**ブログで掲載していた有楽町の誕生日の話の続きのようなもの**
〜ハロウィン・マジック〜
・・・・昨夜の出来事が原因で、
今朝から東上の顔がまともに見れない。
今朝早く宿舎に帰って銀座に昨日の報告書を渡した時に、
目が赤いよ、と指摘されたし・・・。
目が赤いのは当然だ。
俺は泣いたから。
なんで泣いたのかって・・・・?
それは夕べが俺の誕生日で嬉しくて・・・、
とかそういう理由じゃないことは確かだ。
まぁ、誕生日プレゼントが嬉しくて、というのは間違いじゃないけど。
東上は俺にそんなプレゼントをあげたとかは少しも思っていないんだろうけど、
あれから半日・・・・、
俺は東上のことを考えると、
あの時に貰った南瓜味のクッキーよりも胸が甘くなる。
これってやっぱりあれだよなぁ・・・、
『恋』
だよなぁ・・・・。
ああ、俺ってばとことん苦労性・・・・。
東上を好きになったって絶対に報われないのに。
東上は秩鉄が好きだから、
だから絶対に俺に振り向くことはない。
昨日は俺が泣いたから、
だから抱きしめて、抱きしめ返してくれただけだ・・・・。
ああ、でも泣いたせいで、
抱きしめちゃったせいで、
俺は東上の顔がまともに見られない!!
どうしよう??
このままじゃ絶対に東上だって不審に思う。
タダでさえちょっと短気だから直ぐにキレるに違いない。
切れる→嫌われる、の図の出来上がりだ・・・。
いや、いまだってそんなに好かれちゃいないんだろうけど・・・・。
そんなことをウダウダ考えながらの仕事は思いのほか時間が立つのが早く、
10月31日もあと数十分で終わりを迎えようとしている。
今日の俺は和光市に泊まりだ。
ああ、今日も疲れたなぁ・・・・。
伸びをしながら備え付けの冷蔵庫から缶ビールを1本取り出す。
そして蓋を開け一口飲んだ所で・・・・・。
「あれ?有楽町?」
「ブーッ」
現れた人物に、口に含んだビールを噴出してしまった。
「・・・・、おいおい・・・?汚ねーなぁー」
現れた人物は呆れ気味にシンクの近くにかけてあったタオルで俺の足元を拭き始めた。
でも俺は固まったまま動けないままだ。
「これでよしっと・・・、おい、有楽町?」
動かない俺を不審に思ったのか、
俺より小さいその人物は下から覗き込むように俺の目を見てきた。
黒い綺麗な目。
普段は長い前髪に隠れてあまり見えないけど、
俺とは正反対の色をした東上の目は真っ黒で綺麗だと思った・・・。
「なに、ボーっとしてんだ?
昨日の疲れがまだ残ってんのか??」
「・・・・・」
東上の問いかけにも俺は応えられない。
いや、だって・・・声が出せない。
東上への思いを自覚してからほぼ1日・・・、
まだ心の準備が出来ていないんだ!!
どう話せば良いのかわからない!!
俺、今までどうやって口を利いていたっけ???
だけど、当然だけど!
何も答えない俺に東上の顔は不機嫌なものに変わっていく。
持っていたタオルをギュっと握り締め、唇を噛みしめた。
そして伏せ目かちな目で、ボソッと何かを口にした。
「・・・やっぱ、嫌いになったのかよ・・・」
「へ?」
一体、何のことだろう??
俺は缶ビールをテーブルの上において、アワアワと両手を動かした。
「やっぱ、昨日・・・、俺が余計なコト言ったから嫌いになったんだろ?」
「へ・・・?・・え?・・・えぇぇぇ??」
なんでそうなるんだ??
俺はますます慌てて両手をワタワタさせる。
そしてとりあえず東上の肩の上に手を置いて、
あー・・、とか、うー・・とか言葉にならない言葉を出していた。
だけど東上の顔つきはますます厳しいものになっていて・・・・。
「ほっといてもとか、一人が大丈夫なやつなんていねーだろ?
