**R18くらいかな?**
〜泣き場所を求めて〜
終電の時刻もとうに終わり何気なしに寄居のホームを歩いていたら、
ホームにポツンと座っている人影を見つけた。
ホームの端に座って足をブラブラさせている。
心なしかその背中は寂しそうだ。
つなぎを腰に巻きつけ足をブラブラさせているととても大人には見えない。
つなぎで背中が覆われていないと背中がいつもより小さく見えるせいかもしれない。
いつも怒鳴っているか、無表情かのどちらかの彼だが、
今夜は落ち込んでいるに違いない。
夕方近くにきた振り替え依頼。
遅延はラッシュを過ぎても取り返せなかったみたいだから各々への対応も大変だったことだろう。
更に「振り替え」の理由が人身事故なら大抵の路線はその日一日は落ち込むものだ。
彼はいつも怒っていて不機嫌なけれども、
人一倍感情に敏感なのも知っている。
伊達に長い付き合いではないからだ。
八高線は気づかれないようにゆっくりと東上線に近寄った。
そしてホームの端で足を垂らしながら座っている彼を後から包み込むように抱きしめた。
「泣いてるの?」
「・・・・・っ、は・・ちこう?」
後から抱きしめ、大きな手で東上の目元を覆った。
けれど手に濡れたものは感じない。
それでも八高はもう一度聞いた。
「・・・ねぇ?泣いてるの?」
「っ・・・、泣いてない!目、触ってんならわかんだろ!?」
「うん。見た目は泣いてないよねー。でも・・・」
『心は泣いてるよね』とは口には出せない。
そんな言葉を口にしようものならこのまま頭突きをくらいかねない。
「『でも』、なんだよ!?」
「んー?・・・なんだっけ?」
「はぁ?俺が知るかよ!つーか暑いからはなれろ!」
「えー?嫌だよ。くっつくの久しぶりなのに・・・」
「八・・・うひゃっ!」
東上の目を手で覆ったままTシャツからむき出しの首筋に少しだけ吸い付いた。
抱きしめていた身体は余程驚いたのか大きく揺れ、八高から逃れようと身体を捩った。
けれど猛片方の手が腰を強く抱いていたので逃げることは適わず・・・。
「は、放せよ!直ぐと止まるくせに何で力はあるんだよ!」
「僕が止まるのは大雨の時とかだけだよ?それ以外はあまり止まらないでしょ?」
「!!!!それは!・・・そーかも・・・だけど・・・いや、でも風の時とか・・」
「んー・・風はねぇ・・仕方ないんじゃないかな。
あと線路が水没したらどうにもならないからねー。でも今はそんなことより・・」
腰に回していた腕をそのまま東上の下半身へ移動させる。
そしてまだ何の兆しも見せていないモノをつなぎの上からそっと触った。
「!!八高!」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。問題なーい☆」
「問題大アリだ!ここ外だし!誰が来るかわかんねーだろ!?」
「シー・・。こんな時間じゃ誰も来ないよ。いいからだまって集中して?」
「だけど・・・!っ・・・・ん・・・」
腰で巻いていたつなぎの上部分の縛りを解き、その隙間から手を忍ばせる。
時下に触れば欲望はムクムクと動き出した。
「は・・はち・・・」
目は相変らず大きな手に塞がれているので見えない。
自分の中心を弄る八高の右腕に自分の手を置くと、
「・・・東上も自分で触ってみて」
と耳元で囁かれるので自分の左手をそっと中心へ伸ばした。
クスリという笑い声とともに東上の左手に八高の右手が覆いかぶさるように重なり、
同時に勢いよく上下に動かされ始める。
「ぅ!・・・あっ・・・あっ・・」
「気持いい・・・?」
「・・・ん・・・・んぅ・・・」
唇を噛んでいるのか東上の喘ぎはくぐもっている。
唇を噛んで声を殺すくらいならキスを強請ってくればいいのに、と思うが、
素直になれない東上がそんなおねだりを出来るはずもない。
「東上」
「・・・・っ・・・ふぁ・・・?」
「キスしたくない?」
「・・ふ・・・く・・・」
相変らず手を動かしながら耳元で囁くように問う。
けれど同情からの返事はない。
仕方ないので首筋に舌を這わせ、
「僕は口寂しいからキスしたいなー。でも東上がしたくないならココで我慢するよ」
と、わざと首筋に強く唇を寄せた。
「!!っ・・・っ・・・」
東上が自身を握る力を強めたのがわかった。
八高の握る力を強め、殊更早く手を動かす。
「あっ・・・んん、−−−っ!」
身体がビクビク震え、ついには誰かに縋りつかないと耐えられなくなったのだろう。
東上は八高の胸に背中を押し付け、手で目隠しされたまま上を向いた。
薄く開いた口からは赤い舌がチロチロと頭を除かせ、吸い付いてくれと訴えているようだ。
「キスしていい?」
「・・・・・ん、・・・うん・・・」
「東上・・・」
八高は東上の目を覆っていた手を外し、かけていた眼鏡を外した。
