**最後まではヤッでないよ?**
〜生意気猫の躾け方〜
ガンガンッと扉を叩く音が聞こえたので
越生が帰ってきたのかと思い扉を開けてみれば
そこにはヘラッとしら笑いを浮かべた軟弱な男が立っていた。
「・・・何か用か?」
わざと不機嫌に聞いても男は気づかないのか、わざと気づかない振りをしているのか、
とにかくヘラヘラと笑いながら、
「昼飯食わして〜」
と、毎度おなじみの言葉を口にした。
東上は「帰れ!」と扉を閉めようとしたがやはり武蔵野は一枚上手だった。
いや、先日に通帳を見られてしまっているので台所事情が厳しく、
当然、今の冷蔵庫が寂しいことも悟っていたのだろう。
武蔵野が土産にと差し出してきたのは1キロの米といくつかの惣菜だった。
軟弱な癖に米が持てたのか?と半ば感心しつつ、
嫌そうにだけれども東上は武蔵野を宿舎に招きいれたのだった。
背に腹は変えられない。
正直、給料日まであと2日・・・米も底を突きそうで困っていたのだ。
「・・・今から作るから30分くらいかかるぞ?」
「おーけーおーけー!惣菜も買ってきたらあと数品でいいんじゃね?」
「そうだな。味噌汁と・・・あとサラダでもつくるか」
「俺、東上の味噌汁好きなんだよね〜。味噌が手作りだから食堂のより美味いもん」
「・・・・そいつはどーも」
てめぇ、いつも食堂なんかで食ってやがるのか、と思ったが口には出さない。
相手は元・国鉄。
自分たちとは台所事情が違うのだ。
・・・正直、うらやましいと思うこともあるが態度には出さない。
プライドがそれを許さない。
最も武蔵野からしたらもっと誰かに頼って甘えればいいのに、と思うのだが。
そうしたらあのJRとか、あのメトロとか・・・、
みんな喜んで手を貸してくれるだろうに・・・。
でも東上はそういうことをしない。
もともと1匹狼のような路線だし、彼なりのプライドもあるのだろう。
まぁ、だからこそ付け入る隙も生まれるのだけれども。
「あ、東上」
「何だよ?」
「その米、無洗米だから」
「・・・???ムセンマイ・・・??」
「一昔前に流行ってたじゃん?俺、一回食べてみたかったんだよね〜。
せっかくだから昼のご飯はそれ炊いてくんね?」
「・・・・一昔前・・・ふーん???」
武蔵野のお願いに返事をすることなく東上はなにやら口元でブツクサ呟いている。
一人の時が多い故にひとり言が身についているのだろうか?
苦笑しながら武蔵野がもう一度、昼はその米にして!と頼むと、
我に返ったのか東上は少しだけビックリした顔をしたが、
すぐに無表情になり、今から炊くと1時間はかかるぞ?と念を押してきた。
「俺は別にかまわねーよ?あ、でも越生がもう帰ってくるとか??」
それならば諦めなければならない。
子供はお腹がすくと不機嫌になる生き物だ。
そして越生の機嫌を損ねると親代わりの東上の機嫌も損ねることになりかねない。
将を射るには何とやら・・・・、
極力、越生には嫌われないようにしなければならない・・・、
とヘラヘラ笑いの仮面の下で武蔵野はいつも考えていた。
「あー・・、それは平気。昼は八高のとこで食べさせてもらえるだろうから」
「八高??何々??越生ってば遊びにいってんの??」
玄関をあがり、廊下を歩き、いつの間にかたどり着いていた台所。
東上はお惣菜を皿に取り分けるように言うと、
自分は無洗米の袋を鋏で切りながら話を続けた。
「ああ、ハトの取り方を教わるとか何とか・・」
「ぶっ!!」
「・・・笑うなよ」
炊飯器から釜を取り出し、とり合えず2合炊こうと釜の中にカップ二杯の米を入れた。
「・・・・くく・・っ。越生も分かってんじゃねーの?」
「何をだよ!?」
「いや・・・自分とこの台所事情?
