なんでそんな写真がこんな場所に・・・。
池袋駅のメトロの休憩室に呼ばれて行ってみれば、
そこには丸ノ内と有楽町と副都心、そしてなぜか銀座が居た。
みんなでテーブルを囲んで何かを見ている。
何か嫌なものを感じながら東上が4人のいるテーブルまで近寄ったら、
東上の目には懐かしい写真が飛び込んできた。







〜渋谷で会いましょう 1〜


「うわぁ・・・、これなんか可愛いですねぇ!」
「本当だ!ははっ!この東上、ベソかきながら誰かの足の後ろに隠れてるな」
「そういえば俺と銀座が初めて東上にあった時も東武の社長さんの後ろに隠れてたよなぁ」
「ふふっ・・・、そうだったかもねぇ」

メトロの4人がわき合い合いとセピア色の写真を見ている、が、
東上は背中の悪寒が止まらなかった。
自分の宿舎にも何枚か同じような写真があるが、
すべてアルバムにはさみ、押入れの奥底にしまいこんである。
だから今、4人が見ているのは東上線宿舎にある写真でないことは明らかだ。
そうすると本線側から借りたのだろうか?と、考えたが、
本線側には日光がいる。
日光は嫌味なヤツだがそこの辺はしっかりとしているので貸し出したりはしないだろう。

では、なぜ??

東上が真っ青になりながらボーゼンとテーブルを見つめていると、
疑問が顔に出ていたのだろう、ニコッと笑った銀座が教えてくれた。

「僕の部屋の押入れを整理していたら出てきたんだよ?懐かしいでしょ?」

そう言って銀座がピラッと見せてくれたのは、
大師よりは大きいが越生よりも小さい東上と伊勢崎が仲良くお昼寝をしている写真だった。
他にも伊勢崎と映っているものが多いので、
まだ合併はしていなかったがしょっちゅう行き来はしていたのでその時の写真であることはわかった。

「・・・・・っ!!!」
「東上さんも伊勢崎さんも小さくてかわいいですねぇ!」
「そうだな・・・、まだ開業前?」
「それか全線開業してない時の写真だろうな!」

丸ノ内、有楽町、副都心が可愛い、可愛いと言いながら次々と写真を見ているさなか、
銀座は相変らず青くなっている東上に話しかけていた。

「折角だから早川さんが映っているの以外は東武の君たちに差し上げようかと思って。
 東上はカメラが嫌いなのか映っているのが少なかったから30枚くらいしかないけど・・」

伊勢崎と日光は結構あったんだよ、と紅茶を飲みながら説明をし続ける銀座だったが、
徐に2枚の写真を掴むと、

「ほら、これなんか可愛いよねぇ」

と東上に渡してくれた。

「!!!こ、これ・・・」

写真を見た瞬間、東上は真っ赤に染まってしまった。
1枚は転んでしまったのだろう、地面に座り足を伸ばした状態でわんわん泣いている東上と、
そんな東上にオロオロしている伊勢崎の写真、
もう1枚は誰かに抱っこしてもらう瞬間なのか、それともお菓子でも貰う瞬間なのか、
今では考えられないほど満面の笑みを浮かべ、両手を差し出している東上の写真だった。

「うわぁ・・すっごい可愛いな!東上」

横からヒョコッと顔をのぞかせた有楽町がニコニコとその写真を見ていると、
更に横にやってきた副都心が、

「なんの警戒心も抱いていない様子から、お相手はそうとう気を許した方ですかね?」

と、言い、そして、

「でも東上さんって小さな頃から人見知りが激しかったんですねぇ」

と小ばかにしたように笑うのだった。
有楽町はコラッと副都心を怒るが、副都心の口がそんなことで止まるわけもない。

「だってこんなにあるのに大抵の写真はベソかいて誰かの後ろに隠れているんですよ?」
「まぁ、確かにそうだけど・・・・」
「それって小さな頃から人見知りってことですよね?」

ねぇ?と東上を覗き込むように副都心は声をかけた。
東上は身体を小さく震えさせながら全身を真っ赤に染めていたけれども、
人見知りが激しくとも彼の中の負けん気に火がついたのか、
キッと副都心を睨みあげて叫んだ。

「うっせーよ!僕は人見知りじゃない!」
「・・・・へぇ・・・、『僕』、ですか?」
「!!!!うっ!!」

東上はしまった!というように自分の口を両手で覆ったが既に時は遅し・・・、
有楽町も丸ノ内も銀座でさえもクククッと咽で笑っているではないか。

「そういえば東上って出会った頃は『僕』だったよな!銀座?」
「そうだね。写真をみて童心に戻っちゃったのかな??」
「へぇ・・、そうだったんだ・・・?俺と会ったときはもう『俺』だったけど」

