某百貨店の入口付近から二人の金髪の男はモヤイ象を見つめていた。
いや、正確にはモヤイ象の前に立っている人物をだ。

「・・・時間通り来ましたねぇ」
「ああ、しかも全然ビクついていないな」
「それも驚きですけど、僕としてはあの私服に驚きが隠せないというか・・」
「・・・私服に?」
「ええ。失礼とは思いますがお洒落には無頓着なイメージですので」
「・・・・(否定は出来ないな)」
「ですからリュックにシャツイン!なイメージがあったんですよねぇ」
「・・・・全然違うな」
「そうですね。だからビックリしました」
「・・・・でも東上のあの格好・・・(どこかで見たような・・・?)」
「なんです?」
「・・・いや、なんでもない」
「そうですか?ではそろそろ約束の時間ですし、行きますか?」
「ああ」







〜渋谷で会いましょう 2〜









モヤイ象の前に立ちながら内心東上はビクついていた。
副都心には啖呵をきったが、
極端な人見知りであるが故に知らない場所の人ごみは本当は嫌いなのだ。
だが年下に負けるのも癪だし、なんとか踏みとどまっている。
震えそうになる足を何度も叱咤しながら、だ。
途中、埼京にもらったあり難いアドバイス(?)を実行しながら。











・・・・時間は少しだけ遡る。



昨日、東上の昔の写真を銀座が持ってきて、
なんだかんだでメトロ連中にからかわれ、
それがどうしてこうなったのかは東上にはよく分からなかったが、
東上は今日、渋谷まで出向かなくてはならないのだ。
しかも副都心は「モヤイ象」前で、などと言っていたのだ。
渋谷に言ったことはなかったが、
かの有名な「ハチ公」の前なら東上もなんとなく分かったのだ。
けれど「モヤイ象」などサッパリ分からない。
困ったなぁ・・・、と頭を悩ませていたら丁度そこに埼京線が通りかかったのだ。
今のご時世、分からなければインタネーットで調べればいいと思うだろうが、
東上のところにそんなものがあるはずもなく、
そんな東上には埼京は天使に見えた。

「(埼京は確か渋谷も止まるはず・・・・)」





埼京を捕まえて事情を説明したところ、
彼はケラケラ笑ってモヤイ象の位置を説明してくれた。
最初は連れていってくれる、と言ってくれたのだが、
どこで副都心や有楽町が見ているか分からないので地図を描いて貰ったのだ。


『僕のとこの渋谷駅からだとちょっと遠いいんだけどね〜』

などと言いながら、埼京はきちんと副都心の所からの行き方も把握しているらしく、
スラスラと描いてくれた。
おそらく渋谷を利用するお客によく聞かれたりもするだろうから、
不思議ではないのかもしれないが・・。

埼京が地図を描いてくれている間、
服もないんだよな〜、
とか、
人ごみ苦手なんだよな〜、
と、ぼやいていたら、
埼京はますますケラケラ笑って、

『じゃ、僕がその二つとも解決してあげる〜』
『!!本当か!?』
『うん!そのかわり・・・・』
『・・・そのかわり?』
『今度、東上の昔の写真!僕にも見せてね♪』
『・・・・・ぐっ・・・、う・・・、わかった・・・』

と、とんでもない交換用件とともに解決してくれたのだった。
普段の頼りない彼がこんなに頼もしく思えたことは初めてだった。












「(・・・周りはジャガイモ・・・、ジャガイモだ!!)」

埼京からのアドバイス1。
周りの人間はジャガイモかニンジンと思え、であった。
東上はそれを忠実に実行し、なんとか30分もの短くも長い時間を耐えていた。
けれどそれもそろそろ限界で、はやくメトロの二人が来てくれる事を願っていた・・、その時だった。



