか」
「また?」

サイドテーブルに置いてあったタオルを絞り、額を拭ってやる。
けれどクォヴレーの汗は止まらず、苦しそうに呻いている。

「ずっとこんな感じなの?」
「ああ・・・、あの男と接触したせいかもしれん」
「・・・・あの男・・・ギメル・バルシェム?」

汗を拭っていた手を止めヴィレッタを見る。
イングラムは彼女があの男の正体を知っていたことに驚いたのだが、
彼女はいたって冷静に答えていく。

「・・・気配を・・・感じるの。おそらくそうなんだと思ったわ。
 ・・・隊長みたいだし、3号だとも思った・・・・。」
「そうか」
「ずいぶん『アイン』にご執着のようね。
 ・・・クォヴレーもあの男に影響されて脳が刺激されているのかしら?」
「どうだろうな・・・・、だがあの男に会ってから体調が芳しくないのは事実だ」
「そうね・・・なにか、嫌な記憶でもあるのかも知れないわね」
「・・・・ああ(嫌な記憶、か・・・)」
「うぅっ」

苦しそうに呻き、クォヴレーは掛け布団を蹴った。
頭を両手で抱え苦しそうに頭を振る。

「・・・・い・・・だ・・・いやだ・・・うぅ・・・」
「クォヴレー!」
「嫌だ・・・!いや・・・うっ・・許してくれ!」

イングラムは細い身体を抱き寄せ力強く抱きしめた。
最初は身体を捩らせ逃れようとしていたが、
イングラムが頬や額に唇を寄せ続けていくうちに落ち着きを取り戻し、
再び穏やかな寝息へと戻っていった。


・・・ヴィレッタはただ痛ましげにその様子を見守るしかなかった・・・。















「・・・・?」

鼻に甘い香りがかすめ、重たい目を開いた。
汗をかいたのか体が少しだけベタついていて気持ちが悪い。
シャワーを浴びようと起き上がったとき、
クォヴレーは寝ていたそのベッドが自分のベッドでなかったことに気が付く。

「・・・・?・・・うわっ」

足を床につくと力が入らなくガクンと崩れ落ちる。

「・・・なぜだ??」

声も掠れておりクォヴレーは一人首を傾げるが、
なんとか立ち上がり寝室の扉まで歩いていくのだった。


扉を開けると、イングラムがヴィレッタと一緒に何かを飲んでるようだ。
なにか甘い香りのするものらしいが、
二人は難しい顔で話をしているのでクォヴレーに気が付かない。
ゆっくりそんな二人に近づきクォヴレーはイングラムに話しかけた。

「少佐・・・」

掠れた声で呼ばれイングラムは振り返る。
ヴィレッタも一緒に振り返り、何故か二人は驚いた顔をしていた。

「クォヴレー!」
「貴方・・・起き上がって平気なの???」
「・・・・?」

二人の言うことが理解できず首を傾げていれば、
いつの間にか立ち上がっていたイングラムに抱き上げられ、
今きたばかりの道へ戻されていく。

「少佐!?」

ベッドへ連れ戻され、むりやり寝かされる。

「?????」

わけが分からずポカンとしていると、
口に体温計を突っ込まれ、額に氷嚢を乗せられる。

「・・・・むぐぐ??」
「まさか目を覚ますなんて思わなかったわね」
「むぐ??」
「そうだな・・・4日間も意識不明だったからな」
「!?」

『4日間も意識不明』にクォヴレーは目を大きく見開いた。
すると体温計がピピピ、となり、それをイングラムが口から取り去る。

「・・・37度・・・まだ微熱か」
「そうね・・・でも目を覚ましたからもう安心ね」
「・・・オレ・・・・?」

クォヴレーは自分の身に何が起きていたのか分からず、
不安げに二人を見上げていた。
するとヴィレッタが微笑をむけ何故か寝室から出て行ってしまったのだった。
イングラムと二人残され、気まずそうに彼を見上げると、
少しだけ泣き出しそうな表情にクォヴレーは驚いてしまう。

「・・・少佐・・・あの・・・?」
「・・・心配した・・・ずっと熱が高くて」
「・・・熱、が・・・あ?」

ベッドの横に腰を下ろし、髪の毛を撫でられる。
そのまま顎を固定され直ぐに口を塞がれてしまうのだった。

「・・・・・んっ」

レモンの香り漂う冷たい液体が口の中に流れ込んでくる。
それはカラカラに乾いていた咽に一瞬で潤いを与えてくれて、
クォヴレーの意識がトロンとなっていく。

「・・・ふ・・ぁ・・・」
「もっと飲むか?咽が乾いているから声を出しにくいだろう?」
「・・・・(そういえばカラカラだ。だから掠れ声だったのか)飲む・・いえ、ます」
「フフ・・・」

