〜黙って寝かせて! 1〜




ジー・・・と見つめてくる4つの目玉が邪魔だった。
気持ちは嬉しいのだがずっと見られているとなんとも落ち着かない。
こっちはゆっくり寝たいのだ。
マサキは火照る顔で少しだけ目線を上にやり、
枕元にいる2匹に声をかけた。

「・・・クロ・・・シロ・・・」

その声は掠れていてなんとも頼りない。
普段の元気な彼からはまったく想像できないくらい弱弱しいものだった。

「にゃんにゃ〜??」
「苦しいのかにゃ??おでこのタオル変えるかにゃ??」

にゃー、とピンク色の肉球が徐々に迫ってくるのを、マサキは必死に避けた。
つまり風邪でダルイ身体で必死に遠慮を表したのだ。
つい先ほど、2匹が行為でタオルを変えてくれたとき、
タオルを絞れない猫2匹は絞ることなく額に乗せてくれたせいで
枕がびしょびしょになったからだ。

「どうしたにゃ??」
「動いたら爪が顔に当って引掻いてしまうにゃ!」

シロが動くな、と牽制してもマサキは弱弱しく頭を左右に振り、

「い、いいよ!タオルはこのままでいい!それより!」

掠れた声、火照った頬で咳き込みながらマサキは2匹にお願いした。

「頼むから・・・その・・・一人にしてくれ」
「にゃんでにゃ??」
「・・・おちつかねーんだよ!・・・ジッと見られてると!」
「・・・??マサキはそんな照れ屋サンだったかにゃ??」
「照れ屋とかそういう問題じゃねっ・・・げほっ!!」
「大丈夫かにゃ〜??」

怒鳴ると同時に急に咳き込みはじめるマサキ。
焼け付く咽の痛みに耐えかねて水分を取っていなかったのも原因かもしれない。
そんなマサキを見かね、クロは小さな猫の手でマサキの背中をさすってやった。

「大丈夫にゃ??苦しいにゃ??」
「げほっ・・ごほっ!!!」

しかし猫の小さな手では焼け石に水にすらならない。
咳き込んだせいで涙を浮かべたマサキは、
はぁ・・・と大きなため息をついた・・、咳き込みながら。


「・・・頼むから眠らせてくれ」


はぁ、とため息のマサキに2匹は顔を傾げる。

「寝たいなら眠るといいのににゃ??」
「そーにゃ!オイラたちが見守ってあげてるから安心にゃ」
「シュウにもそう言われたのにゃ!」
「にゃ!『マサキを見ていてあげてくださいにゃ』と、言ってたにゃ!」
「ブッ!!」

シロが自信満々にシュウの真似をして見せたのだが、いかんせん語尾が猫語だ。
それを言うなら『マサキを見ていてあげてくださいね』だろーが!、
と心の中で突っ込みつつ、マサキは何度目か分からない盛大なため息を吐いた。

「・・・アノヤローが言ってたのはそういう意味じゃねーよ・・・」
「うにゃ???」


所詮は猫の頭か・・・とブツブツ言いながら、濡れた枕に頭を静めるマサキ。
事の発端は今朝、いつものごとく突然現れたシュウに言い様にされ、
裸で寝たのが良くなかったのかもしれない。
シュウ曰く、
『貴方の寝相が悪いんですよ』
と、呆れていたが、狭いベッドに男二人いたのだから仕方がないことだ。
マサキはその狭さに耐えかねたのか無意識のうちにベッドの下で寝ていたのだ。
まぁ、一応シャワー後で暑く、下着は履いていたものの上半身は何も着ていなかった。
更にタオルケットの一枚もかけていなかったものだから、
今朝、目が覚めたら案の定風邪を引いていた。
掠れ声、熱で潤んだ目のマサキにため息をつきつつ、
軽々と抱き上げベッドへ寝かせるとシュウは2匹に言ったのだった。


「私はこれから少し買い物に出てきます。
 薬と、食料と・・・その他諸々の雑用を片付けてきますので、
 それまであなた方はマサキをしっかり見ていてくださいね」

悪魔の如く微笑で言われ、2匹はまだって頷き、
ソロソロとマサキの枕元に位置づき、
左右からジッとマサキを見ていた・・・シュウに言われたとおりに。
だがあまりにジッと見つめられていてはマサキだって落ち着かない。
何とか止めさせようと色々試してみたが効果は無し。

ああ、これからまたシュウが戻ってきたらまた何かありそうだ・・と頭痛もしてくる始末。
そして熱のある頭でどうにかこうにか考えてみた。

「(エクセレン・・はダメだ。キョウスケも・・ダメだな。
 ブリット・・・うーんダメだ・・・。アラドもダメ・・・・)あ!」
「にゃーー!?」
「にゃんにゃ!!??急に大きな声を出さないで欲しいにゃ!!」

突然の大声にクロもシロも毛が逆立っている。
マサキは「わりぃ」と掠れた声で謝りつつ、
クロとシロにあるお願いをした。

「なぁ・・・」
「??にゃ?」
「この前知り合ったアイツ・・・銀髪の・・・クボ・・じゃねー、えっと??
 クォ・・ブ・・・いやいや・・・そうだ!クォヴレー!」
「クォヴレーがどうしたにゃ??」
「アイツを連れてきてくれよ(アイツが一番まともそうだ)」
「にゃんでにゃ??」
「にゃんでもわんでもいーだろ??とにかくつれてきてくれ!」

そしてゆっくり眠らせろ!と心の中で叫びつつ、マサキは2匹をクォヴレーの元へ追い出しだ。



だがこの時のマサキの思考回路は熱でショートしていたようだった。
クォヴレーを呼べばもれなくついてくる、こわ〜いオマケのことを。



続きます。 シュウマサ(?)はどうしてもギャグちっくになってしまいます。 でもマサキの風邪話は一度書いてみたかったんです。 夏風邪は〜、のお決まり台詞を絶対零度の微笑で言わせたいんです! さてさてマサキは一体どうなるのか??? 次回までお待ちください。。。。 戻る