だからハトを捕まえて食べようとか考えてんじゃね??」
「!!???」
武蔵野の指摘は前科があるだけに否定出きるものではなかった。
あの時は八高が渡してくれたハトだろうが、
今度も自分でとってきたいのだろう。
気持ちはありがたいが、いくら台所事情が厳しくともハトを食べることはしたくない。
ゲラゲラ笑う武蔵野をジロッと睨み、小声で小さく言った。
「うっせーよ・・・ブセン・・・」
「・・・・?ん?何か言った??」
「!!!べ、別に!!」
どうやら武蔵野には聞こえなかったらしい。
そのことに東上はホッと息をついてシンクに向った。
「武線(ブセン)」と彼を呼んで、酷い目にあったことがある。
武蔵野銀行が「武銀(ブギン)」なら武蔵野線は「武線」で十分だ、と
彼をあざ笑ったのだが、東上は反撃されてしまうのだった。
武蔵野に口をふさがれ、まぁ、要するにキスをされ腰砕けになてしまったのだ。
挙句の果てに今度「ブセン」と呼んだらもっとすごいことして黙らせる、
といわれているので、東上らしくなく怯えてしまったのだ。
とにかく聞こえてなくて良かった。
東上はもう一度息を吐くと、米を洗うべく蛇口を捻った。
ところが・・・・・。
「・・・???東上」
「?何だよ?」
「何やってんだよ?」
「・・・何って・・・米を洗ってるんだろ?
米は洗ってから炊くものなんだぞ???そんなことも知らねーのかよ?」
東上の眉が斜めにつりあがる、がそれと同じように武蔵野の顔がニヤリと歪んだ。
そしてまたゲラゲラと盛大に笑い出したのだ。
当然だがどうして笑われているのか分からない東上はイラッとするのも無理からぬことだ。
「何笑ってんだよブセン!!」
「こ、米を洗ってる、って・・・!!くくくくくっ
とうじょー?それ、無洗米だぜ???」
「だからなんだってんだよ??
ムセンマイだろうがアキタコマチだろうが、ササニシキだろうが、
米は洗って炊く食べ物だろうが!」
「!!!!ブッ!!」
武蔵野はようやく気がついた、東上は無洗米を知らないのだ。
どうやら「あきたこまち」や「ささにしき」と同じように、
「ムセンマイ」というブランドだと思っているらしい。
「(なるほどねー。だからさっき曖昧な態度だったわけね)
東上、無洗米ってどう書くか知ってるか?」
「あ!?んなもん知らねーよ!カタカナで『ムセンマイ』か!?」
「・・・・っ!!!!」
カタカナで、に武蔵野は腹を抱えて笑い出す。
そして、ひとしきり笑い終えると無洗米の意味を東上に教えてやった。
米を洗わなくて良いから無洗米。
東上は答えを知るやいなや真っ赤に顔を染めて煙を出した。
その態度に武蔵野が「かーわいー!」と叫べば、
当然だが東上の怒りは沸点に到達し、武蔵野の踵に一発蹴りをお見舞いした。
「!!いって〜!!!」
「笑うな!笑うな!このブセンが!!!」
「と、東上!痛いって!!蹴るなってば!」
「うるさい!うるさい!このブーセーンーーー!!!!」
容赦なく踵、膝、太ももを蹴る。
あらかた足を蹴り終えると今度は拳で武蔵野の胸はお腹を殴り始める。
目に涙を浮かべ、怒鳴り散らしながら。
「仕方ないだろ!ウチはビンボーなんだ!
米は農家から安く仕入れているんだ!
ムセンマイなんて知らなかったんだ!
俺は悪くない!このっ!このっ!」
終いには武蔵野の襟をつかみガクガク揺らし始める始末。
軟弱、武蔵野はすでに白目を向いているが、
殺される前にと、自分の襟をつかむ東上の手首を掴み、
なくなりつつある意識下で東上の鳩尾めがけて膝を入れた。
軟弱でもコレくらいはできるのだ。
「・・・・!!!!」
不意打ちをつかれたからか、いつもは避けられるはずの攻撃をくらってしまい
東上は前のめりにうずくまる。
武蔵野も東上もゲホゲホと咳をしながら相手から手を放した。
そして先に落ち着きを取り戻した武蔵野は、東上の顎を掴むと上を向かせる。
鳩尾を蹴られたせいか、それとも咳き込んだせいか、東上の目はより潤んでいた。
「・・・お前さぁ・・・、その手の早さ本当にどうにかしろよなー?
こんなんじゃ俺、いくら身体があってももたねーよ?」
「お前が俺を馬鹿にしなきゃ手はださねーよ!このっブセン!」
「・・・・なるほどねー?つまりいつも悪いのは俺ってか?