「東上さ〜ん!」

呼ばれた方向に目を向ければそこには金髪の男が二人、東上に向かって歩いてきていた。

「・・・お前ら・・・・」

やっと着たか・・・、と目に涙が浮かびそうになるが、
東上は二人の格好に納得がいかなかった。
東上には私服で来いと言っておきながら、二人は制服姿のままだったのだ。

「東上!すごいじゃないか!30分も一人で・・・」

そんな東上の気持ちなど知る由もないのか、
有楽町か感激だ!とばかりに目が何かキラリと光っていた。

「本当ですね〜!ま、僕としましてはモヤイ象に迷わずこれたこと事体も感激です!」
「うん、うん!俺も東上はモヤイを知らないと思ってた」

知ってたんだな〜!とまるで保護者の如く嬉しそうな有楽町に、
相変らず胡散臭い笑みを浮かべている副都心、
彼ら二人が完全に東上の目の前まで来たとき、
東上はキッと眉間に皺を寄せて二人を睨み上げた。

「おい!お前ら・・・・」
「ん?なに?」
「・・・・なんで俺には私服を着て来い!っていいながら自分らは制服なんだよ?」

納得できねー!と怒鳴れば、副都心がニヤリい、有楽町は苦笑を浮かべるのだった。

「だって東上さん!」
「なんだよ!?」
「・・・・お前、東武の制服のままモヤイの前にいたら好機の目に晒されてたと思うぞ?」
「・・・・!?」
「そうですよー!僕らの制服はまだ背広にみえますから大丈夫ですが・・」
「!!???」

と二人が顔を見合わせてから東上に目線を戻すと、
東上はブスッとしながらもどうやら納得したようだった(しぶしぶだが)。

「・・・ま、あ・・確かに・・そうかも、な」
「でしょ?・・・・それにしても・・・」
「・・・なんだよ?」

副都心はジッと東上を上から下まで値踏みするように見つめ始めた。
当然だがそんなことをされれば気分がよくないので怒鳴ろうとしたが、
彼の横に立っている有楽町も同じ事をしていたので東上は怒りよりも疑問が勝ってしまう。

「・・・なんなんだよ、お前ら」
「・・・や・・・、その・・・東上の私服が珍しくて」
「俺の?」
「ええ!いつもはオレンジ色のつなぎだから余計そう思うんですかねー?」
「ああ!そうかもな〜。でも、黒一色なんて東上らしいといえばらしいのかな?」
「・・・オレンジとは対照的な色ですからね〜」
「胸元がちょっと開いててセクシーだし、
 体のラインも嫌味じゃない強調のされかたで、
 なんていうか・・・、昔風に言えばナウイってやつだよな!」
「・・・東上さんには『ナウイ』より『ハイカラ』のほうが伝わるんじゃないですかー?
 先輩の言い方が少しセクハラっぽかったですけど・・・・・」
「え!?そうだったか??ごめん!東上!別に変な意味は無いから!」

有楽町はあわてて東上に謝ってきて、律儀に頭も下げていたので気づかなかったようだが、
東上はその時の副都心の目を見てしまった。
副都心の目がなんだか冷たく光ったのだ。
なにが気に喰わないのか知らないが、
有楽町が副都心の地雷を踏んだことらしいのは東上にも理解できたのだが、
理由がわからなかったので何も言わないことに決め込んだ。
一瞬だったし、副都心がすぐに次の話題を振ってきたからだ。

「その服、どこで買ったんですか?」
「これか?」
「俺も気になるな。・・・・やっぱ池袋?今度教えてくれよ」

有楽町は何気なしにそう言ったのだろう。
けれど東上はまた見てしまったのだ。
副都心の有楽町を見る目が冷たく・・・・・、いや、やはり勘違いかもしれない。
心のどこかに疑問を残しながら東上は私服の種明かしを始めるのだった。

