**R18くらい**








アレ〜?なんでこんなことになってんの?とか、
どうしてこんなに興奮してんの?とか、
なにもかもが頭のなかでグルグル回って、でも答えは出てこない。
出したくとも頭が回らないのだ。
それほどに気持ちがいい。
何故か分からないが気持ちがよすぎるのだ。

出ている部分は日に焼けているのに隠れている部分は自分より白いかもしれない。
プクンととがった胸の飾りや、蒸気した頬。
しっとりと吸い付く肌は唇を寄せるととても心地よい。
かくいう自身も身体全体にはしっとりと汗をかいていて、
背中に回された手はその汗で滑ってしまうのか時々ズルリとさがってしまう。
武蔵野はその落ちた手を自分の首に回させると、
下で喘いでいる薄く開いた唇に唇をよせた。


すると東上は苦しげながらもキチンと応えてくる。



『経験くらいある!』



あの言葉の通りに・・・・。








〜キスから始まる?〜




「秩父鉄道ねぇ・・・」

ボソリと呟いた目線の先には有楽町線が渋る東上線を宥めるために与えた人形が居る。
例の鉄道のマスコットキャラクターで、今はピンク色をした彼女も居る人気キャラクターらしい。
今居るのは青いのだけだからまた何かで駄々を捏ねた時は、
今度はピンク色の彼女のぬいぐるみでもあげるのかねぇ・・などと考えていたら、
不機嫌な顔の(不機嫌なのはわりかしいつもだが)この部屋の主がジトリと睨んでいた。

「何か文句あんのかよ・・・?」

低くドスの聞いた声。
武蔵野が青いマスコットを突いていると汚い手で触るなとでも言うように、
バシンッと東上はマスコットを弄っていた武蔵野の手をゴキブリを潰すかのように叩いた。

「・・・っってぇ〜〜!!」

やることがなく暇だったのでご飯でも食べさせてもらおうと尋ねてきた東上線宿舎。
叩かれた手をこれでもかというくらいに大げさにブンブン振り「死ぬ〜」と言えば、
普段からつり上がり気味の眉が更に一段つりあがった。

「お前って本当に手とか足が早いよなぁ・・・おお・・イテ」
「お前にだけだ!それにそんなに強く叩いてない、お前が痛がりなんだ!」
「・・・俺にだけぇ・・・??」

嘘は良くないぜ、東上・・・と心の中で思った武蔵野だが、けれど口には出さない。
口になど出したら今度は半殺しの目に合うかもしれない。
そんなのはゴメンだ。武蔵野はマゾじゃない。痛い目に進んで飛び込むほど無能でもないのだ。

「で?」
「ん〜??」

あいかわらずやる気のなさげな武蔵野の声に青筋を立てつつ、東上は聞いた。
武蔵野相手には主語、述語をキチンと言わなければ通じないからだ。
(まぁ、武蔵野でなくとも「で?」とだけでは分からないとは思うが)

「お前、何しに来たわけ??」
「あぁ・・・俺、暇だったんだよねぇ」
「ふーん・・・・?」

だからどうした?という目で目を眇めたら、少し慌てた様子の武蔵野が、

「だから一緒にメシでも食おうと思って!もちろん東上の手作り♪」

と早口で「きた理由」を喋った。

「ホラ!東上の手料理っておいしーじゃん??質素だけど!
 癖になるっていうか、すんごく食べたくなるんだよねーー」

だからおねがい!とヘラヘラしながらの催促に東上は半ば呆れたため息を吐きつつも、
仕方ねぇなー、と畳を指差した。
どうやらご飯をご馳走してくれる気になったらしく、
座って待っていろという合図らしい。
武蔵野はラッキーとばかりにそそくさと畳に胡坐をかいた。
頑固で怒りっぽい彼だが人に褒められたりするのは悪い気はしないらしく、
少しだけ上機嫌でテーブルを境に、武蔵野の前に腰を下ろした。

