〜キスが出来ない理由〜
「・・・本当・・なんでなんだろ?」
「なにが?」
誰もいないと思って悩み事(独り言)を声に出してしまっていたらしい。
偶然、食堂に飲み物でも取りに来たのか、そこには銀座が立っていた。
「どうかした?有楽町」
「・・・・あー・・・、いや・・・別に?」
有楽町を含め他のメトロたちの事を我が子とでも思っているのか、
銀座は誰かが悩んだりしているとどこからともなく現れる。
匂いをかぎつける、とでもいうのか・・・・、
けれど悩みを話して解決する確立は五分五分で、
悩みを話せば他のメトロ全員に伝わっていて赤っ恥青っ恥なコトもしばしばで、
有楽町は銀座に相談することはなるたけ避けていた。
「別にって顔はしてないよ?」
「・・・・う、うん・・・。あ、いやでも・・・大丈夫・・みたいな?」
「・・・ふぅん・・・。そ?本当に?」
「あ・・いや・・・・」
有楽町は歯切れ悪く、遠まわしに「相談」を遠慮したのだが、
有無を言わさない「にっこり」攻撃に有楽町はついに観念した。
静まり返った食堂で、
有楽町は正面に座ってニコニコ笑っている銀座をチラ見して軽くため息をつく。
本当に相談していいんだろうか?
相談したら最後、今夜にでも自分は「ヘタレ」のレッテルを貼られ、
メトロの社内を歩けなくなるかもしれない、恥ずかしくて。
けれど銀座がニコニコ笑いながら「早く」を即すので覚悟を決めて口を開いた。
「・・・笑うよ、絶対」
「笑える話なんだ?」
「うーん・・・??俺にとっては泣きたい話」
「悲しいこと?」
「・・・・どうだろう?贅沢な悩み、なのかも」
「・・・贅沢?・・・まぁ、とにかく話してみて?」
「う、うん・・・・その・・・俺と・・東上・・なんだけど・・・」
「うん?」
「・・・付き合い始めた・・んだけど・・・」
「・・・うん、知ってるよ」
「!!え?!」
誰にも話してないのにいつの間に?と有楽町は目を瞬かせて銀座を見れば、
彼は、なんとなく有楽町の雰囲気が変わったからわかったのだと言った。
全く銀座は油断ならない、と苦笑を浮かべつつ、
それなら話が早い、と有楽町は話をし始める。
それは昨日のことだった。
いや、昨日に限らず「最初」から「そう」だったのだが・・、
昨日、フッと「これって変じゃないか?」と感じた。
よくよく考えれば、いやよく考えなくとも「それ」はとてもおかしなことだと気がついたのだ。
付き合い初めて数ヶ月。
恥ずかしながら身体の関係は数回(以上)あった。
際どい部分も舐めたりしてくれるし、
いつも無表情か怒っている彼がたわいのない会話で笑ってくれるようにもなった。
でも、一つだけまだしてないことがあるのだ。
それは身体の関係が始まるより前に普通は済ませているはずなのに、だ。
有楽町はそこら辺をかいつまんで銀座に説明をした。
「・・・・どう思う?」
「どう思う?って聞かれても結局『何』を『まだ』してないのか分からないよ?」
「・・・あの・・・だから・・その・・・」
「うん?」
何が恥ずかしいのか有楽町は彼にしては珍しく頬を赤く染め、
身体をモジモジさせながら何事かを小さく口にした。
銀座はそんな珍しい様子を綺麗な微笑を浮かべて見守った。
そう、気分はまるで「お母さん」か「お父さん」だ。
「あの・・・」
「ふふ・・・・、いつもはしっかり者のゴボウなのに珍しく蒟蒻だね」
「え・・?こ、蒟蒻??」
「今の有楽町は蒟蒻みたいにフニャフニャしてるよ、ってこと」
「・・・・う・・・」
「でも、まぁ・・・そんなに言い難いってことはエッチに関することかな?」
「!!!!?」
有楽町がいえなかった言葉をサラリと言ってのける銀座に有楽町は思わず立ち上がった。
口を何度もパクパクさせ、あー・・とか、うー・・とか言っている。
銀座はそんな有楽町を無視してこれまたお気楽そうに聞いてきた。
「まださせてくれないから悩んでるの?」
「ち、ちがーう!!そ、ソレはもうしたって言っただろ!さっき!!」
