**短いよ**

〜生意気猫の飼いならし方〜





北朝霞の駅から下を見下ろすとあの路線はダイヤが少し乱れているのか息を切らせて走ってきた。
そういえば最近また、人身事故が多い気がするよな、と武蔵野は思った。
今回はただの接触事故だったようだがダイヤは乱れたようで、
直通している有楽町や副都心とは一度直通運転を取りやめていたほどだ。
自分のとこにも振り替え依頼がくるかな?と思っていたがこなかった。
事体はそれほど深刻ではなかったのだろう。
現にメトロとの直通運転も直ぐに再開していた。
けれど武蔵野は面白くない。


「・・・・ほんと、もっと誰かに頼ればいーのに」




例えば俺とか。


武蔵野は心の中でひとりそうごちた。
まぁ、東武東上線からすればすぐに遅延・運休する自分など頼ることを憚れるのだろうが。



でも、もし、頼ってくることがあるならば、
心を入れ替えて頑張ってみるのも悪くない。
現に、ここ最近は遅延も運休も出していないのだから。



あの野良猫が咽を鳴らして甘えてくるなら、
その相手が自分だけならばゴロゴロ鳴る咽を撫でて抱きしめてやる。


武蔵野はニンマリ笑って高架下の相手を見る。


つなぎの上を腰に巻いた東上は急いで走ってきたためか、
Tシャツが汗で背中に張り付いているようだ。
こんなに離れているのに首を伝う汗が見て分かる。


「あー・・・、あの咽に噛み付きてぇー」


汗が伝う咽に唇を寄せ、薄い肌を吸い上げ、軽く歯を立てたら、
そんなことをしたらあの生意気な猫はどんな声で鳴くのだろう?


まだちょっとした悪戯程度でしか手を出したことはない。
それでも東上はいい声で鳴いて、良い顔を見せてくれた。


次、『ブセン』と呼べば『最後まで犯っちゃうよ?』という脅しを覚えているのか、
最近東上はどこかぎこちない。


それではつまらない。
早く『ブセン』と呼んでくれなければあの猫を抱けないではないか。


ゴロゴロ鳴る咽に噛み付いて、
しっとり汗ばんだ太ももに手を這わす。

おでこや頬、耳朶、胸の飾りにキスをしてもなかなか唇にはキスをしない。
相手が強請ってくるのを待って、ようやく与えれば相手は貪りついてくるに違いない。
東上は独立色が強いが決して孤独を愛しているわけではない。
本当は誰かを求めているはずだ。
だから手を差し伸べてくる相手は拒まない。

東上がキスに夢中になっている間に少しだけ兆し始めている東上のモノに手を振れ可愛がる。
あまり自分ではしない、といっていたからあの時と同じく直ぐに愛液でグチャグチャになることだろう。
愛液の滑りを借りておもいっきり扱いてやれば、
東上は熱い吐息を漏らして抱きついてくるに違いない。

キスをやめて、身体をずらし、
東上の先走りで濡れ光っているモノを口で咥えてやったらどうなるのだろう?
どんな声をあげるのだろう?
きっと髪の毛を掴まれ引っ張られるのだろう。

「・・・ちょっと痛そうだなー・・・」

でもかまわない。
痛さと引き換えに最高に可愛いあの路線を見られるのだろうから。

唇で、舌で丹念に愛して、
後にある袋も手で可愛がって、
血管が浮き上がるくらいパンパンに膨れ上がったソレの先を舌でひと舐めし、
最後に唇でその先端を思い切り吸い上げたらどんな声と顔をして果てるのだろう?

その時のことを想像して武蔵野は背筋がゾクゾクするのが分かった。

「・・・・俺、宇都宮みたいなサドじゃないはずなんだけどなー」

あの猫の前ではそうなってしまう。
あの路線がそうさせる。


吐精でぐったりした東上の足の間に身体を差し込み、
何も知らない無垢な蕾を自分の欲望で散らしたらどんなに心地よいだろう。
初めては正常位がいい。
相手の顔を見下ろせるし、騎乗位より好きに征服できる。
自分の欲望で狭い蕾を犯し、中を征服する。
感じるポイントをわざと外して出し入れし、
じれた東上が自分で腰を振る様子は想像するだけで身体が熱くなる。
何度も焦らして、焦らして、やっとポイントをかすめたとき、
背中に回されていた東上の指の爪が武蔵野の背中を引っ掻くかもしれない。

「・・・痛いだろけど気持ち良いだろーなぁ・・・。
 アレレ??つーことは俺ってマゾ???」


そして最後の瞬間に、東上のなかに全ての欲望を吐き出したら・・・。



武蔵野は今だに下を見下ろしている。
すると自分を見る視線に気がついたのか、
上を見上げた東上と目が合った。
いつもならヘラヘラ笑顔で手を振る。
当然、東上もそう思っていたようで怒鳴り返す準備をしていたが、
武蔵野は無表情のままフイと顔を反らし、そのままその場を立ち去った。
そして東上からは見えない位置で振り返れば、
愕然とした顔で立っている東上が見れた。
あの様子では折角取り返した遅れが再び戻るかもしれないな、
と人事のように思う武蔵野。


「だって仕方ねーじゃん?お前が咽を鳴らして寄ってこないからだし?」


そんな場所で独りでいないで早く寄っておいで。
そしたらうんと咽を撫でてやるぜ?と、
誰も居ない北朝霞の休憩室でニヤッと笑う。



猫が擦り寄ってくるまであと少し。


武蔵野はその日がそう遠くないことを確信した。

東上のあの愕然とした顔を目に焼き付けながら・・・・。







有難う御座いました。 武蔵野がサドになってるーーー、と突っ込まないでください。 基本、攻めはサドが好きなんですよ〜。 2010/9/4 戻る