んー・・・、まぁ、確かにだいたいはそうかもなぁ・・・。
でもそれって仕方ないじゃん?東上が可愛いからだし?」
「・・・・は?何いってんだよ、お前」
武蔵野に顎をつかまれたままだったので目線だけ逸らしてふて腐れてみせる。
最近の武蔵野は時々「可愛い」と言っては熱いまなざしで見てくることが多い。
「可愛い」と言われても自分は可愛くないし、東上としては反応に困ってしまうのだ。
だから目線を逸らすことでそれをアピールするのだが相手は汲み取ってくれない。
「俺が可愛く見えるなんて・・・お前はやっぱり変わってるよ」
「そ?んー・・、でもさぁ、前にも言ったけど価値観は人それぞれじゃん?
俺が可愛いと思えば東上は可愛いんだよ、ってことで、お仕置きタイムな?」
「・・・は?お仕置きってな・・・・、っ・・・!!」
言葉があの時と同じく武蔵野の唇に飲み込まれる。
軽いタッチで何度か唇を吸われネロッと唇を舐められた。
ビックリしてその衝動で口を開けてしまえば、
やはりあの時のように強引に熱い舌が我が物顔で滑り込んできた。
「・・・ふ・・・うー・・・・んっ」
顎を掴んだ手の甲に二人分の唾液が伝わってくる。
キスの最中だというのに目を開けて東上の表情を伺っていれば、
頬にはしだいに赤みが差してきて、
ダラリと下がっていた腕は武蔵野の肩に置かれ、
キスの最後の方には首に回っていた。
「・・・・は・・・、ん・・・」
濡れた音とともに唇が離れればキスの激しさを物語るように唾液の線がネットリとできる。
東上は腰が抜けたのか武蔵野の首に腕を回したまま動かないので、
武蔵野は目を細めてさらにその先へ進もうとした。
つなぎの上を脱がせTシャツの中に手を這わせる。
胸の飾りに一瞬触れ、すぐにその手を背中に移動させて、
ツツツツ・・・と背骨沿いに指を滑らせる。
「!!うひゃぁっ!!」
海老のように背中を撓らせつつさらに武蔵野にしがみつく。
より一層密着すれば東上の震えが直に伝わってきて、武蔵野は無意識に唾を飲み込んだ。
「かわいー、東上。また俺のキスに腰砕けってか?」
耳を甘噛みしながら息を吹きかけつつからかえば、
ビクビク身体を震えさせながら顔を真っ赤にさせて、
それでも残ったなけなしのプライドをフル動員させて叫んできた。
「だ、だれがこしくだけだ!それにさっきのおしおきってなんだよ!?」
強がって威嚇して見せても相手が怯えているのは一目両全だ。
その証拠に身体はさっきより震えているし、言葉も舌足らずになっている。
心の中で「かわいー」と思いながら、武蔵野はギュッと抱きしめて東上の下半身に手を伸ばした。
「!!うわっ!!」
男の象徴を服の上からとはいえ握られ、驚いた東上は身を翻す。
けれどキスで腰砕け状態であった為、背中から抱きしめられる格好となってしまった。
「逃げたらダメじゃん、東上」
「・・・っ、何で・・だよ!」
「何って・・・コレ、お仕置きなんだぜ?」
「だか、ら・・・その・・・お仕置きって・・何なんだよ!?」
「・・・あり?忘れてんの?」
武蔵野は耳元で可笑しそうに笑いながら東上のつなぎを鮮やかな手つきで脱がしていく。
腰砕けになってさえなってなければ武蔵野など簡単に押しのけられるが、
今は身体が震えてまったく力が入らないので出来なかった。
それが悔しくて東上は目に涙を溜めながらがむしゃらに身体を捩るが、
それが返って武蔵野の行動の手伝いになってしまったらしい。
つなぎはあっという間に脱がされ、下着も下ろされついでにTシャツも脱がされてしまう。
「!!!な、なんの羞恥プレイだよ!」
風呂に入るわけでもないのにどうしてスッポンポンにされなければならないのか。
悔しさのあまりますます目に涙はたまっていくが、
武蔵野の手が柔らかく中心部を掴み刺激し始めたので口から熱い吐息が漏れ始めた。
「な、な、なんて・・・トコ・・・触って・・んだ!き、きたねーだろーが!」
「ん?・・・別にそんなことおもわねーけど?」
「んっ・・・ん・・・・・う・・・」
「なぁ?・・・東上ってさぁ・・・」
東上の耳や首やを舐めながら、東上の性器を撫でながら、
武蔵野は意地の悪い質問をする。
「いっつもどうやってるわけ?」
「・・・・?・・・っ・・・にが・・?」
「んー?・・・何がって・・・自慰?」
火照った顔で後を振り向いた東上に首を傾げて武蔵野はニヤッ笑う。
当然だが東上は口をアングリと大きく開いたので、
すかさずその唇を掠め取った。
「んんんんっ・・・ふぁ・・・」
「・・・なぁ?どうやってんの?越生いるとなかなかできねーだろ?」
風呂場?トイレ?それとも屋外で隠れて?