「え?・・・そうだっけ??」
「そうなの!」
「・・・じゃあ、結局『何』が『まだ』なの??」
エッチじゃないのか・・・、
銀座は目をパチクリさせて相変らず真っ赤な顔の有楽町に、
とりあえず座りなよ、と着席を即した。
深呼吸を一度大きくし、気分を直してとり合えず椅子に座った有楽町は、
小さな声で「エッチじゃなくて」と前置きをした上で話を続ける。
「キス・・がまだなんだ」
「え?キス?」
エッチはしてるんだよね?と銀座は思わず聞き返してしまった。
それに対し有楽町は小さく頷き返す。
その事実にさしもの銀座もうーん・・と唸ってしまう。
普通、大抵は身体を繋げる前に唇が重なっているものだ。
多くの場合がそういう順番のはずだ。
「・・・俺ってただのそういうお友達なのかな?」
「そういうって・・・セックスフレンドってこと?」
「・・・・!!?」
相変らず銀座は際どい言葉をサラッと言ってのける。
有楽町は今日、何度目か分からないが顔を真っ赤にして小さく頷いた。
そしてはぁ・・・と大きくため息をついて机に突っ伏してしまう。
そんな有楽町の金色の髪を銀座は優しく撫でてやった。
「・・・銀座?」
「キス、したいんだ?」
「・・・・うん」
「東上のことすごく好きなんだ?」
「・・・・ああ」
「じゃあ、言ってみたら?『俺、東上が好きだからキスがしたい』って」
「・・・・・え?」
「もう一度告白からやり直し。
ひょっとしたら伝わってないからキスさせてもらえないのかもよ?」
髪の毛を撫でながら銀座は微笑んだ。
有楽町は目を閉じながら甘んじてその行為を受けていた。
銀座の手の平はザラザラしている。
でも不思議と落ち着く。
そういえば東上のても荒れてたなぁ・・・
でも落ち着くんだよね、握ってると、と思い出していた。
「そういえば・・・、ねぇ、どうして付き合うことになったか聞いてないんだけど、
その時、有楽町はちゃんと好きだって言った?」
「!・・・・えー・・っと・・・?あれ???」
「言ってないの??」
「・・・・・・、いや・・?言った・・・ん?あれ??」
言ったかな?
あれ、言ってないかな??
と、有楽町は頭をフル回転させる。
記憶を遡り、付き合うことになったあの日まで記憶を巻き戻した。
先日、車両故障を起こし東武や西武、JRに振り替え輸送を頼み、
その時の書類を1件、1件届けに回っていた、そんな日だった。
有楽町は最後に東武東上線の宿舎に寄ったのだが、
その玄関先では滅多にお目にかかれない微笑を浮かべた東上が立っていた。
そしてもう帰るところなのか、東上と一緒に立っている男くさい男が一人。
・・・・秩父鉄道だった。
「ん、じゃな、東上!」
「うん!わざわざきてもらってゴメンね?」
「いんや〜、久々の合同企画の打ち合わせだかんな。
こっちに用もあったしいいってことよ」
「うん、それでもありがとう。僕、今度の企画楽しみにしてるね!」
東上は大きく手を振って帰っていく秩父鉄道を見送っていた。
秩父鉄度はそんな東上に手をあげ、一度だけ左右に振ると足早に去っていく。
「用がある」と言っていたのでそちらに向ったのだろう。
秩父鉄道が完全に見えなくなると東上は顔から笑みを消し、いつもの無表情に戻った。
けれどいつもみている有楽町は気がついた。
無表情の奥に隠れた寂しげな影を。
だからわざと大きな声で声をかけたのだった。
「東上!」
「!」
東上はやはり驚いたのかビックリした顔で少しだけ遠くにいた有楽町を見てきた。
「今の秩鉄?なにかあったのか?」
「あー・・・、まぁ・・・、今度の合同企画の件で・・・」
「ふぅん・・・ハイキングかなんか?」
「・・・そんなとこ・・・」
ゆっくりと東上に近づきながら交わす会話。
入口近くまで行って書類を渡すと、
小さな声で「サンキュー」と言って受け取った東上。
書類を受け取ったらいつもなら直ぐに会話を終わらせ宿舎の中に入ってしまうのに、