「今晩は天ぷらにしようとしてたんだ」
「ふーん・・・」
「でも越生が八高のトコに泊りに行ったから適当にすまそうとしてたんだよ。
 お前が食べるなら予定通り魚の天ぷらにするか!お前、大丈夫だよな?」
「おー、大丈夫大丈夫。何の魚の天ぷら??・・・てか越生が八高のトコにねぇ・・・?」
「魚はキスだ、安かったから大量に買いすぎた。
 越生が蛍を捕まえたいって言ったら八高が泊りにおいでっていったんだよ」

蛍ならココでも捕まえられるんじゃ・・・?と思ったが武蔵野はあえて口にしなかった。
それよりなにより東上に聞きたいことができたのだ。
出歯亀とでも言うのか・・・、とにかくフッっと思ってしまったのだ。

「キスっていやーさ」
「あ?なんだ??やっぱ苦手なのか??」
「いや・・そうじゃなくてさー、俺、思ったんだけどさー、とーじょーってさぁ・・」
「?」


武蔵野はニヤニヤと笑いながら身体を乗り出して東上の唇を指差した。

「キスしたことあんの??」
「・・・・・−−−−−−」


東上には武蔵野が言った事を咄嗟に理解することが出来なかった。
だから二人の間には少しばかりの静寂が訪れる。
外で啼いている油蝉と、扇風機回るの音だけが2〜3分、部屋を支配した。

「とーじょー?キスの経験あんの??」

どうなんよ?と相変らずのニヤニヤ顔でもう一度聞かれ、今度こそ東上は理解した。
耳まで真っ赤にしてその場で立ち上がる。

「む・・む・・武蔵野!お、お前!!」

(行儀悪く)机の上に膝を乗り上げ(越生には見せられない)武蔵野の胸倉を掴むと、

「破廉恥なこときくな!」

と怒鳴った。
破廉恥って死後だろ〜、と思いつつもニヤニヤ顔は更にニヤニヤしていく。
東上は真っ赤な顔で怒鳴りつつも腕がプルプル震えている。
どうやら怒っているらしい。
この場合、怒る理由は2つだ。
一つは本当に「破廉恥なことを言った」ことに対して怒っているということ、
もう一つは「経験がなくそのことを指摘された」ことに対する怒り。
武蔵野は勝手に後者のほうだと決め付けた。
今、ここには越生は居ないのだから多少のアダルトな発言は許されるはずだ。
けれど東上は起こっている。それすなわち経験がないからだ。
生きとし生けるもの、皆本当のことを言われるとキレる実態にあるのだから。

「そんなに怒っちゃって〜・・・、経験ないんだろ?」
「ちがう!」
「へぇ〜??」

あるんだ?誰と?と突っ込めば東上は言葉につまる。
青くなったり赤くなったりして、終いには目に涙まで溜めて睨んでくる。
そんな様子が面白くて武蔵野はこの遊びを止められなかった。

大体にして秩父鉄道をあんな目で見ているのだ。
真面目一直線の東上が「ちょっと浮気でも」という感じで他の誰かとナニをするとは思えない。
そうなると当然性的な経験など皆無だろう。
武蔵野はゲラゲラ笑って「かわいー!」と馬鹿にしたように叫べば、
東上はますます目に涙を浮かべて、それでも懸命に反論を始めたのだった。

「馬鹿にすんな!俺にだって・・せ・・せ・・・」
「せ?」
「接吻の経験くらい、ある!」
「ぶっ!」

「接吻」って今時言うか?と武蔵野はたまらず噴出した。
そんなようすに体中を怒りで震わせ、意地になったように東上は叫び続けた。

「あるったらある!」
「へぇ!誰とよ??あ、秩鉄??」

相変らずゲラゲラ笑いながらありえない人物の名前を口に出してやる。
彼は確かに東上に好意を抱いているだろう。
けれどそれは恋人に対する「愛」ではなく「弟」とかに対する「愛」で、
家族に対する「愛」だ。
例えキスの経験があっても秩鉄だけはないよなぁ〜、
などと思っていると東上はキョトンとした顔をしていた。

