〜食いしん坊に聞きましょう♪〜



名前を呼ばれたので振り返れば虫かごを抱えたトリオのうちの1人が走ってきた。
始めはゼオラと二人コンビだったが、とある事情で自分はゼオラとはなれ、
その間に今、虫かごを抱えているこのクォヴレーとゼオラがコンビになり、
そして自分が戻ってきて今はトリオでその名を知られるようになった。

「クォヴレーじゃん!どったの??」
「ああ、まずはこれを見て欲しい」
「これってお前が持ってるその虫かご?」
「ああ、そうだ」

ズズイと出されたその中身をアラドは興味深々で見た。
見て欲しい、ということは何か大物を捕まえたということだと、
純真な15歳のアラドは思ったのだ。
けれど見つめる先には沢山のうようよ蠢く物体で、
黒の外に赤い色をしたヤツもいる。
おまけに虫かごの空気穴からははみ出した足やら触角があり、
ゾワワワワッと背中に悪寒が走ったのは言うまでもない。

「クォヴレー・・・これ・・・?」
「勿論、捕まえたんだが?」
「へー・・・そぉなんだぁ・・・・」
「アラド?」

珍しく空笑いで白々しいアラドの態度にクォヴレーは怪訝な顔をする。

「で、オレにゴッキーを見せる為に呼び止めたわけ?」
「まさか!いくらなんでもそんなに暇じゃない」
「だよなー!」

じゃ、何ですか??とアラドは真剣な顔でクォヴレーを見た。
と、いうのもクォヴレーが真剣な顔をしたからだ。

「アラドは食いしん坊だろう?」
「まーね!食べることに関しちゃ誰にも負ける気はしねーかな?」
「だから知っていると思って」

『何を?』とはもう聞かなかった。
いや、きかなくとも流石にアラドも気がついたからだろう。
『食いしん坊だから知っている』と、クォヴレーが持っている『ゴキブリ』。
そして予想通りの言葉がクォヴレーの口から出てきた。

「こいつの食べ方を教えて欲しい」
「(やっぱりかーーーー!)」

アラドはガックリと肩を落とした。
一体誰だろう?
クォヴレーにまた変な知識を植えつけてくれたのは・・・。
トホホ、と肩を落とし、一応どうしてゴキブリを食べることになったのか、
その経緯を聞いてみることにした。
ことによっては諦めてくれるかもしれない。

「一応聞くけどさ、どうしてそういうことを考え付いたわけ?」
「・・・・・・・・」
「クォヴレーさん??」

言いにくい事情なのか、クォヴレーは一瞬黙ってしまうが、
これから教えを請う身としては師匠(?)に事情を話すのは当然、
という考えがあるのか話してくれた。

「実は先日の戦闘でキャリコが・・・」
「・・・・仮面??」
「ああ、キャリコが急に回線を開いてきて唐突に聞いてきたんだ。
 『地球にはゴキブリという珍味があるそうだがもう食べたのか?』と」
「そりゃ本当に唐突な・・・・、んで?」
「オレが『ない』と答えたら鼻で笑われた。
 ・・・・オレは悔しかった・・・・、
 だからゴキブリという珍味を食べてヤツの鼻をあかそうと・・・・」


見る見るうちにシュンとしていくクォヴレーを前にしては、

「(お前、それ騙されてるよ、とは言えねーよな・・・ど、どうしよう??)」

とは言えないアラド。
本当にどうしたらいいのだろう??
それにしてもどうしてあの仮面は余計な事をクォヴレーに吹き込んでくれたのか!?
本当に迷惑なストーカー仮面だ!と、
アラドは悪い頭をフル回転させてどうやってクォヴレーに諦めさせようか考えるのだった。
けれど当然だがいい案が思いつかない。
思いあぐねいていると、そこにゼオラが通りかかってきた。

「(マズイ!)ゼ、ゼオラ!お前は見んな!」

女の子は大抵は虫、ゴキブリが大嫌いだ。
それなのにこの大量のゴキブリをみたら失神してしまうかもしれない。
いや、失神ならまだいい。
ゼオラお得意の踵落しが虫かごに向けられたら・・・・、
虫かごは壊れ辺りはゴキブリのパラダイス♪になってしまう。

「どうしたのよ、アラド」

珍しく大慌てのアラドにゼオラは首を傾げて近寄ってくる。
そしてアラドの後ろではクォヴレーが、

「・・・ゼオラなら知っているかも」

と、爆弾発言をしている。

「(まずい!まずいって!!)う、うわぁぁぁぁぁ!!」
「きゃぁ!?」
「うわっ!」

アラドは突然に叫び声をあげると、クォヴレーから虫かごを奪い取り、
ものすごいスピードで廊下を駆けていった。

「もう!なんなのよ?」
「・・・・わからん・・・、オレの虫かごが・・・」
「え?虫かご??盗られたの??」
「ああ、アラドが持っていった虫かごにはオレが苦労して手に入れた珍味が沢山入っていたのに」
「え?珍味??」
「・・・・よほど食べたかったのだろうか?
 奪わなくてもあげたのに・・・・ゴキブリ」
「ゴキブリ!?」

ゼオラはそのたった一言で全てを悟った。
アラドが虫かごを奪っていったのはわざとだ、
多分、自分がそれを見ないために。

「・・・クォヴレー、が、ゴキブリを捕まえたの?」
「??ああ、そうだが?」
「どうして?」

ゼオラがニッコリと笑い聞いてきたので、一瞬、息を呑んだクォヴレーは
(というのも顔は笑っているが何故か怖かったので)、
もう一度、先ほどアラドに話したことと同じことを説明した。
すると当然ゼオラの雷が落ちるわけで・・・・・。

「おばかーーーー!いーい、クォヴレー!?」
「・・・な、なんだ??」
「貴方は仮面に騙されたのよ!ゴキブリは食べ物じゃないわ!」
「騙された??だがキャリコはオレを騙しても得はしないと思うが・・?」
「ゴキブリを食べさせて先頭不能にしようとしたのよ!
 まったく姑息な変態仮面ね!と・に・か・く!金輪際!ゴキブリは捕まえないこと!」
「・・・し、しかし・・・」
「い・い・わ・ね?」
「は、はい・・・・」

なおもクォヴレーは抵抗をしようとしたが、
ゼオラのあまりにもすごい迫力に圧倒されなくなく承諾するしかなかったのだった。





そしてアラドはというと・・・・・。
ゴキブリが沢山つまった虫かごを『南無三』と手を合わせ、
宇宙空間に放つのだった。









そしてその年の夏、
バルマー星には何故か大量のゴキブリが発生したという。


有難う御座いました。 久々なので肩慣らしにギャグを・・・! これからまた徐々にふっかつしていきまーす! 戻る