「残念だけど有楽町、俺は池袋で買ったわけじゃない」
「へぇ・・・?じゃ、どこで?」
「・・・・・・」

有楽町が首を傾げると、東上は少しだけ目元を赤く染めて言いにくそうに語り始めた。


「・・・貰ったんだよ、埼京に」
「・・・へ?」
「・・・埼京さんですか?」


サイズが合わないんじゃ・・・?と、その疑問が顔に出ていたのだろう。
東上はより一層言いにくそうに昨日の出来事を話し始めるのだった。


東上の話はこんな感じであった。


『服もないんだよな〜』と嘆いた時、
埼京がケラケラ笑って服をくれると言ってくれたらしい。
実はとある人物用に通販で購入したのだが、
埼京はおっちょこちょいでサイズを間違って注文してしまったらしい。
服をあげる人物にも自分にもサイズは小さい。
JRの仲間で総武や常磐に、『いる?』と聞いてみたが、
総武は『Lサイズ以外は着ない!』というし、
常磐は『趣味じゃない』と言って断られたらしい。
一度封を開けてしまったので返品できないし、
かといって捨てるのももったいないのでとっておいたのだが、
東上なら着れるかも!とその服を持ってきてくれたそうだ。
で、着てみればピッタリであったのでそのままありがたく頂戴したとか。

「じゃ、通販なんだ。その服・・・」
「そうみたいだな」
「最近の通販は質もあがりましたからねぇ・・・」

東上が話し終えたとき、何か面白いことでも思いついたのか、
副都心の目はニヤニヤしたものに変わっていて、
東上はなんだかいやな予感がしてならなかった。
有楽町を見れば、あーあ・・と言う顔をしているではないか。

「・・・なにかいいたいことでもあるのか?お前ら・・・・」
「言いたいことって言うか・・・・、東上さんってちょっとおバカさんですよねー?」
「なんだと!?」

聞き捨てならない台詞に副都心に掴みかかろうとしたが、
彼はそれをヒラリとよけて有楽町に同意を求めるのだった。

「そうだな・・・。東上、今、埼京の力を借りたことを言っちゃったからなぁ」
「・・・は?・・・・って・・・、げっ・・・、あーーーー!!!」

苦笑する有楽町に最初は首を傾げていたが、
東上はどうやら思い当たったらしい。
服のことを説明する辺りで、埼京に地図を描いてもらったことを言ってしまっていたのだ、実は。

「30分、人ごみで大丈夫だったので人見知りじゃないことは認めてあげますけど、
 他人の手を借りたからにはバツゲームを受けてもらいますよ☆」

それはもう嬉しそうに副都心は自分のズボンのポケットをガサゴソとあさり始め、
東上はどんな『バツゲーム』がそこから出てくるんだろう?と固唾を呑む。
副都心は一瞬チラッと東上を見て、ニッと笑うと、
本人の『ジャーン!』という効果音とともにその写真は出てきたのだった。

「げげっ!!その写真は・・・・!」

見せられたその写真に東上は真っ青になるが、有楽町はすでに見たことのある写真であったのだろう。
呆れた顔をしながら、

「その写真のドコがバツゲームなんだ?」

と、副都心に聞いていた。

「わかっていないですね、先輩」
「・・・はあ?」
「この写真は東上さんのどういう写真ですか?」
「どういうって・・・・」

ポケットから出されたその写真は、昨日メトロの宿舎に帰ったら時に銀座が
「こんなのもあった」と新たに出してきた写真の一枚だった。
写真には二人の子供が写っている。
一人は東上、そしてもう一人は・・・・・。

「お熱いキスシーンですね!東上さんと西武・・じゃない、武蔵野さんでいいのかな?」

そう、もう一人はまだ西武池袋がが西武池袋になる前の・・・、それも開業前か直後位の写真なのだろう、
その二人が映っている。
しかもただならんで映っているのではない。
東上が武蔵野鉄道の頬を両手で押さえて唇と唇を合わせている写真だった。


「そ、そそそそそそそ・・・・しゃしゃしゃしゃ・・・」
(訳:その写真)
「・・・東上・・、言葉になってないぞ?」
「だ、だだだだだだだ・・・・どどどどどど・・・・」
(訳:だって、どこから)

体中に冷や汗をかきながら東上はフラリと副都心に近寄り、写真を取ろうとしたが、
サッと頭上に上げられてしまい出来なかった。
・・・・身長では勝てないのだ。

「そんなに慌てているということは表に出したくない写真ということですね?
 それならやはりバツゲームはこの写真の大公開!ということにしましょうか?
 ・・・・・まぁ、30分も人ごみを我慢なさっていましたから、
 とりあえず池袋の面々だけにしておきますよ☆」

