〜子の心、親知らず・・?〜
「おや、美味しそうだね、有楽町」
「銀座!」
「・・・どうしたの?それ」
「これ?東武百貨店で物産展をやっててさ。
せっかくだから買ってみたんだ」
「そうなんだ?でも物産展って沢山お弁当があるよね?
数あるなかからどうして”いかめし”を選んだの?」
「ああ・・・、うん。これを買う途中で越生に会ったんだ」
「・・・越生?ああ、東武さんのところの?」
「そう、東上と暮らしてる越生。
エレベーターを待ってたら偶然に越生が通りかかったんだ。
どこにいくんだ?って聞いたら、催事場って言うからさ、
俺も行くところだったし・・・・・」
『あれ?越生?』
『!!?・・・・なんだよ、有楽町かよ!ビックリさせんなよな』
『(あいかわらずだな)・・・ごめんごめん。
でも珍しいね、池袋にいるなんて』
『おう!今日の昼飯は俺が東上にご馳走するんだ』
『へぇ?・・・・あ、それで今日は物産展があるからきたわけか?』
『まーな!北海道物産がある時は毎回俺がとーじょーにおごるんだ!』
『ふぅん?・・・ああ、エレベーターきたぞ』
『・・・・お前も物産展に買いにきたのか』
『うん?・・・そうだけど?』
『へー・・・?何を買うんだ?』
『・・・うーん・・・?まだ決めてないけど・・・。
折角だからウニとか、イクラとか蟹がのっているヤツがいいかな』
『はっ!そーゆーの、2000円とか平気でするんだぜ?
やっぱりえーだんも国鉄も金持ちでいいよな!羨ましくはねーけど!』
『・・・ははは・・・、それで越生は?』
『あ?』
『越生はもう決めてるのか?買うやつ』
『おう!勿論だぜ!俺は毎回同じヤツだ!』
『へぇ!毎回買うほど嵌ってるんだ?なんて弁当?』
『いかめし!』
『へ?』
『だーかーらー!いかめし!』
『2回も言わなくても分かるよ』
『ならなんだよ?なんか文句でもあんのか!?』
『文句はないけど・・・、なんで毎回いかめしなんだ?
そりゃ、いかめしも美味しいけどたまには違うのも食べたくない?
・・・あ、ひょっとしてお小遣い事情が厳しいのか?
なら今回は俺がご馳走しようか?』
『!!(ギロッ)』
『(うっわ!!睨まれた!!)お、おごせ??』
『バカにすんなよな、この営団主義が!
いくら俺たちの懐が寂しくてもなぁ!
物産展で弁当を買うくらいの余裕はある!・・・・って、東上が言ってた!!』
『ははは、はは・・・
(東上がね・・・、そりゃ東上は越生よりはお金を持っているだろうけど)」』
『嘘じゃねーぞ!その証拠にホラ!』
『うん?・・・うわぁ・・・越生はお金持ちだなぁ』
『だろ!俺は嘘はいわねーかんな!』
『うん、そうだねー(・・・2000円しか入ってないけど)
それだけあれば、いかめし以外も買えるよな?』
『あったりまえだぜ!だけど俺はいかめしだ!』
『・・・・そこまで”いかめし”にこだわる理由はなんなわけだ?』
『・・・・気に何のかよ?』
『うん?まぁ・・・、気になるかな?』
『本当に本当に気になんのかよ?』
『うん。本当に本当に気になる』
『・・・・・本当だな?』
『本当』
『仕方ねーなー!なら特別に教えてやんよ!』
『ありがとう、越生』
『いかめしは2つあるからだ』
『????は?2つ???』
『1箱買うと2匹入ってんだろ?』
『!・・・ああ、そう言われれば』
『さっき財布を見せたとおり、俺だっていかめし以外も買えんだぞ!?』
『うん、そうだね』
『でもよ、それじゃダメなんだ。いかめし以外は同じになんねーんだ』
『同じって?』
『量だよ!量!』
『・・・・量?』
『やっぱ弁当買うなんて贅沢だからな!
物産展でも弁当は二人で1つって決めてんだよ!
・・・・で、最初の頃は俺もさっき有楽町が言ってた様な弁当を買ってた』
『そうなんだ?』
『おう!俺が買っていったのを東上が2つに分けてくれるんだけど・・・、
東上はわかってねーんだ・・・・、
俺のためにしてくれてるって分かるから言えねーし・・・』
『越生?』
『東上は半分こじゃなくて、ぜってー俺にいっぱいくれるんだ!』
『!』
『ウニもイクラも蟹も!とーじょーは飯ばっか食っててさ!