いつから変えたんだ?と有楽町が東上に聞くが、
恥ずかしいのか真っ赤になって怒りを耐えている東上は答えない。

「うるさい!うるさい!うるさーい!そんなのどうでもいいじゃねーか!
 そんなこ・と・よ・り!俺は人見知りなんかじゃねぇ!!」

この写真はたまたまだ!とバンッと机の上にある写真を叩いた。
すると副都心の顔がいつも以上に胡散臭げに歪み、ある提案を口にし始めた。

「なら証明して貰いましょうか」
「・・・・は・・・、・・しょ、証明??」

一体なんだ?と訝しげな目を副都心に向けるがそんなことでめげる副都心ではない。
ニッコリ笑みを浮かべながら、簡単なことですよ、とある提案をしてきたのだった。

「東上さん・・・、僕は東急さんと直通を開始します。」
「・・・・知ってる・・・、2012年だったな」
「ええ・・・・。それで今のところ貴方のところを走るかはまだ未定ですが、
 おそらく和光市までは来ると思うんですよ、確実に。
 で、いろいろありまして今度、僕と先輩・・・・、あ、先輩も和光市駅を使ってますからね!
 と、西武さんと東上さんで打ち合わせをすることになりまして・・・、渋谷で☆」 
「はぁ!?」

サラリと爆弾発言した副都心に東上は怒りの声をあげる。

「んなの聞いてねーよ!」
「そりゃそうですよ、今初めて言いましたもん!」

当たり前じゃないですかぁ・・HAHAHA!と笑われ東上のこめかみに一本の青筋・・・、
なんとか有楽町に宥められ殴りはしなかったが・・・・。

「・・・で、その打ち合わせと、さっき言ってた証明とどんな関係があるんだよ?」
「簡単ですよ☆本番を前に東上さんが渋谷まできちんと来れるか試すんです!
 僕と先輩はわざと30分送れて待ち合わせ場所に着きますんで、
 その間に逃げずにいたら人見知りじゃないって認めてあげます♪」
「は?俺も!?」
「当然ですよ?わざと遅れるっていっても、
 東上さんがキチンと来るか遠くから見守っている必要がありますからねぇ・・・」

実際には僕と先輩は1時間くらい前についている計算ですよ、とニッコリ笑顔の副都心。
だけど東上だってだでに長く副都心より長生きしているわけではないので、
反撃・・、というか吠えるこをを忘れなかった。

「なんで俺がお前のその遊びに付き合わなきゃならねーんだよ!!」

なんとか言葉を紡ぎ出すが、やはり口では副都心が一枚上手で・・・。

「おや?逃げるんですか?」

と、ニヤニヤ顔で言われればメラメラと負けず嫌いに火がつき・・・。

「上等じゃねーか!受けて立ってやる!!」

と、本当は渋谷なんて行きたくないのに承諾してしまうのだった。
副都心は心の中でニヤッと笑い、有楽町はキリキリと痛み始めた胃を押さえた。

「さすが東上さん!男前ですねぇ・・・。
 では待ち合わせは明日の午後2時に・・・、モヤイ象前でどうですか?」
「モ、モヤイ・・・??ハチ公前じゃなくて??」
「ええ、モヤイ象前です。ハチ公前は定番すぎて人が多いですからね。
 モヤイ象前はハチ公よりは多少、人が少ないんですよ?」

少し気が楽になったでしょ?と笑えば、
カチンとした東上が体全体で馬鹿にされた怒りを表す。
まるでフーフーと毛を逆立てている猫のように副都心に向かって叫んだ。

「上等だ!!明日、首を洗って待ってろよ!吠えづらかかせてやる!」
「東上さんこそ吠え面かかないでくださいよ?」
「・・・吠えづらって・・・、喧嘩じゃないんだぞ、東上?副都心?」
「この写真のようにせいぜい泣きべそかかないことを祈っていますよ?」
「誰がかくかよ!?」





その後も東上はギャイギャイと副都心に食って掛かり、
副都心もそんな東上に小ばかにした台詞を投げ続け、
有楽町は相変らず間に入りながら胃をいため続けていた・・・・。




そしてその頃、休憩室の片隅では・・・・。



「ふふっ!なんだか楽しそうだね」
「だな!俺と銀座も明日、こっそり行ってみるか??」
「そうだねぇ・・・」


と、銀座と丸ノ内は優雅にお茶を愉しんでいたという。





2011/2/27


ありがとうございました。 捏造しまくり・・・・(笑) なんでこの話を書き始めたかといいますと、 私服の3人を書きたかったからです! だから『2』では題の通り渋谷で会うんですよ! まぁ『2』OR『3』で終わりますが・・・・。 それから小さい伊勢崎と東上が仲良かったらいいなぁ・・という妄想。 自分に絵が描ければ、 わんわん泣いているチビ東上にオロオロするチビ伊勢崎とか描きたかった(涙) 戻る