・・・なんて・・・、俺はそうだけどお前は違ったんだろ?
お前は一人でも平気だったんだろ?
それなのに俺がわかったようなこと言ったから嫌いに・・・」
!!!!????なんでそうなるんだ??
俺は本当に東上のあの言葉が嬉しかったのに・・・・。
やっと分かってくれる『誰か』に会えたと思ったのに・・・・!
このまま誤解を誤解させたまま、理解者を失うのは嫌だ。
俺は東上の肩を掴む力を強めた。
「違う!!」
「・・・・っ」
「嫌いになるわけないだろ?
だって俺、東上のあの言葉、本当に嬉しかった!」
「・・・・本当かよ?
だったらなんで今日のお前は俺と目を合わせなかったんだよ?」
「・・・それは・・・、その・・・、恥ずかしくて・・・」
「恥ずかしい?・・・何が?」
「・・・俺、泣いちゃったし・・・、恥ずかしいだろ?大人が泣くなんて」
「・・・・悲しいこととか、嬉しいこととか、悔しいこととか・・・、
そういうのがあれば大人だろうが子供だろうが・・・関係ないだろ・・・」
「・・・・東上?」
どういうことだろう?
俺は真っ直ぐに東上の顔を見下ろした。
・・・今日、自分から初めてまともに見る東上の顔。
黒い綺麗な目。
俺とは正反対の色。
「大人だって泣いていいんじゃねーの?」
「・・・・!」
ああ、まただ。
また、胸が痛い。
・・・東上の言葉が嬉しくて、胸が・・・・。
「・・・有楽町・・・?どうし・・・って、うわっ!!」
「・・・ごめん・・・東上・・・」
「ちょ・・・、苦しいって・・・、なんなんだよ!」
東上はお前は昨日も今日もなんなんだ、と、
俺の腕の中で暴れているけど、
俺はかまわず抱きしめていた。
「東上・・・俺・・・・」
「・・・っ・・・、ん・・・だよ?」
俺があんまり強く抱きしめるからか、
東上は途中で諦めたようだった。
ダラリと腕を下に下げ、黙って抱きしめられている。
「俺ね・・・、昨日・・・恋をしたんだ」
「・・・・!!・・・ふぅん・・・?」
抱きしめる、東上の身体が小さく震えた。
何かに怯えているかのような震え・・・・。
何に怯えているんだろう?
俺がこれから言うことが分かっていて、警戒しているんだろうか?
でも、もう、止められない。
「初めて・・・、自分のことをわかってくれる人に会えたと思った。
俺の心の奥の寂しさを分かってくれたって言うか・・・、
だからさ・・・、恥ずかしくて今朝からまともに顔が見れなかったんだよね」
「・・・・!!」
東上の震えが大きくなった。
やっぱり警戒しているのかな?
ここまで言えば俺が誰を好きか、わかったと思うけど・・・。
それとも東上はちょっと鈍いみたいだし、分からないかな・・・。
そしてもう一度、はっきり言おうかどうか、迷っていた時だった。
腕の中からその声は聞こえてきた。
「・・・トリックオアトリート」
「・・・・・?」
トリックオアトリート?
それって確かハロウィンの・・・・、
や、昨日が俺の誕生日で、
だからそれから1日経った今日はハロウィンだけど・・・・。
「・・・東上?」
「・・・トリックオアトリート・・・。
有楽町・・・・・・」
「・・・は、はい?」
「・・・お菓子、持ってねーの?」
「・・・え?お菓子??」
人が決死の思い出告白しているってのに、
なんでいきなりハロウィンを始めるんだ??
でも俺はやっぱり真面目なのか、
東上を腕から開放して自分のポケットとかを探してみるけど、
飴の一つも見つからなかった。
「・・・お菓子、ないんだな?」
東上の確認する声が聞こえた。
俺は無言で頷くと、小さな声で東上がわかった、と言った。
・・・何が分かったんだ???