・・・それって東上にとったら係わり合いのある鉄道のほとんどなんじゃ?
と、有楽町は思ったが言わない。
それよりなによりもう一人の登場人物、
西武の許可は取ったのか?という問題が彼の胃を痛め始めたからだ。

「やめろ!副都心!つーか返しやがれ〜!!!」
「いやですよ!これでしばらく僕と先輩の周りが静かになると思いますしね!」
「は?そりゃどういう意味だ!?」
「さー?どういう意味ですかね?
 というわけで、先輩!胃を押さえてる場合じゃないです!逃げますよ!!!」
「誰のせいで痛み出したと・・・って、うわっ!!こらっ!ひっぱるなぁぁぁぁ」

副都心がすばやく有楽町の腕を掴むと写真をヒラヒラさせながら渋谷の町へと消えていってしまう。
ふたりの小さくなっていく背を見ながら、
渋谷という都会は怖いので追えない東上は悔しげに唇を噛みしめ、
最後の足掻きとばかりに叫ぶのだった。

「こらぁぁぁっ!逃げんな!副都心!ゆーらくちょーーー!!」


東上の試練は続く・・・・・。

























『おまけ1』(副都心×有楽町・・・のようなもの。副都心が告白してます)



「・・・なんとか撒きましたかね?」

まわりまわって副都心線の渋谷駅の人のいない一角に逃げ込んできた二人、
副都心と有楽町はゼェゼェと息を乱している。
全力疾走なんて久しぶりのことだった。

「先輩☆大丈夫ですか?」
「・・・・はぁ・・はぁ・・・、ふー・・・まぁ、なんとか・・・」

有楽町はあらかた息が整い終わると、フーと大きく深呼吸をして、
その勢いのままゴンッと後輩の頭を叩くのだった。

「・・・痛いなぁ・・・・」
「『痛いなぁ』じゃない!全くお前は・・・・」

明日、いや今日かもしれない・・・、東上にあったらどう説明するんだ!?
とどなれば、副都心はニッコリ笑って、

「なんとかなりますって!」

と置き楽に言う始末。
そんなものだから有楽町が更に深いため息を吐けば、
副都心はなぜかムッとするのだった。

「何をムッとしてるんだよ、お前は・・・・。ムッとしたいのは俺だろー?」
「・・・どうしてです?」
「お前、いっつもいっつも東上・・・、
 西武もだけど、意味もなく突っかかったりからかったりしすぎ」
「・・・・・そうですか?普通だと思いますけどねー?」

有楽町のお説教もなんのその・・・、あいかわらずムッとしたままそっぽを向く副都心に、
やれやれと肩を竦めるしかなかった。

「普通ってこたないだろう?東上のご機嫌をとる俺の身にも・・・」

だがそこまで言った時、ソッポを向いていた副都心の眼光が鋭くなり、
ダンッと音を立てて壁に手をついた。

「・・・・へ?」

突如、壁と副都心の間に挟まれた有楽町は当然だが困惑した。
副都心が突然に激昂した理由も不明なのだからそれも仕方ないだろう。

「先輩・・・、僕・・・・」
「・・・あ、ああ?・・なに??」
「僕、今日、わざとこの計画を立てたんです。
 東上さんと西武さんのあの写真が出てきたのは想定外でしたけど、
 他にも二人をしばらく僕と先輩から引き離すネタは持っていましたので」
「・・・わざと???ネタ・・・・?」

お前、脅迫でもする気か〜?とおどけたようにわざと言ってみたが、
副都心は真面目な顔で有楽町を見下ろしている。

「JRの方々や、丸ノ内さんは別として、
 僕がいて、先輩がいて、西武さんがいて、東上さんがいて、
 先輩とちっとも二人きりになれないじゃないですか?
 僕たちの路線上仕方ないことですけど・・・・」
「・・・う、うん・・・、まぁ、そうかな??」
「僕はそれだけでも腹立たしいのに、先輩はいつも東上、東上、・・西武、西武!・・そればっかり」

