**パラレル**
〜複雑な贈り物〜
その日は休日だったので久しぶりにデートでもしようと思っていたのだが、
とうの恋人は用事がある、とかで朝早くに家を出てしまった。
仕事人間、というわけではないがこれといって打ち込んでいる趣味があるわけではなし、
(ヴィレッタにはクォヴレーが趣味だ、と言われているが)
イングラムはやれやれ、とため息をついてリビングで溜め込んでいた本を読むことにしたのだった。
昼食を一人だったので簡単に済ませ、
読書の続きをソファーでしていたらいつの間にか眠ってしまったらしい。
薄く目を開けると部屋の電気は落とされ、かけた覚えのないタオルケットがかかっていた。
わまりではなにやらゴソゴソと物音がしているし、どうやらクォヴレーが戻ってきたらしいと悟った。
ゴソゴソと何をしているのか、
部屋が暗いことを利用してイングラムは暗闇に慣れつつある目を薄く開けて様子を伺うのだった。
クォヴレーはDVDデッキの前でなにやらDVDをセットしている。
そしてどこからか買ってきたのだろう、
サンドイッチやオードブルのパックがテーブルの上に置かれていたが、
何を思ったのかクォヴレーはテーブルを端に片付け、
レジャーシートを真ん中に惹いて食べ物をその場所に置いた。
しして今度はDVDデッキの横にある何かの機械に触れると、カチッとボタンを押すのだった。
あの機械はなんだろう?イングラムは更に目を細めて見るが暗闇ではこれ以上は分からなかった。
そして全ての準備を終えたのか、クォヴレーはイングラムに近づいてきたので、
イングラムは慌てて目を閉じ、寝たふりをした。
すると肩に手の温もりを感じ続いて揺さぶられて名前を呼ばれる。
「イングラム、イングラムー?」
ユサユサ肩を揺らす手を掴み、イングラムはゆっくりと目を開けた。
目が合うとクォヴレーは嬉しそうに微笑み、「おはよう」とコメカミにキスをくれる。
いつも、毎朝、イングラムがクォヴレーにしている行為だ。
気恥ずかしいのかクォヴレーは直ぐに離れようとしたが、
イングラムはフフッと笑ってクォヴレーの自分の腹の上に乗せそのまま唇を重ねるのだった。
「んんっ・・・・ん・・・・」
鼻にかかったような甘い声。
快楽に頬をそめ、キスの最中に目を開けたときに時折クォヴレーも目を開け、
その時の熱に潤んだ目と目が合う瞬間がイングラムは好きで、
今回もそうなることを期待して目を開けた時、イングラムは驚いた。
目の前に満点の星空が浮かんでいたからだ。
「これは・・・・」
キスをやめて改めて上に乗っけたクォヴレーを見れば、
彼はキスをしたためではなく、別の意味で赤くなっているのが分かった。
「イングラムは自然が好きだろう?」
「ああ」
「でも最近は忙しくて二人で出かける暇もなかったから即席で作ってみたんだ。
満点の星空の下で、ご飯を食べながら映画を見る」
照れているのか俯くクォヴレーの頬に手を添え、自分と目を合わさせる。
そしてチラッと横に目をやれば、さきほど用意していたランチパックが目に映った。
テレビの横では即席の星空を作っている機械が小さな機械音を立てている。
『即席の星空』、だから一度テーブルに置いたランチパックをレジャーシートに置き換えたのか。
納得したイングラムは微笑を浮かべてもう一度クォヴレーの唇に軽く口付けた。
そしてクォヴレーを上から下ろし自分もソファーから起き上がると、
クォヴレーは慌ててDVDをつけようとテレビまで走ったが、
イングラムはそんなクォヴレーの腰に腕をまわし、止めた。
「??なんだ???」
「満点の星空の下のピクニックならそんな大きなテレビでDVDは似合わないだろう?」
「え?」
確かに、屋内とはいえ屋外を現しているのだからこんな大きなテレビでは不釣合いかもしれない、
クォヴレーがウーン・・・とあぐねいていると、
イングラムはテレビ台の引き出しから携帯DVDレコーダーを取り出すのだった。
「ミーティングとかに使っているものだが、これならピクニックぽいだろう?」
「本当だ!」
イングラムはDVDデッキからセットされていたDVDを取り出すと、
携帯DVDレコーダーにそれをセットする。
するとクォヴレーはレジャーシートの上に移動し、
そそくさと紙コップに飲み物を注ぐのだった。
「イングラムは車を運転してきた、という設定だからお酒は用意してない」
とウーロン茶を手渡してきた。
本当は未成年だから買えなかっただけなのだが、
イングラムもそのことは分かっていたがあえて突っ込むことはせず、
ありがとう、とウーロン茶を受け取る。
そしてクォヴレーが買ってきていたランチパックを齧りつつ、
小さなDVDレコーダーを見るため方を寄せ合って画面を見つめた。
クォヴレーが用意したのは動物の一生のようなドキュメンタリー映画で、
自然好きなイングラムのためにチョイスしたようなのだが、
正直イングラムは眠くて仕方がなかった。
映画はアクションとかそういう派手なのがいい。
けれどなんとか眠らずに済んだのは、
この即席の野外ピクニックを用意してくれたクォヴレーの心遣いと、
映画をみながら表情が動くクォヴレーを見ていて飽きなかったからに違いない。
そして映画が終わるとイングラムは改めてクォヴレーに向かい合った。
「ありがとう、クォヴレー。おかげで疲れが取れた」
「本当か!?」
「ああ、やはり星空はいいな。今度は本物を見に行こう」
こういうのもいいがな、とイングラムはクォヴレーを胸に引き寄せる。
クォヴレーは嬉しそうに頬を染めモジモジと腕の中で動く。
いつまで経ってもこういう雰囲気に慣れない初心なところがたまらなく可愛く、
イングラムはわざと腕に力をこめさらに腕の中に閉じ込めてしまう。
「イングラムが喜んでくれて嬉しい!
