〜これはスポーツです〜



「・・・・だれてんなぁ」


フリーペーパーを片手に和光市駅に来てみれば、
メトロの副都心がグテッとしていた。

「東上さんじゃないですかー」

東上をみとめると、副都心は一瞬だけ顔を上げたけれどもすぐにまた伏せてしまう。

「節電、節電で暑いですよねぇ・・・、僕、もうダメです」
「・・・・何言ってるんだよ」

夏本番までまだあるぞ、と持ってきたフリーペーパーで副都心の頭を叩く。

「痛っ」

殴られた頭をさすりつつ、
伏せていた状態を起こして東上を軽く睨むが、
それ以上に睨み返され副都心は口を噤んだ。

「地下鉄は地上よりマシだろーが!!寄居方面なんかクソ暑いんだぞ!!」
「・・・・何を言っているんです?地下鉄だって暑いんですよー?」
「・・・屋内にあるだけマシだろ?」
「・・・・甘いですよ」

副都心はビシッと東上を指差すと、
人の悪い笑みを浮かべながら言う。

「西武さんとの乗り入れ駅の小竹向原の暑さは尋常じゃないんです!
 アソコはつい最近まで冷房もありませんでしたし・・・」
「でも今はついているんだろ?」
「まーそうですけど・・・、節電が騒がれている昨今ではねぇ・・」
「甘えてんなよな!レールが曲がらない暑さは暑くねぇんだよ!」
「!」

この営団が!と今度は東上が副都心を指差した。
すると副都心がまたまた人の悪い笑みを浮かべ、
座っていた椅子からスクッと立ち上がった。

「そういえば貴方のところは何年か前にレールが曲がってましたよねぇ・・・」

そう言いながら副都心はスッと東上の額辺りに手を伸ばした。

「・・・副都心?」

汗で張り付いた前髪をそっと横に流してやりつつ、
副都心はズズイと顔を東上へと近づける。

「な、なんだよ?」

髪を撫でていた手を今度は顎へともっていく。
クイッと上へと向かせ副都心は目を細めた。
東上は副都心の手を外そうと首振ったが、
想いのほか彼の力が強かったので仕方なく諦めてだまって副都心を見上げる。

「東上さんも汗をかいてますね」
「・・・そりゃ外から来たばっかりだしな・・、ここの冷房もあんまりきいてねーし」
「ですね・・・、つまりどこに居ても汗はかくわけですよ」
「暑いからな。仕方ねーんじゃねーの?」
「そうですね・・・。ところで東上さん」
「?」

上を向かされたまま東上は首を傾げる。
副都心の目の奥が一瞬だけ怪しい光を帯びたが、東上は気づかなかったようだ。
東上に気づかれないように心の中でほくそ笑み、
いつものように読めない表情を浮かべながら副都心は言った。

「・・・舌を少しだけ出してくれません?」
「はぁ?舌???」
「そうです、こういう感じで・・・」

そう言って副都心はベェ、と自分の舌を出した。
当然だが不審にも持った東上は怪訝そうな顔をして理由を尋ねる。
すると副都心はシレッと答えるのだった。

「・・・東上さんが夏バテしてるかどうか調べるんですよ」
「夏バテ??舌でわかんのかよ?」
「・・・・ええ、まぁ・・・・」
「ふぅん?」

拭えない疑問を抱きつつ、とり合えず言われたとおりに舌を出す東上に、
副都心はクスッと笑った。
一体なんなんだ?と東上が眉を寄せたとき、
突如視界が翳り、唇に温もりを感じた。
そして口の外に出していた舌が何かに吸い付かれていた。

「!!!????」

他人の口内に持っていかれた舌に軽く歯が立てたて、
チュクチュクと音を立てながら吸われる。

「・・・ふ・・・ぅ・・・んーーー??」

副都心は自分の口内にある他人の舌に、
自分の舌を絡ませ優しく嬲り続けた。
けれどドンドンと胸を強く叩かれ、
痛さのあまり副都心は東上の口を開放した。

「んんぅ・・んんっ・・・」
「・・・痛いですよ、東上さん」

副都心は自分の濡れた唇を拭いつつ、ジロッと東上を見下ろす、が、
東上もまた自分の唇を拭いつつ、真っ赤な顔で反論をした。

「て・・てめぇがいきなり・・・ひ、ひひひひ人の舌を吸うからだろーが!!
 だいたい!夏バテを調べるとかなんとか言いながらなんで・・・」
「・・・だから調べていたんですよ」
「は?」

副都心は口端をあげて笑いながらジリジリと東上に近づいた。
そしておもむろに東上を抱き寄せるとそのまま机の上に押し倒す。

「おわっ!?」

陥った危機的状況に慌てて身を捩るが、
足の間に副都心が居るので出来ない。

「夏バテしているならキスで反応したりとかしないでしょう?
 これが一番手っ取り早い調べ方なんですよ?」
「何を言って・・・・、んぅっ」
「・・・ふふ・・・、いい声」
「や、やめ・・・、ろ・・・」

副都心の肩に手を置き、そのまま向こう側へと押し返そうとするが、
身体の中心を副都心の足に刺激され、力が急激に抜けていってしまう。

「東上さんは夏バテの心配は全くなさそうですね」
「・・・う、うるさ・・・い、な!
 ちょ・・・首!!首、舐めんな!!」
「・・・しょっぱい味がしますよ?そうとう汗をかいたんですね?」
「!!!!な・・なななっ・・・・」