そこまで言うと、副都心は少しだけ自分の顔を有楽町へと近づけた。

「僕のことはちっとも気にしていないでしょう?僕は・・・こんなに・・」

そう言って、副都心はさらに顔を有楽町へと近づけた。

「・・・や・・、そんなことはないと・・思う、ぞ??(てか顔が近い!!)」
「そんなことはあります!僕はそれが腹立つんです!僕は・・・僕は・・・!
 僕はこんなに有楽町先輩が好きなのに!!」
「・・・・え?・・・えぇぇぇぇ!!?」

誰もいない駅の片隅に響き渡る絶叫。
副都心はそれには構わず話を続けるのだった。

「だから今日の計画を立てたんです。何でもいいから東上さんが失敗して、
 バツゲームと称してあの二人がしばらく僕と先輩の前から消えてくれたら・・・」
「・・・消えてくれたら?」

なんだというのだろう?と思うが、副都心に迫られている今、考えつく先は一つしかなかった。
自分の唇に近づいてくる自分以外の吐息。
・・・・マズイ、と有楽町は思った。
副都心のことは嫌いではないが、恋愛対象としては考えたことがなかったのだ。
だか告白されてしまったので、考えなければならない。
それには時間が必要だ。

「しばらく時間をくれーーー!!」
「!?」

火事場のバカ力・・・・、有楽町は力の限り副都心を引き剥がし、その場から走り去った。
不意打ちによろけた副都心は、有楽町を引き止めることが出来なかったが、
『しばらく時間をくれ』という答えには満足したのか、
満足そうに笑って、

「しばらく、ね。・・・そんなに長くは待ちませんよ?」

と、もう姿も見えない先輩に向かって言うのだった。











一方の有楽町は渋谷で電車に飛び乗り、
途中で有楽町線に乗り換えて新木場駅まで非難してきていた。
副都心の突然の告白に驚き、フラフラと歩いていたら、
人の話し声が聞こえてきたのでなんだろう?と顔を上げれば・・・。


「・・・・!!!!??(嘘だろ〜???)」

駅の一目のつかない場所でその二つの影はイチャイチャしていた。
時折唇をくっつけたり、お互いの身体を弄ったり(服の上からだが)。

「(埼京とりんかいってそうだったのか・・・、って、あれ??)」

知らなかった衝撃の事実に撃沈しかけた時、有楽町はあることに気がついた。
東上は埼京から服を貰ったと言っていた。
埼京は誰かに贈る服を通販で買ったと言っていた。
りんかいの服は黒尽くめで、胸の辺りが空いていて、
それでいて体の形も嫌味がないくらいに強調されている・・・、
そうつまりさっきの東上が着ていた様な感じの服だった。




有楽町からはちょっと遠い駅の片隅では相変らずいちゃつく二人組み。
けれど東上のを『見たことある』と思っていたので、
疑問が解け、有楽町は少しだけ疲れが取れたような気がした。


・・・・副都心のことを考えると相変らず胃は痛むけれども。












『おまけ2』(西武池袋×東上・・・のようなもの。池袋が壊れて?ます)




池袋駅。
東上は恐る恐る自分の改札口から身体を乗り出した。
キョロキョロ見渡すが、アイツの姿が見えないことに胸を撫で下ろし、
改めて改札口から体全体を出した時だった。

・・・アイツは現れた。

「東武よ!」

人を見下したような物言い・・・、間違いない、アイツだ!