今日はイングラムが休みだし敬老の日だから何かをしたかったんだ!」
「そうか、そうか。俺もクォヴレーが嬉しいと嬉しいぞ。
そうか・・・今日は敬老の日か・・・・・・ん?」
・・・・敬老の日?
イングラムはなんともいえない表情でニコニコとご満悦な笑顔のクォヴレーを見下ろした。
「・・・・クォヴレー?」
「ん?なんだ?」
「俺は・・・その・・・まだ・・じーさん、ではないんだが?」
「?そうだな、イングラムはまだお兄さんだな」
「・・・・・ならなぜ敬老の日に何かをしたかったわけだ??」
「なぜって・・・・」
クォヴレーは首を傾げている。
イングラムも首を傾げている。
二人の間に沈黙が数十秒。
やがて先に口を開いたのはクォヴレーだった。
「敬老の日は普段勤労している人に感謝する日だろう?違うのか??」
「・・・・・・・」
キョトンとしているクォヴレーにイングラムは悟った。
記憶喪失で一般的な知識が殆どない彼に、
誰かがまた間違った知識を与えてしまったようだ。
教えるのは構わないが間違った知識は植えつけないでほしい。
恥をかくのはクォヴレーなのだから、
と、イングラムは明日、早々に誰が間違った知識を植えつけたのかを突き止める決意をした。
本人の為にも修正はしたほうが良いからだ。
イングラムは心の中で黒く微笑むと、
いまだ首を傾げているクォヴレーの唇を吸い上げ、
そっとレジャーシートの上に押し倒す。
「うわっ!!」
「・・・折角だ。ココで擬似青かんプレイも愉しむか・・・?」
「イングラ・・・・んぅ・・・・」
抗議する唇を今度は深い口付けで塞いでしまう。
キスをしながら胸の飾りを弄ってやるとクォヴレーは身体をビクビクと震わせ、
観念したようにイングラムの背中に手をまわした。
「・・・は・・・あっ・・・折角の・・休みに・・・こんな・・疲れるだろ?」
「・・・・俺の一番の勤労の疲れをとる方法はお前と過ごすことだ
つまりコレは一番疲れを癒す手段ということだな。
今日は期待して良いんだろう?」
「うぅ・・・・」
『今日は』を強調されたのでクォヴレーは嫌でも悟ってしまう。
普段は強要されないがイングラムがソレを好きなことは知っている。
でもクォヴレーは苦手なのでいつものらりくらりと交わしているが、
今日はどうもいかないようだ。
クォヴレーはイングラムの下肢に手を伸ばし、ジッパーをさげるとチラッと視線を向ける。
イングラムは微笑んで頷くと、身体を起こし、レジャーシートに座り込み足を広げた。
広げられた足の間に身体を滑らせ、さげたジッパーの下から下着に手をかけ、
その中に隠れていたイングラムの中のものを取り出し、唇を寄せた。
上から聞こえてくるイングラムの熱い吐息。
苦手な行為だが感じてくれると嬉しくなり、くるしいけれど咽の奥で絞るように口に含む。
そして足の間にいるクォヴレーの髪の毛を掴み低い唸り声とともにイングラムが口に中で果てると、
なんともいえない充足感に満たされる。
ボー・・・と足の間から顔を上げ口の端から白い体液を垂らしていると、
たまらないと言った様子のイングラムに押し倒され、さんざ泣かされたのは大変だったけれども。
とにかくクォヴレーのプレゼントは成功したみたいなので、
抱き合った後、優しく抱きしめてくれる腕の中で安らかな眠りにはつけたのだった。
ちなみにクォヴレーが今日が敬老の日だった、
という事実を知るのは本当の勤労感謝の日が来たときだったという。
勘違いな間違いから始まったクォヴレーからイングラムへの感謝の贈り物。
腕鳴らしなので短いですが、シュマサの話の続きも早く書きたいので、今回は裏要素ナシ(?)
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