そして彼の顎に手をかけ、キスしやすいように上を向かせる。
手が外されたことで目を開けた東上だがその目には涙が浮かんでいた。
快楽で浮かんだ涙なのか、
それともさっきまで流せなかった涙なのか、
おそらく両方なのだろうと八高は少しだけ痛ましげに東上を見下ろすと、
涙の浮かんだ眦にそっと唇を寄せて涙を吸い上げ、
そうしてから優しく唇を塞いだ。
「んん・・・んっ・・・」
最初は唇を舐めたり吸い上げたりするだけだったが、
東上の方から舌を絡めてきたのでキスを深いものに変えた。
すると顎に添えていたてに生暖かい水のようなものを感じ始めた。
薄目を開けてみれば東上の閉じられた目から次々と涙が溢れていて、
手に感じたのは彼の流した涙だったらしい。
東上の腕はいつの間にか彼の下半身から離れ、
自分の顎にかけられた八高の腕を掴んでいる。
八高が一瞬だけキスをやめ離した口は、
小さな声で「いかせて」と言った東上にもう一度塞がれる。
今一度深いキスをしながら東上の下半身に添えた手を、
彼の弱い場所ばかりを狙って扱いていく。
弱い場所を責められて息苦しそうな彼を可哀想に簡易口を離そうとするが、
そうすると東上の方がより深くキスをしてくるので出来なかった。
そしてついにその時が訪れる。
それまで八高の唇を離さなかったのに急に唇を話し、
東上は己の口を自分の手で押さえながら全てを放出した。
まだ息が荒い東上を今度は優しく抱きしめる。
そして彼の出したもので汚れていない手で頭をなでながら、
「・・・いっぱい泣けたねー」
髪の毛に優しくキスをする。
東上は目元を赤らめ、少しだけ不機嫌そうに小さく頷く。
そんな彼の目はまだ涙でウルウルと揺れていた。
「やっぱ辛い時は泣かないとダメだよね!
溜めすぎるとそのうち立てなくなっちゃうし」
ね!と同意を求めるように東上の顔を覗き込むと、
彼は身体をモジモジさせ(けれども不機嫌そうに)、
八高から少しだけ目線を逸らした上で小さく呟いた。
「・・・今日は・・・もう・・・・・かよ?」
「ん?なぁに??」
けれど東上の声が小さすぎたのか、それともわざととぼけて見せたのか、
どちらかは分からないが、東上は今度は八高の目を見ながら叫んだ。
「だから!今日はもうこれ以上泣かせてくれねーのかよ!?」
真っ赤な顔でクルリと身体の向きを変え、
八高と向かい合うように彼の上に座りなおすと、
「俺はもっと泣きてーの!」
と、八高の下半身に手を伸ばしてきた。
「お前だって俺にはもっと泣いて欲しいんだろ!?
我慢はよくないって今さっき言ってたもんな!?」
「・・・・もっと泣きたいんだ?」
首を傾げて彼の顔を覗き込むように聞き返すと、
東上は顔どころか耳まで真っ赤にしながら頷いた。
「今日の俺は傷心なんだよ!それにお前のココだって泣かせたいって言ってんだろ!?」
「・・・ああ・・・まーね・・・参っちゃうよねー。身体って正直だよね。
でも東上でもそういうこと言うんだねー。新たな発見?」
「!!?う、うるさいな!いいから移動すんぞ!これ以上は外では嫌だ」
「そうだね」
東上は立ち上がると八高へ向って手を伸ばす。
伸ばされた手を取り握り返すと八高も立ち上がり、
電気の消えたホームを二人で並んで歩き出した。
「あ、越生に連絡しなきゃ」
「今夜は帰りませんって?」
「ばーかっ!そんなわけ・・・」
「でも僕は東上をいっぱい泣かせるって決めたから今夜は帰れないと思うけど?」
手を繋ぎながらする会話。
彼の顔にはもう暗い影はなかった。
泣いて多少はすっきりしたのだろうかと思いながら八高は握っていた手の力を強めた。
「・・・お前、どんだけやるつもりだよ?」
「んー?東上が『満足☆』っていうまでかな?」
「!!!バッッカ!!誰が言うか!」
「えー?じゃぁ、やっぱ今日は帰れないよね?」
「!!!?????」
いつも怒鳴っているか、無表情かのどちらかの彼。
だけど八高は知っている。
彼だって本当は泣きたいし、泣ける場所を探している。
でも素直じゃないから簡単には泣けない。
だからこうしていつも泣ける場所を提供しているのだ。
いつか彼がそのことに気がついて、
自分が彼を抱く本当の理由に気がついてくれればいいけれど。
その時は今まで言えてない分の沢山の「好き」を言おうと、
心に硬く決め八高は真っ赤な顔で口をパクパクさせている東上に微笑むを向けると、
その唇にそっと唇を寄せたのだった。
有難う御座いました。
素直に泣けない東上を強硬手段で泣かせている八高のお話・・のつもりです。
二人は身体の関係はあるけど、別に恋人ではない、そんな関係の話です。
2010/7/19
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