キスの合間に武蔵野が聞いてくる。
東上は頭を左右に振って答えることを拒むが、
執拗にキスされ、下半身にも刺激を与えられているので意識がボーっとなり、
終いには小さな声で教えてしまう。
「・・・あんま・・しない・・・」
「へぇ?」
「・・・・するときは・・・風呂・・・が多い・・・お前は?」
「俺?俺はそうねぇ・・・・」
・・・そこで武蔵野は考えてしまった。
自慰をする時は大抵自分の部屋。
まぁ、そういうときに使うビデオとか雑誌とか、
そういうのを見ながら致すのだが、
けれど最近はそういうのにお世話にならず致している気がする。
思い出すのは専ら最初にキスをしたときの腰砕けの東上の表情。
あの顔を思い出すだけでオカズは他に何もいらなかった。
「・・・・俺も重症ってことかね?」
「・・・・・は?」
どこで自慰をしているのか?という質問に対し、
「俺は重症」とはどういった答えなのだろう?
ボーっとする思考で頭を回転させるが下半身を弄る武蔵野の手が止まらないので、
考えることを身体が拒否してしまう。
今はそれどころではない。
内にたまりつつある熱を放出しなければ頭が沸騰してしまう。
「ん・・・・んぅ・・・む、武蔵野・・・っ」
「ん?何?・・・・あ、限界?」
東上はコクコク頷く。
口からは熱い吐息ばかりが出、腰から下は無意識に震えてしまう。
武蔵野はそんな東上の腰を見つめ、さらにむき出しの尻に視線を送る。
ブルブル震える尻は顔と同じようにピンク色に息づき、可愛らしい。
その奥に息づく小さな入口に欲望を突き入れればさぞかし気持ちがいいに違いない。
まぁ、そんなことを許可なしにすればボッコボコにされるだろうが。
けれど欲望に素直に生きるのが武蔵野で・・・。
「・・・あー・・・挿れてぇなぁ・・・」
と思ったことを口に出してしまっていた。
東上はよく意味が分かってないのかキョトンとしていたが、
武蔵野は額に唇を寄せてため息をつく。
「・・・むさしの?」
「あー・・でも、今回のこれはお仕置きだかんなー。
まだ早いよなー?な?」
「????何が??」
武蔵野は相変らず意味が分からない。
そんな表情の東上に武蔵野は自分のズボンに手をかけた。
「だからさー、今のコレは東上が俺を『ブセン』って呼んだお仕置きなワケよ。
俺、前に言ったじゃん?今度『ブセン』って言ったらもっとすごいことするよって」
「・・・・・・あぁ・・・」
言っていた。
確かに言っていた。
もっとすごい、がどうもっとすごいのか見当もつかず極力言わないようにしていたのだから。
けれど結局言ってしまい・・・・・、
ああ、そうか、だからこんなことしてんのか・・・
と納得した東上は少しだけ残念な気持ちになった。
それが何故なのかはまだまだ分からないけれど・・・・・。
「でも俺って自分の気持ちにも正直なタイプなのよ」
「・・・・・そうかも、な」
「だろ?だから自分の気持ちにも正直に行動するけど、
まだ早いから今回はこうしようと思って!」
「は?・・・・わっ!わわ!!」
東上の両足をピッタリくっつけるように閉じさせると、
その間に武蔵野は乱れる東上を目の辺りにして興奮してしまった自身の性器をこすりつける。
足と足の間に納め、同時に東上の性器もあやしながらゆっくり腰を動かした。
「!!ひっ・・・お、おまっ・・な、なにして!!」
「コレ?ま、俗に言う素股ってやつ。擬似エッチだよ」
「・・・!ぎ、じエ・・・ッチ・・・って・・・何で・・・・!」
「だってまだ早いだろー?」
「は、早いって・・・?」
乱れる息と意識の中で懸命に質問する。
もう何がなんだか分からない。
どうして今、自分は武蔵野とこんなことをしているのだろうか、とか、
どうしてこんな目にあっているのだろうか、とか、
様々なことが頭を過ぎっては身体を巡っている快楽に消されていくのだった。
「だって東上、まだイエローカード2枚目だし?」
「・・・イ、イエロー???」
「『ブセン』って呼んだろ?今回と前回で1枚ずつで2枚。
次で3枚だから次は・・・・・」
「・・・・っ、つぎ・・・は・・?」
次は何だというのだろう?