東上の首を舐めつつ、味の感想を述べる副都心に東上は更に身体から力が抜けてしまう。

「東上さんも僕の首、舐めてみますか?」
「だ・・誰が・・・この・・・へんた・・い!!」
「その変態に舐められて反応を大きくしている貴方も同類ですよ・・ねぇ?」

楽しそうに笑いながら、東上の腰まで手を伸ばす。
そして腰で結わいていたつなぎの袖をシュルンと解くと、
そのままつなぎを床に落とした。

「・・・は・・・あ・・・副都心!!・・・やっ」

下着を膝の辺りまで下ろされ、直に中心を握られる。
東上は無意識に副都心の首にしがみついて、
身体をビクン、ビクンとうねらせた。
次第に濡れた音が耳を掠め始め、
いたたまれなさに東上は目を瞑る。

「すごくヌルヌルしてきましたね・・・・、
 ココも首と同じく汗をかいていただろうし、
 舐めたら塩味なんですかね・・・・・?」

東上の耳元でクスクス笑いながら、副都心は首に舌を這わせる。

「あーっ・・・あっ・・・」

東上の身体はさらに激しくうねり跳ね、
副都心の指の間からから先走ったものが一筋、また一筋と流れ落ちていく。

「・・・ふふ・・・、こう暑いと汗をかきますからね。
 どうせ同じ汗をかくなら、気持いいことしてかきたくありません?」

たとえばセックスとかで・・・・、
耳を舐めつつ低い声で語りかければ、
閉じていた東上の目がバッと開き、副都心を見つめた。
そしてギュッと唇を噛みしめ、副都心を睨む。

「有楽町とやれよ!!俺を巻き込むな!!」
「先輩と・・・・?」

東上の言葉に目を見開き、やがて小さく笑った。
先走りで濡れた手を東上の後ろに移動させながらニッコリと微笑を浮かべながら、

「・・・先輩は僕の聖域ですから。汚したくないんですよ」

と言うのだった。
副都心の指に後ろを弄られながら、
息も絶え絶えに東上は訴える。

「・・・お・・れ、は・・・いいのかよ!?」

すると副都心はまた目を見開き、今度は小さく微笑んだ。

「貴方は汚したい対象です。なぜなら僕の聖域ではないですから。
 それに普段強がっている人ほど支配のしがいがありますからね・・・」
「・・・じょーだんじゃねーよ!!」

どけっ、と副都心の身体を押し返すが彼は微動だしない。
それどころかベルトを外す音とジッパーが下りる音がして、
さらには今まで指が入っていた場所に熱く硬い何かを感じ慌てた。

「ふ、副都心!!」

両手をバタつかせるが、彼の両足を持ち上げられているので逃げられない。
ゆっくりと、けれど確実に入ってくる異物に東上は咽をヒクつかせた。

「・・・東上さん・・・、息を吐いて・・・、そう、今度は吸って」

副都心自身も痛いのか、珍しく真剣な顔に眉を寄せている。

「う・・・ん・・・ん・・・は・・・くるし・・・い・・・」
「苦しいのは最初だけですよ・・・。
 大丈夫、これはただの気持ちのいいスポーツです」
「・・・んなわけ・・あるか、よ・・・っ!痛っ・・・」
「痛いんですか?でも身体は熱いままだし、・・・・いい汗もかいてるみたいですよ?」
「あほっ・・・!そりゃ・・あぶら・・あせ・・・だ・・・、!!?」

その時一瞬、ズン、とお腹の中に何かが納まったような気がした。
涙で滲む視界で上を見上げれば、
副都心も息を乱してはいたが動きは止まっていた。

「・・・ぜんぶ・・・はいったのかよ?」
「・・・・おかげさまで・・・、
 あとは気持ちよくなっていい汗を沢山かくだけですよ」
「いい汗じゃなくて・・・背徳のあせじゃねーか・・・仕事中に・・・」
「僕と貴方ではただのスポーツですよ。背徳にはなりません」
「・・・はっ・・・そーかよ・・・」
「・・・あなたもその方が楽でしょう?」
「・・・・・・っ」
「東上さん?」

急に黙り込んだ東上に副都心は心配げに顔を覗き込む。
けれど東上はキッと睨んできて、
副都心の首に強くすがり付いてきた。

「・・・東上さん?」
「・・・いいから・・・さっさと動けよ・・・、
 俺だって同じ汗をかくなら気持ちよくかきてーしな!」
「・・・・・・」
「・・・これはスポーツなんだろ?・・・ならさっさとプレイを再開しろよ」
「・・・東上さん・・・、貴方って・・・」
「・・・なんだよ?」
「いえ・・・、僕は貴方のそういうこざっぱりしたところが割りと好きですよ?」
「はっ・・・!そいつは嬉しいこった!」

東上は副都心の首に回す腕に力をこめ互いの顔を近寄せる。
そして強気に副都心を睨んでいた目をそっと伏せ、口を薄く開けた。
数秒後には副都心の唇が重なり合い、
今度は東上が彼の舌を思い切り吸い上げてやった。
するとお腹の奥の彼が大きくなり、東上を少しだけ腰を揺すってやった。
その時、重なり合っていた唇がフイに離れ、
副都心が咎めるように東上を見下ろした。
東上は口を歪め、もう一度腰を揺すってみた。
やはり中に居る副都心の硬度が増し、
副都心はもう一度、今度は東上の唇を一度だけ吸い上げて、
そしてそのキスを合図に二人の身体が淫らに絡まり始めた。




有難う御座いました。 毎度ながら中途半端ですが、ここで終了です。 副都心→←東上な、お話。 この二人は難しいんです!! マイナー(?)だからでしょうか?? いえ、ただ単に私に文才がないだけ・・・・(涙) 2011/7/3 戻る