「(あれ??)とーじょー??」

流石にからかい過ぎたか?と少しだけ反省して、違う人物の名前を出そうとしたら、
キョトンとした顔の東上が先に口を開いた。

「・・・なんで秩父鉄道??」
「へ?・・いや・・だってお前・・・」

誰がどう見てもあの男に「この字」だろう?と言おうとすれば、
またまた東上が先に口を開いた。

「あの人は俺の兄というか・・そんな感じの憧れの人だ!
 もちろん好きだ!好きだけどそういう意味では好きじゃない!」

侮辱すんな!と再び胸倉を掴まれ揺さぶられたけれども、
武蔵野は別の意味で頭がグラグラしていた。

「(アレ〜??違うの??)と、と、とうじょ・・」
「あぁ!?」

相変らず揺さぶられながら、武蔵野は思ったことを口にした。

「んじゃ、お前、やっぱり本当にキスの経験・・あんの??」

もうすぐ窒息寸前、という青い顔で必死に聞いてくる武蔵野に、
東上は目を眇めながら真っ赤な顔で怒鳴った。

「あるっつってんだろ!信じらんねーなら証拠見せてやるよ!」
「・・・へ?」

証拠??
写真でもあるんですか?
と、遠のく意識のなか胸倉をつかむ手をどうにか外そうと
東上の手に自分の手を添えたとき、それは唐突に訪れた。

「・・・!」

柔らかい感触が自分の唇にあったのだ。
しかも目の前にはいつもの気の強そうな目は閉じられた黒い睫毛があった。
ありゃ、意外と睫毛長いんだ・・・、
などと思う間もなく僅かに開いていた口にヌルリとしたものが進入してきて、
武蔵野の舌を絡めとって自分のそれとこすり付けてきた。

「(・・・え・・・えぇぇぇ??)」

なんでそんなディープなキスを知ってるわけですか?!
と、叫びたいが、いかんせん唇は塞がれているので叫べない。
そうこうしているうちにキスに酔ってきてしまい気持ちよくなってくる。
武蔵野の胸倉を掴んでいた東上の手はいつの間にか首に回されていた。
数分後、ようやく離れた唇の間には透明な糸が出来ていたけれども、
なんだかこのままキスを止めてしまうのは名残惜しくて、
武蔵野は東上の頭に手を添え、今度は自分からキスを仕掛けた。
机の上に膝立ちだった東上を貨物線の底力とばかりに抱き寄せると、
そのまま畳の上に押し倒し、自分の下に組み引いて唇を貪り始めるのだった。










背中に回された手はその汗で滑ってしまうのか時々ズルリとさがってしまう。
武蔵野はその落ちた手を自分の首に回させると、
下で喘いでいる薄く開いた唇に唇をよせた。


すると東上は苦しげながらもキチンと応えてくる。
『経験くらいある!』
あの言葉の通りに・・・・。




上半身だけ裸の自分と下半身をさらしている東上。
東上は限界が近いのか武蔵野の腰に足をクロスさせて
「もぉ、むり」と何度も言いながらくわえ込んでいる武蔵野のモノをギュウギュウ搾り上げている。
だからキスといいどこでそんなエロテクを習ったんだ?と聞いてやりたかったが、
生憎と武蔵野も限界が直ぐそこまできていた。

アレ〜?なんでこんなことになってんの?とか、
どうしてこんなに興奮してんの?とか、
なにもかもが頭のなかでグルグル回って、でも答えは出てこない。
出したくとも頭が回らないのだ。
それほどに気持ちがいい。
何故か分からないが気持ちがよすぎるのだ。

わかっているのは東上にエロイことを教えた相手に自分がムカついている事、それだけだ。

キスして、エッチしてそれで分かるなんてヤダね〜、とか思いながらも
そういう「恋」や「愛」があってもいいかも・・・と彼らしくポジティブな考えにも至っている。

とりあえず今は目の前の気持ちいいことだけに集中しよう。
それから後のことはまた考えればいい・・・、
ニヤッと人の悪い笑みを浮かべ、
武蔵野は自分の下で喘ぐ東上にもう一度深いキスをしてその身体をかき抱いた。


有難う御座いました。 最初のエロがこんなんでいいのか?と思いつつ。。。 個人的には相手は有楽町のが好きなんですけどね。書きやすいのは武蔵野・・・? でも八高のが書きやすそうですよね。。。 2010/7/11 戻る