でもそういうのって違うだろ?!俺は半分がいいんだ!
半分に意味がある!だから俺は”いかめし”なんだ!』
『・・・・そっか、いかめしなら東上は少なくできないもんな?』
『そういうこった!別に懐じじょーが厳しいからじゃねー!勘違いすんなよな!』
『うん、しないよ。・・・越生はいい子だな』
『・・・っ!!な、なんだよ!つーか頭撫でんな!!』
「・・・って事があったんだよ」
「へー?それでその話にあてられて有楽町もいかめし?」
「うん。なんかいかめしが妙に愛しくなっちゃって」
「そう・・・、うん、でもなんか温かい話だね」
「そうだな。俺も副都心が小さいときにこと思い出しちゃったし」
「新線の頃を?」
「・・・副都心も小さいときに『半分こ』できちんと『半分』になってないと剥れてたんだ」
「そんなことがあったんだ?」
「けっこうあったよ。それでそのあとにご機嫌をとるのがまた大変で・・・。
なんだかその時のことを思い出して妙に懐かしくなった」
「・・・ふふっ」
「・・・なんだよ、銀座?急に笑ったりして気持ち悪いだろ?」
「うん。僕も君が小さいときのことを思い出しちゃって」
「へ?俺?」
「そう、君。丸ノ内と一緒にケーキを食べてたみたいで・・・、
丸ノ内が半分にしたんだよね・・・、
でも大きさがちぐはぐになっちゃって・・・・、
それで君は小さい方を選んで食べたんだって。
・・・・そのことに丸ノ内は随分落ち込んでいたよ、珍しく」
「・・・・なんで?」
「子供に遠慮されたのがイヤだったんじゃない?」
「・・・・なるほど、そういうもんかな?」
「そういうものだよ。
親の心子知らず、子の心親知らず。
お互いがお互いを思いあって結果、すれ違ってしまうんだろうね?
そうかんがえると越生の”いかめし”は正しい選択なのかも」
「なるほどなー」
「・・・・それにしても有楽町は昔から気遣い上手だったんだね!」
「へ?」
「丸ノ内に気を使って小さい方を選んだわけでしょ?」
「・・・あー・・・、ははっ・・覚えてないけどな」
「ふふっ!それが有楽町の長所なんだろうね!
・・・東上たちも今頃、いかめしを食べているのかな?」
「・・・どうだろうなー・・・」
「今度、その越生に会ってみたいな、僕」
「・・・・うん・・・、ん?」
「会いたいな、僕」
「・・・・う、ん・・・、あの?銀座??」
「会いたいんだ、僕」
「・・・・(いやな予感)」
「・・・宜しくね?有楽町」
「(やっぱりか!)い、いや、あの・・・その・・・」
「大丈夫、君ならできるよ!僕が保障する」
「そんな保障はいらないんですけど!」
「東上!美味いか??」
「うん。ありがとうね、越生」
「おう!どうってことないぜ!」
「そっか!・・・あ、これは俺が買ってきたやつだよ〜」
「東上も買ってきたのかよ!ムダ使いすんなよなっ」
「ムダじゃないよ。たまには俺たちもプチ贅沢してもいいだろ?」
「・・・・とーじょーがいいってんならいいけど・・・。
・・・・何を買ってきたんだ???」
「生チョコだって」
「チョコなのに生なんてあんのか??」
「あるみたいだよ。俺も目を疑っちゃった」
「・・・でもチョコって大体が生なんじゃねーのか??
普段見かけるチョコは乾燥チョコなんか??」
「どうなんだろうね?俺もわからないや・・・、
で、これがその生チョコ」
「・・・・うわっ!うまそう!」
「美味しそうだよね。これなら越生ときちんと半分こ出来るし」
「・・・・!」
「ん?越生??どうかしたのか?」
「・・・別に・・・なんでもねーよ」
「本当か?顔が赤いけど・・・・」
「っ!!なんでもねーよ!!それよりほら!早くいかめし食ってチョコも食うぞ!」
「????あ、うん・・・・」
「・・・ばか東上・・・わかってんならいつもそうやれよ」
「・・・え?」
「なんでもねー!俺は食うことに集中する!」
「??????」
2011/9/19
ありがとうございました。
物産展に行った時に思いついたお話。
戻る
|