最後に何か重大なことを言っていたようだが、
武蔵野が急に激しく腰を動かし、
同時に東上の性器も強く扱いてくるものだから
そこですべての考える力が奪われてしまった。
武蔵野の荒い息づかい。
性器が肌を擦る濡れた音。
時折背中や首にキスをされそのキスででる音。
東上の切ない喘ぎ声。
「あ・・・・あっ・・・・もっ・・・イ・・・」
「・・・っ・・・は・・・とうじょーの・・・足、サイコー・・・うっ」
それから絶頂までの時間はそうはかからなかった。
けれど武蔵野が頂点のまじかで言った言葉だけははっきり聞こえた。
こんどこそはっきり聞くことが出来たのだ。
『次は最後まで犯しちゃうよ?』
その言葉に別の意味で東上が身震いしたのは言うまでもない。
〜おまけ〜
「でよ!俺が忘れ物を思い出して宿舎に戻ったら二人してプロレスしてたんだよ!」
「プロレス?」
こっちの宿舎の食堂のほうがご飯が美味しいんだよ、
と八高に連れてこられた高崎駅の宿舎。
越生は頬にご飯粒を沢山引っ付けながら先ほど見た光景を
八高と偶然居合わせたJR高崎線に説明していた。
「なんか・・こぉ・・・武蔵野のバカが東上に圧し掛かってて・・・」
「へぇ・・?」
「・・・てかアイツに誰かに圧し掛かる体力なんてあんのかよ」
「武蔵野はなにもなければそれなりだからねぇ・・・不思議じゃないよ」
「ああ、そうか・・・もともと貨物線だしな、で?」
東上と違い越生は人見知りではないから直ぐに馬鹿でかい高崎にも物怖じをしなくなった。
それどころかそれが食いたい、と高崎のトレーからヨーグルトまで奪う始末だ。
高崎も面倒見はいい方なのですぐに子供路線と打ち解けたようだ。
「おう!でよ、なんでか東上がスッポンポンだったんだ。
別にプロレスやんのはいーけど裸はやめてほしーよな。
つーかなんで裸だったんだろ????意味わかんねー」
ご飯をかきこみながらの大胆な告白。
八高はサングラスをかけているのでよく分からなかったが目を見開いているようで、
高崎は「はっ!?」という声とともにダラダラと汗を流し始めた、
が、越生は気づかないのか話を続けていく。
「武蔵野のバカはいつも以上にしまりのない顔で東上を押さえつけて、
んで、東上のやつは目に涙を溜めて這い出そうとしてんだよ。
いつもの東上ならあのバカなんかに負けねーのに、
アイツ、なんか新技でも仕掛けたんかな?・・・東上が負けてるように見えた。」
やっぱ俺がいないと東上もダメだなー、
と何かを決心したように頷き、ご飯を食べることに集中する。
「・・・それって本当にプロレスだったのかよ・・・・?」
「あ?どういうこった?」
「どうもなにも・・・なぁ、八高?」
「んー・・・そうだねぇ・・・・」
「プロレス以外に何があるってんだよ?」
「・・・・いや・・・それは・・・・」
何故か泳いでしまう高崎の目。
子供が知らなくてもいい事実もあるのだろうからハッキリ言うことも出来ない。
それに八高はニコニコ笑っているようだが少しだけ空気が冷たい。
が、子供ゆえにそのことに気がつかない越生は
その後も見てきた一部始終を二人に話して聞かせた。
そして最後に・・・。
「あの二人があんまりプロレスに夢中だったから結局声をかけずに出てきたけどな!」
と、お腹を叩きながら満足げに言うのだった。
「そりゃ懸命な判断だったな」
と高崎は引きつった笑顔を浮かべながら
何故か横で不機嫌になっている八高に更なる苦笑いを浮かべるのだった。
だけれどもその不機嫌になっている理由が分からず宇都宮にそのことを報告すれば、
小ばかにしたような笑顔とともに「君もニブチンだねぇ」と言われるのだった。
そして某メトロに同じ話を越生がしたときにメトロが青くなったのは数日後の話し。
有難う御座いました。
前回の話の続きだったりします。
最後に高崎を出したのは宇都宮×高崎もすきなので、
いずれ書きたいなぁ・・・と思っているからです、ハイ。
2010/8/21
戻る
|