俺が首を傾げようとしたその時だった・・・。
ネクタイが突然引っ張られた。
「うわわっ!!ごめん!!ごめんってば!!」
殴られる、と思って俺はとりあえず謝った。
確かにハロウィンなのにお菓子の一つも持ってない俺は悪いし・・・。
目を閉じ、衝撃にそなける・・・・でも・・・・・。
「ごめ・・・、ん?・・・・んんん??」
・・・唇に濡れた感触。
やたらに近い、他人の息。
黒い綺麗な目がやたらと近い・・・。
・・・あれ??あれれ・・・・?
「ん?・・・・ん・・・・ふ・・・・」
黒い目がゆっくりと閉じられていく。
ネクタイから手が離れ、
その手が俺の首に回っていた・・・・。
・・・間違いない、・・・俺・・・キス、されてる・・・?
「・・・俺も・・・お前が好きみたい・・・」
「・・・・え?」
夢見心地で・・・、いつの間にか終わっていたキス。
だけど東上は俺の首筋に顔を埋めて、まだ抱きついてきている。
「さっきの・・・お前の恋の相手って・・・俺だろ?」
「・・・・!!」
・・・わかっていたのか・・・、ちょっとビックリ。
なんて思いながら俺は無言で小さく頷いた。
「・・・俺も気がついたのは昨日だけど・・・。
お前が俺の言葉に涙流して・・・、
で、俺を抱きしめてきて・・・・、
なんだか放っておけないな・・・って思ったら・・なんか・・・」
・・・好きかもって思った・・・・。
東上はそう言った・・・・。
真っ赤な顔でそう言った・・・・。
俺も真っ赤な顔で頷き返す。
「お前も俺を抱きしめてきたし、ひょっとしたらって思った・・・。
でも勘違いだったら嫌だし・・・・・、
だからハロウィンにかこつけて・・・・、
お前がお菓子持ってなかったらキスしてみようって・・・、
もし違っても・・・悪戯でごまかせるし・・・・」
・・・俺、臆病だから・・・・。
東上がはみかみながら、そう言った。
俺は少し困ったように微笑み返した。
だってそうだろ?
「東上・・・」
「・・・?」
「臆病じゃない人なんて、いないんじゃないかな?」
「・・・・!」
・・・だって俺だって臆病だから。
俺の言葉に東上の顔がくしゃりと歪む。
そしてその後、嬉しそうに小さく頷いてくれた。
その顔に胸が甘くなった。
「・・・東上」
「・・・・?」
「トリックオアトリート」
「へ?」
俺は、さっき東上がやったのと同じような悪戯をけしかけた。
おそらく東上も俺の意図を汲み取って、
例えお菓子を持っていたとしても、その答えは・・・・。
「東上、お菓子は持ってる?」
「・・・あー・・・、その・・・」
「・・・持ってないよな?」
「・・・・お、おう・・・」
「そっか・・・、じゃあ・・・」
悪戯しなきゃね・・・、と耳元で囁けば、
東上の耳が見る間に赤くなるのが見て取れた。
だからその赤くなった耳に・・・・、
「ひゃっ!!」
カプリと甘く歯をたてた・・・・。
・・・震える東上の身体。
俺は嬉しくなって、それからおでこ、頬、鼻、にキスをして、
最後に唇にふれるだけのキスをした。
そしてお互い真っ赤な顔のまましばらく見詰め合って・・・・、
どのままどちらともなく唇を寄せ合い、
長くて深くて、甘いキスをした・・・・。
今までの寂しさを埋めるように、
これから先、寂しくならないように、と祈りながら・・・。
2011/11/2
続きをというお声がありましたので、続きを何気なく書いてみた。
・・・けれどあまり甘くない上、ちょっと意味不明・・・(TT)
でも有楽町は優等生(?)だから多少なりとも寂しさを感じているに違いない!
東上は・・・・、きっと寂しいにちがいない!
と、いう妄想で寂しいもの同士惹かれあいました的なお話にしたつもり・・・。
うーん・・・しかしながらリベンジが必要なデキですな!
まぁ・・いずれ・・・そのうち・・・・。
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