朝だよ、と有楽町に揺り起こされて東上は目を覚ました。
すると目の前に笑顔を引きつらせた有楽町がいて、
東上は首を傾げる。
けど、すぐに有楽町の引きつった笑顔の理由がわかって東上も青ざめた。
有楽町の直ぐ後ろにニヤニヤ笑った彼の後輩が立っていたからだ。





〜和光市でみつかりました〜




「ぎゃーーー!!やめろっ!!」


東上は青い顔で逃げ回る。
有楽町は後輩、副都心の行動を諌めようとするが、
そんなことで副都心の行動が止まるわけもなく・・・。
車両転属の云々で身体が子供になってしまった東上は、
西武池袋のところでひと悶着があり、
こうして和光市の有楽町まで逃げてきたのだが・・・・。

「ほらほら、東上さん!
 西武さんの制服じゃメトロの宿舎にはいけませんよ〜??」

読めない笑みを浮かべつつ、副都心が手に持っているのはメトロの制服だ。

「ぜってー着ねぇよ!!第一!その服は俺にはでかい!!」

おそらく、彼が『新線』と呼ばれていたときのであろうその制服は、
確かに今の東上にはでかそうだ。

「大丈夫ですって☆これは僕がまだ出来たての頃のですから、小さめなんですよ!」
「いーやーだー!」

東上は青い顔で逃げ回る。
逃げて逃げて、ついに有楽町の後ろに隠れるが、
副都心はニヤニヤ笑いながらそんな東上に近づいてきた。

「ふふ・・・、追い詰めましたよ」
「・・・・っ」

東上が青い顔で口をパクパクさせている。
有楽町は後輩のなんともいえない楽しそうな顔に顔をヒクつかせている。
そして楽しげな副都心の手が東上の腕を捕まえようとしたその時・・・。

「あ!」

メトロの無線がなり、東上は目を輝かせた。
有楽町のズボンの後ろに身を隠しながら、副都心に無線に出るように即す。
この場所には副都心と有楽町しかいないし、
と、なれば後輩の自分が出るのがマナーであることはいくらKYでもわかっている。
副都心は少しだけ残念そうに無線へと向うのだった。

「・・・助かった」
「ごめんな、東上・・・・」
「どいつもこいつも何だって人が小さくなると、
 自分の所の制服を着せたがるんだよ!?」

東上の嘆きに有楽町は苦笑いを浮かべるしかない。
ムッと口を尖らせながら、それでも東上は有楽町の足から離れようとしないので、
無線に出ているとはいえ、まだまだ副都心に警戒している証拠だ。


「・・・・はい、わかりました」

副都心は無線の相手に相槌を打ちながら応答している。
そしてチラッと有楽町と東上を振り返ると、
何かいいことでも思いついたのか、ニヤッ笑って無線の相手に話しかけた。

「ところで銀座さん」

東上は副都心の笑い方に嫌なもを感じて、
有楽町に無線に近づくようにせっついた。
足に鉛(東上)をくっつけながら有楽町は副都心に近づき、
彼の肩に手を置いて目で銀座の用件の伺いを立てる、が、
副都心はそれを無視して銀座と話を続けるのだった。

「今、東上さんもここに居るんですがつれていっていいですか〜?」

ニヤニヤ笑いながらの副都心の提案に東上は青ざめ、
有楽町の足元から副都心の足元に移動し、彼のつま先を踏みつける。
けれど子供の体重ではたいしたダメージにならないらしく、
副都心は東上のおでこにデコピンをして報復をするのだった。
手加減なしのデコピンに東上はよろめき、
有楽町の足にぶつかりながらおでこを押さえて涙目になっていた。
さすがの有楽町も黙っていられず、小声で『副都心!』と咎めるが、
副都心は無視して銀座との話を続けていた。

「ええ、はい。わかりました。これから向います」

そして話を終えると涙を浮かべている東上の視線にあわせ屈みこみ口ばかりの謝罪をする。

「すみません、痛かったですか〜??」
「うーーーー!!」
「お前ねぇ・・・・」

有楽町は呆れ気味に副都心の頭を叩こうとしたが、
それをヒラリと避けて彼は銀座との話を二人に教えるのだった。

「銀座さんが宮崎のマンゴーを貰ったから食べにきなさい、だそうですよ」
「え?今から???」
「ええ、なんでも丸ノ内さんが今すぐ食べたいって言ったそうです」
「・・・・銀座は丸ノ内に甘いからな・・・・で、それに東上を連れて行くのか?」
「おや?反対ですか?」
「いや・・・・、東上にマンゴーを食べてもらうこと事体は反対じゃないけど」

今の状態の東上をメトロの全員(おそらく全員集まるであろうから)に見せるのは如何なものか、
と有楽町は考えてしまう。
足元の東上をみれば、青い顔でブンブンと頭を左右に振っているし、
ここは早く東武の本線に連れて行くのが得策だろう。
銀座には事の次第を話して、自分は東上を伊勢崎のところへ・・・と、
考えていたら、副都心はニヤリとした笑いを浮かべるのだった。


「・・・なんだよ?気持ち悪いな」
「せーんぱい!銀座さんには、
 東上さんも連れて行くって言っちゃったからもう逃げられませんよ?」
「はぁ!?」
「銀座さん、『それなら最高級の紅茶も用意しておくね』って張り切ってましたから☆
 これで行かなかったら・・・・、ねぇ?」

副都心は有楽町を見、東上を見て笑った。
完全に面白がっている、そんな顔だ。

「・・・ふふ、僕が無理やりメトロの服を着せなくても、
 銀座さんが着させそうですよね☆
 楽しみだなぁ・・・、ね?」
「ね、じゃねーよ!!有楽町!!俺はいかねーぞ!!」

東上は有楽町の足元で地団駄を踏んで抵抗を試みる。
けれど副都心にヒョイと抱き上げられて和光市から連れ去られようとしていた。

「副都心!!放せよ!!」
「副都心!!嫌がってるだろ!?」
「ダ・メです!さぁ、行きますよ〜。銀座さんが待ってます☆」
「やぁーだぁーーーー!!」
「と、東上!!こら!!副都心!!」
「先輩だって東上さんがメトロの服着るトコ、みたいでしょう?」
「・・!!そ、それは・・・」
「!!有楽町!!うらぎんのかよ!?」
「・・・!あ、その・・・俺・・・」
「それに西武さんの服を着たんだからコチラの服も着ていただかないと・・・」
「俺は好き好んで着てるわけじゃねーよ!!」
「はいはい、わかりました。いいから行きますよ」
「わかってねーじゃねーか!!ぎゃーーー!!」

東上は副都心の脇に抱えられながらジタバタ暴れる。
それをアワアワと追いかける有楽町・・・。
そして三人は副都心線に乗り込み、銀座の元へ向う旅に出るのであった・・・。



さて、どうらることやら・・・・・。



2011/6/11


ありがとうございました。 こっそり続いているチビのお話。 ちょっと時間がなくなり、今回は中途半端に終わってます・・。 そのうち、続きを更新している。。。はずです。多分。 戻る