素直なクォヴレーにニコっと微笑み、
優しく抱き起こすイングラム。
そしてレモン水の入った冷たいグラスを手渡した。

「ゆっくり飲め」
「・・・了解」

咽を鳴らし美味しそうに飲んでいく。
そんなクォヴレーを見ながらイングラムは独り言のように言うのだった。

「我々に薬は効きにくいから・・・焦ったぞ」
「・・・・・?」

グラスを傾けながらも意味が理解できず
クォヴレーは不思議そうな表情でイングラムを見つめた。
中身を全て飲み干し、先ほどの言葉の意味を尋ねようとした時、
ヴィレッタが甘い香りのするものをもって戻ってきた。

「4日も何も口にしていないから丁度いいでしょ、甘酒」
「・・・・酒?」

空になったグラスの変わりに
今度は暖かく甘い香りのするモノが入ったコップを手渡される。
どうやら先ほど二人が飲んでいたものと同じらしいが、
クォヴレーはある言葉が引っかかるのだった。

「・・・大尉」
「なぁに?」
「・・・・この甘酒ですが」
「ええ」
「・・・・オレは一応未成年なのですが」
「・・・それが?」
「・・・酒、はまずいのでは?」
「!」

イングラムとヴィレッタは二人は息を合わせたかのように視線を合わし、
その後おもわず爆笑してしまう。。

「くくくくくく・・・・」
「フフフフフフ」
「???」
「くくく・・・ははははは!」
「ふふ・・・あははははっ」
「???????」

どうして、何故笑われるのか?
二人が爆笑しているため教えてもらえず、
クォヴレーは初めて頬をプクっとさせて一人静かに怒るのだった。


















整備班も休憩中なのか、
皆それぞれお茶を楽しんでいた。
そんな中、一人の男が暗く狭い通路に入り、ボソボソ話し始めるのだった。


『・・・・・様子はどう?』
『問題ない・・・、地球人は危機感が薄いな。
 一人増えたくらいでは気付かないらしい』
『へぇ?・・・・で?アインは??』
『居場所は把握できている。ヤツの部屋だ。
 最もここ4日間は寝込んでいるらしいが・・・』
『!?・・・・そう、心配ね。なら余計早く連れ帰らなくては』
『そうだな・・・調整槽の準備は?』
『万端よ、いつでもアインを迎え入れられるわ』
『それは結構・・・・では行動に移るとしよう』

















「そろそろ機嫌を直してくれないか?」

ご機嫌を伺う声は優しいがどこか笑いを含んだ声である。
クォヴレーはプイッと横を向き、頭からシーツを被って姿を隠すのだった。
甘酒が未成年でも飲める酒と教わり赤っ恥をかいた(と思っている)クォヴレーは、
ヴィレッタが出で行った後もずっと不貞腐れているのである。

「いつまでも拗ねていたら正月料理が食べられないぞ?」
「・・・・・オレはまだ固形物を食べられるほど回復していない・・・・です」
「(そうくるか)だが甘酒は飲めるだろう?」
「!・・・・・・」
「あれは子供達に大人気だから早くしないとなくなってしまうぞ?」
「・・・・・・」

頭を覆っていたシーツを少しずらし、イングラムを軽く睨む。

「・・少佐はずるい・・・です。
 オレの心を見透かして・・・・大人は嫌いだ」
「そう思うなら早く大人になればいい」

ベッドに腰掛けてきたのか、クォヴレーの身体が少しだけ沈んだ。
そしてシーツを掴まれ一気に引き剥がされると、
イングラムはゆっくり覆いかぶさってくるのだった。

「・・・俺が大人にしてやろうか・・・・?」
「・・・しょ・・・・」

ニッと少しだけ黒い微笑を浮かべるイングラム。
大人のフェロモンらしきものを撒き散らしている気配に圧倒され、
クォヴレーが動けないでいるとイングラムは小さく囁いた。

「とりあえず心配をさせられた慰謝料と、面倒をみた謝礼を頂こうか?」
「・・・・え?それは・・・・」
「ん?」
「・・・キス、ですか?」

パサッと頬に青い髪があたる。
クォヴレーは近づいてくる顔を背けるように横を向こうとしたが、
顎を捉えられ出来なかった。

「なぜキスだと思う?」

低い声が脳に直接響く。
完全に覆いかぶさられ、耳元で囁かれたからだ。

「っ・・・、しょ・・さ、は・・・キス魔・・・でしょう?」
「!・・・・フフ・・・成る程、お前の中で俺はキス魔か」
「イングラ・・・」
「ではお前のなかのイメージを崩さないようにしなければな・・・」
「イン・・・ふ・・・」
















