〜エイプリルフール・東北と上越〜


「あー!もう!本当に納得いかないんだけど!?」
「・・・」
「ねぇ!?君、聞いてる??東北ー?」
「・・・ああ、聞こえてはいる」
「聞こえてはいるってことは聞いてないんでしょ?
 そうだよねー、君ってそういうヤツだった」
「そうは言っていないだろう?
 その捻くれたものの考え方はよせ、といつも言っているだろう?」
「あー、はいはい!君の言うことはご最もだよ」
「上越・・・」
「なにさ?」
「俺が黙っていたのはきちんとした理由がある」
「・・・・ふぅん?」
「・・・・・わからないからだ」
「分からないって何が??だいたい!僕も分からないから君に話しているんだけど?」
「だが上越・・・」
「なにさ?」
「一緒に昼飯を食べていたら急に東海道が怒りだした、とお前は言ったが・・」
「それが何?僕は事実を言ったまでだよ?」
「・・・・そうだろうな。お前は確かに事実を言っているのだろうな」
「そうだよ!それなのに君ってば・・・」
「・・・上越」
「だからなにさ?」
「いつも言っているだろう?」
「は?なにを?」
「・・・・人の話を最後まで聞け、と」
「・・・・!・・・・悪かったね・・・、で?」
「ふぅ・・・、上越」
「・・・・うん?」
「『一緒に昼飯を食べていたら急に東海道が怒りだした』」
「うん・・・・」
「・・・それだけでは分からん」
「・・・なにが?」
「東海道が怒った理由がだ。
 それまでどんな会話をしていたのかを教えてくれなければ意見のしようもない」
「・・・!!!!」
「・・・そうだろう?」
「君っていつも冷静で的確に人を責めるよね?」
「・・・だが間違ったことは言っていない・・・つもりだ」
「・・・そうだね。それには僕も同意するよ」
「珍しく素直だな」
「僕はいつも素直だよ?」
「(どこがだ)・・・それで、怒り出す前にどんな会話をしていた?」
「どんなって・・・至って普通だよ?」
「いいから話してみろ」
「・・・わかったよ!無駄だと思うけどねぇ・・・・」
「・・・・・」
「・・・睨まないでよ、話すから。
 そうあれはたまたま食堂の入口で東海道と出会って、
 そのままなんとなく同じ席に着いたんだよね」
「その間、会話は?」
「・・・んー・・、特にないかな?今日は何定食食べる、とかその程度」
「そうか・・・」
「で、席について僕、味噌汁の具を見たんだよね」
「・・・味噌汁の具?」
「うん。だから僕、ちゃめっけたっぷりに、
 『今日の味噌スープはワカメとあぶらげだね!』って言ったんだよ!
 そしたらさぁ、アイツ!急に怒りくるって!
 『方言は使うなと言っているだろう!?下にしめしがつかん!』って怒り出したの!」
「・・・・・・なるほどな」
「なるほどな、じゃないよ!方言なんて山形じゃあるまいし!僕は使ってないよ?
 『味噌スープ』って英語も使ったのに、・・・!!あ!」
「なんだ?」
「あいつ、味噌スープが方言だと思ったのかな??」
「・・・それはないだろう」
「・・・そうかなぁ?でもそうしたら他に方言と思いつく言葉がないじゃない?
 発音だってきちんとしていたし・・・・・」
「・・・・上越」
「なに?」
「・・・・言葉とは非常に複雑でな」
「そんなこと言われなくても知っているよ!」
「まぁ、いいから聞け。
 言葉は非常に複雑で、毎日使っていると方言だと気がつかずに、
 それが『標準語』だと思い込んでしまうものだ。
 ・・・・俺にも何個かある」
「・・・何が言いたいわけ?」
「・・・お前、味噌汁の具材を何と言った?」
「はぁ?具材??『わかめ』と『あぶらげ』だけど?」
「・・・・上越」
「なに?」
「『あぶらげ』ではなく正しくは『あぶらあげ』だ」
「・・・・・、・・・・・、・・・・は?」
「『あぶらげ』は方言だ、・・・新潟のな」
「・・・!!嘘・・・」
「残念ながら嘘では・・・」
「あ!」
「!!なんだ?」
「今日は4月1日だよね?!」
「・・・当然なんだ??確かに4月1日だが?」
「ははぁん・・・、君、今日がエイプリルフールだからって僕に嘘を・・・」
「言っているわけではないぞ?残念ながらな。
 それに俺がそういう柄ではないのはお前が一番知っているだろう?」
「・・・・・・っ、そうだけど・・・、なら本当のことってこと??知らなかった・・・・」
「・・・・まぁ、気にするほどのことでもないだろう?
 ・・・一応、これからは東海道の前では使わないことだな」
「・・・・だね、そうするよ・・・」
「素直だな?」
「・・・僕だってたまには、ね。東海道を怒らせても良いことなんてないし?」
「・・・ふふ」
「・・・・!!君が笑うなんて・・・、これこそエイプリルフールの嘘みたいだ」
「・・・・失礼なヤツだな、お前」

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