「聞いたぞ!貴様!昨日は渋谷に行ったそうだな!?」

何で知っているんだよ?と言いたかったが、
副都心がすでにあの写真を見せたに違いない。
東上は、ああ、と小さく頷くだけにしておいた。

「貴様!渋谷に来たのなら何故西武百貨店に寄らなかった!?
 昨日は私も所要で渋谷の西武百貨店に居たものを・・・・」
「んなの知るかよ!?用がそれだけなら俺はもう行くぞ!?」

これ以上、ここにコイツと一緒に居たらよくない事が起きるかもしれない。
早めに退散が一番だ!とクルリと背を向けようとしたが、
一歩遅く西武に腕を掴まれズルズルと連行され始めるのだった。

「ちょっ!・・待っっ!西武!」

そして連れてこられたのは西武鉄道の休憩所。
西武は誰もいないことを確認すると、カチンと扉に鍵を閉め、
力任せに東上をソファーの上に放り投げるように突き放す。

「・・・・痛っ!!」

投げられた衝撃に一瞬目を瞑るが、
やはり西武はいいソファーを使っているのか、背中の衝撃は思ったほどではなかった・・・、
などと思う間もなく上から圧し掛かってこられ、東上は慌てて暴れだしたが、
体格は西武の方が良いし、圧し掛かられているので圧倒的に体勢は不利であった。

「どけよっ」

精一杯睨んで怒鳴るが、西武は余裕の笑みを浮かべると、
同時に懐からあるものを取り出してそれを東上に見せる。

「そ、それは・・・・」
「懐かしい写真だと思わんか?貴様も私も小さなことだ」

西武が取り出した写真は副都心が『バツゲーム』と言って出してきた写真だった。
ああ、やはりもうすでにコイツの手に・・・と、ガックリしていたら、
西武は楽しそうに東上のつなぎのファスナーを下ろし下着の上から中心を握りこんできた。


「・・・・ンっ・・・」


突然の刺激にビリッと体全体に衝撃が走り、思わず声を漏らしてしまう。
西武は首筋に唇を寄せながら喋り出だした。

「この写真をみて私は思ったのだ」
「・・・、に・・・を・・・だよっ」

なんでもいいからその手をどけろっ、
と西武の手の甲を抓るが逆に中心を掴む手の力が強くなり、
背を仰け反らせるだけになってしまった。

「この写真以来、つまり私と貴様のファーストキスの時以来、
 貴様からキスをしてもらっていない、とな」
「・・・そ、それ・・・は・・・・」

そうかも・・・と、呟けば西武がニヤリと笑うので熱くなる体とは別に頭は冷えていく。

「せっかくだ・・・、今日は貴様から私にキスをするまでイかせるのは止めにしようと思う」
「・・・なっ・・・って、あっ!」

西武の手の動きが早くなり、もう少しの刺激で達せる、と思ったとき、
すでに下着は下ろされつなぎも脱がされ、Tシャツだけになっていた東上のそそり立つ中心の根元に、
西武はポケットから取り出したハンカチーフをグルリと回し、キュッと縛めてしまった。

「・・・て、てめっ・・・アっ・・・」

恨めしげに西武を睨むがとうの本人は涼しい顔で自分の制服を脱ぎ始めているところだった。
全て脱ぎ終えると東上の太ももの後ろに手を添え、上に持ち上げる。

「私にキスをしたくなったら言え。それまでは貴様のココ・・・」
「あ、あぅっ!!」

ペロリと舐めた指を容赦なく東上の蕾に入れ、執拗に掻き混ぜ始める。

「ココを指と私自身で可愛がってやる」
「だ、だれが・・・てめぇ・・なんかに・・き、キス・・・なんて、するかよっ!」
「それは私にココをいつも以上に苛めてほしいという新手のおねだりか?
 なら応えてやるのもやぶさかではないが・・・・」
「ち、ちげーよ!!アっ・・・、やめろっ・・・って、ン・・ンン、ゥ・・」




・・・結局、達せない苦しさに負けて東上が自分からキスをするのは30分後のこと。
一度してしまえばヤケクソにでもなれたのか、
東上はあの写真と同じように西武の頬を両手で押さえて唇を貪ったという。



2011/3/6


ありがとうございました。 前も書きましたが、捏造しまくり・・・・(笑) 3人の私服が書きたい、とか言いながらメトロの二人は結局制服(涙) 副都心×有楽町も実は結構好きですよ。 R指定は難しいけど、チューくらいなら・・・・。 で、西武×東上はやっぱ西武が鬼畜(?)になってしまうんですよ〜。 りんかい×埼京もいつかは・・・!と思ってます。 戻る