巧みなキスに酔わされる。
時に唇を甘く噛まれビクンと身体が揺れると、
体中に痺れが走っていき、クォヴレーは耐え切れず身体を捩り
イングラムから這い出そうとした。

だが・・・・、

「クォヴレー・・・、まだ払い終えていないぞ?」
「・・・っ、・・・も・・・や・・・」

右手を振りかざすが簡単に捉えられ、
後から抱きつかれる格好になってしまう。

「・・・・あぁっ」

すると途端に下半身を強くつかまれ揉まれ始めた。

「ぅ・・・う、く・・・」
「・・・若いから少しの刺激でもいいのだな・・・羨ましいことだ」
「・・・・うぅ・・・」

耳朶を噛まれながらパジャマのズボンが下ろされていく。
なんとかその手を止めようとするが、
熱と快感とで力の入らない身体ではどうすることも出来なかった。

「しょ・・・しょうさ・・・っ」
「クォヴレー・・・俺はな」
「・・・・んっ」
「俺はキス魔ではないぞ?」
「ぁあ・・っ」

下着の中に大きな手が入り込んでくる。
そしてキスで緩く成長し始めていた性器を掴まれ、
ゆっくり刺激を与えられ始めたのだった。

「ひぃ、う・・・・んん」
「・・・ヌルヌルになってきた」
「・・・い・・・いわな・・・」
「下着、下ろしてしまおうか?」

右手で性器を刺激したまま、起用に左手で下着を下ろしていく。
クォヴレーは抵抗するがあっさり封じられ、
下着は取り払われてしまう。

「ん、んんんぅ」
「クォヴレー・・・・」
「あぁ・・・や・・」

耳元でしゃべられるとそこから感じてしまい、ビクビク性器が脈打つ。
するとイングラムが耳元で含み笑いをし、
それでまた刺激され翻弄されていく。

「俺はキス魔ではない・・・ただの男だ。
 だからお前にキスするし・・・それ以上もことを望む」
「やだっやだっ・・・変だ!!か、身体が・・・っ」

イングラムは性器を弄る手を左手に持ち替え、
右手で足を大きく開かせ固定した。
そして左手をそのまま性器の後の膨らみへと移動させ、
そのまま人差し指でチョンチョン突付き刺激していく。

「は、・・・ああぁぁっ」

むず痒い刺激に足をバタつかせようとしたが、
イングラムの足が間に割り込んできて出来なかった。

「しょうさ・・!少佐!!」
「・・・何も考えず、俺にだけ意識を集中させるんだ」

イングラムの手が再び性器に伸びてきて、
速い動きで前後に扱いて刺激していく。
先端を何度も人差し指と親指で刺激され、
クォヴレーは極限へと追い込まれていった。
イングラムの唇が首筋に触れ、耳へ移動してくる。

「・・・極めて・・・いいのだぞ?」
「んぅ・・・ふ・・・くぅ・・・っ」
「・・・クォヴレー・・・イけ」
「いやっ・・・はぁぁっ・・あ!・・で、出る!!」

クォヴレーの足の間に挟んでいるイングラムの足に、
直接痙攣が伝わってくる。
同時に制服の太腿の辺りが生ぬるい液体に触れ濡れていった。
まだ細かく震えているクォヴレーを仰向けにひっくり返し、
荒い息を吐いている唇を何度か啄ばむのだった。

「んっ・・・んっ・・・」

クォヴレーが舌を差し出してくる。
優しくソレを絡み取り、イングラムは深い口付けを与えた。
そしてクォヴレーの放ったもので濡れている手でクォヴレーの手を取り、
ある場所へと導いていく。

「ふ・・・あ?」

唇を離し、触れさせられたものに驚いているクォヴレーに対し、
イングラムは少しだけ意地悪そうな笑いを向けた。

「これがいつもお前が不思議そうにしていた『硬いもの』の正体だ」
「!!・・・・うっ」

流石のクォヴレーも直にさわらさせられればその正体がわかる。
しかもイングラムはクォヴレーの手首を掴んだまま、
自分のモノを刺激させるのだ。
そのたびにイングラムのソレは硬度を増しリアルな感触が直接伝わってくる。
全身を朱色に染めてイングラムを見上げる。
触れているソレから手を離したくて手を捩るが、
イングラムの手首を掴む力は強く出来ない。

「俺はキス魔ではないといっただろ・・・?それを今、証明しよう」
「証明・・・?」
「今回のお礼は・・・コレでいい」
「!?」

イングラムは軽く腰を振りクォヴレーの手に自身を擦りつけた。
驚き慄くクォヴレーを面白そうに見下ろしながら、
圧倒的な迫力で命令するかのように言い下した。

「どうすればいいかは今教えただろ?」

お前の身体に、と小さく囁かれる。
その言葉に益々クォヴレーの身体は熱くなり赤く染まった。

「・・・・う、あ・・・」
「クォヴレー・・・・?」
「・・・・うぅ・・・」

低い声に色香が混じっている。
迫力のあるイングラムの物言いにクォヴレーは逆らえなかった。
覚悟を決め朱色に顔を染めたまま、目を閉じイングラムのベルトに触れ、
震える手でソレを外し、ジッパーを下ろし、下着から目的のものを取り出す。

「ひっ・・・」

掴んだ瞬間ドクドクと脈打った性器に一瞬手を離してしまうが、
すぐにイングラムに手首を掴まれ握らされてしまう。

「最初はゆっくり手を動かしてみろ・・・」
「・・・う・・・はい・・・(熱い・・それに大きい・・)」

自分以外の性器にはおそらく初めて触れたはずだ、とクォヴレーは思っていた。
触れたソレは熱く、硬く、大きく・・・そして太かった。
両手で彼の性器を掴み、言われたとおりゆっくり手を上下させる。
手を動かすたびに性器はドクドクドクと脈打ち、大きくなっていく。

「・・・・ふっ・・・」

頭上から声が漏れてきた。
チラリと見上げれば、細い目を一層細めじんわりと汗をかき始めているイングラムが映る。
そして急に腰を腕が回ってきたかと思えば体重をかけて彼が覆いかぶさってきた。

「あっ」
「・・・っ・・・、クォヴレー」

少しだけ腰を浮かせてくれているので、性器を愛撫するのには困らなかった。
クォヴレーは強く抱きしめられて苦しかったが、
懸命にイングラムの性器を愛撫し続ける。

イングラムの熱い吐息が声とともに耳にかかる。

「クォヴレー・・・、く・・ぅ・・・ふ・・・」

握っていた性器が一瞬大きく膨れ上がったかと思えば、
今まで以上にドクドク力強く脈を打った。
ギュウ・・・と抱きしめられ、ベッドが大きく軋んだ。
抱きしめられているクォヴレーも彼の体の震えにあわせ一緒に震える。







・・・・クォヴレーの手には生暖かいものが放たれていた。



















疲れて眠ってしまったクォヴレーを寝かせ、
自身の衣服を整えた時ノックとともにその声は聞こえてきた。

「・・・終わったかしら?」

扉は無遠慮に開き、扉にはスレンダーな女性が立っている。
イングラムは機嫌悪そうな視線を彼女に送った。

「・・・ずっと聞いていたのか?」
「・・・いいえ、私はそこまで暇じゃないわ。
 ただ寝室のドアをノックしようとしたとき
 濡れた音が聞こえてきたから待機していただけ」
「・・・仮にも女が『濡れた音』とか言うな」
「じゃぁ・・・卑猥な声かしら?」
「・・・・・はぁ・・・もういい・・で?用は?」

これ以上話しても埒は明かないと思ったのか、
イングラムは寝室をあとにし、執務室へヴィレッタを案内する。
フフンと勝ち誇った顔を浮かべているヴィレッタに悔しそうな顔を向けながら。

「男は狼だ、というけれど、まさか4日ぶりに目覚めた相手を襲うとは思わなかったわね」
「・・・襲ってはいない・・・・、スッキリさせただけだ・・・お互いに」
「・・・スッキリ、ね。ま、いいわ・・・、報告があるの」
「報告?」

コーヒーを用意しながらソファーに腰掛けるヴィレッタを見る。
彼女は既に仕事の顔になっており、コクンと頷いた。

「クォヴレーにとってはいい報告。
 けどイングラム・・・貴方には微妙かも・・・・」
「・・・・・ベルグバウのことか?」
「・・・・・」

ヴィレッタは声には出さず、再び小さく頷くことで答えた。

「使用許可が下りた・・・、最も条件付だけれど、ね」
「・・・条件?」
「・・・・使える武器が限られているのよ。
 強い武器は封印されたまま・・・まぁ、仕方ないわよね。」
「成る程な・・・だがそれではほとんど待機のままだな。
 強い武器が使えないのなら役に立たず意味はない」
「でも今までのような生殺しではなくなるわ・・・貴方は複雑でしょうけど。
 本当は戦闘に行かせたくないんでしょ?あの子のこと・・・・」
「・・・そんなことは・・・(ないとは言えないな・・・フフ・・・)」

複雑な胸中のままソファーに腰掛けるイングラム。
二人は彼が淹れたコーヒーを口に運びながら今後のフォーメーションについて話し合い始める。








その頃のクォヴレーはといえば、熱はすっかり平熱に戻り
イングラムがかけてくれた掛け布団を床に蹴り落として、
スヤスヤと夢の世界の住人であった。


ありがとうございました。 15回くらいで終わると・・・いいな。