東上は珍しく会話を続けてくれていた。
「なんか随分急いでたみたいだけどなんかあったの?」
「・・・・この後、用があるんだってさ」
「ふぅん・・・・」
「・・・・西武のトコに時刻表を届けなきゃ行けないんとか言ってた」
「・・・・・そうなんだ」
東上の口から彼の大嫌いな「西武」の名前が出たというのに、
東上はどこか遠くを見たままマネキンのような表情を浮かべている。
だから聡い有楽町は分かってしまう。
東上がそんな顔をするわけを。
それは大好きな鉄道が大嫌いな鉄道の元へ、
仕方がないとはいえ行ってしまうのが悲しいのだろう。
ああ、自分だったらもっと笑顔にさせてあげるのに、と、
思ったが有楽町はそれが出来ない。
東上が求めているのは自分ではないと知っているからだ。
「お前、このあと用事あるのか?」
「いや、特には・・・」
「じゃ、あがってくか?秩鉄が御菓子持ってきてくれたんだよ。
越生と二人じゃ食べきれないから少し食べてけよ」
その日の東上は本当にいつもと違っていた。
「上がっていけ」なんて滅多には言わないのに・・・。
けれど折角のおさそいなので、有楽町は小さく頷いてお邪魔することにした。
いちもと違う東上。
寂しそうな東上。
東上を好きな有楽町。
慰めてあげたい有楽町。
とにかくその日はお互いに何かが違っていた。
宿舎に入ってお菓子を食べてそれでも寂しそうな東上の肩になんとなく手を置いた。
大きく揺れる東上の瞳。
思わず抱きしめてしまった有楽町。
・・・その時から関係は始まったのだった。
「有楽町?」
真っ青な顔で急に立ち上がった有楽町を首を傾げて見上げる銀座。
「銀座・・・・」
「ん?」
「俺、いってなかった・・・みたいだ」
「え?」
チラッと銀座に視線を送り、有楽町はため息をつく。
自分は東上に気持ちを伝えていない。
それなのにどうして付き合っている気でいたのか。
これでは東上がキスさせてくれないのも当たり前かもしれない。
「俺、東上に好きって言ってない」
「・・・え?そうなの??」
「ああ、俺がそこを吹っ飛ばしてたから・・、
その・・キス・・できなかったのかな?
ど、どうしよう???今からでも平気かな??」
真面目で優しい有楽町。
どうして肝心な部分をすっ飛ばしてしまったのかと嘆く彼に、
銀座は立ち上がってニッコリと微笑を向けた。
「大丈夫。あの子はキミと一緒で真面目ないい子だもの。
遊びでエッチしたりとかしないよ。
ただキミと同じように悩んでいるのかもね。
『有楽町は俺のこと好きなのかな?』って」
「!!・・・そう、かな・・・」
「きっとそうだよ。さ、東上のところに言って告白しておいで。
今日はもう仕事ないでしょ?」
「ああ!」
「外泊届けは出しておいてあげるから」
「・・・・!ああ・・ありがとう!」
銀座の手を握りもう一度お礼をいってから足早に食堂を去っていく有楽町を、
ニコニコと笑顔で見送る銀座。
その顔はやはり「お母さん」か「お父さん」そのもので・・・。
「・・・親離れって、少し寂しいね」
という声が誰もいない食堂に小さく響いていた。
有楽町はとにかく走った。
この時間ならきっとまだ和光市にいるはずだ。
有楽町は走った。
走って走って、そして和光市の駅でオレンジ色の小さな背中を見つけた。
「東上!」
名前を大声で叫ぶと何事かとビックリした顔の東上が振り返る。
「・・・ゆう・・らくちょう?」
立ち止まったままの東上の腕を力任せに引っ張り腕の中に抱きしめた。
「・・・・!有楽町!・・な、なんだよ?どうした??」
東上は抱きしめられたことに困惑しているのかモジモジ動いていたが、
息を乱した有楽町が抱きしめた力をさらに強めながら、
誰もいない静まり返ったホームに響き渡る声で言ったのだった。
「・・・好きだ!」
「へ?」
抱きしめられたまま急に言われた告白に思わず変な声の東上。
有楽町は抱きしめていた腕を開放し、
東上の肩に手を置いてもう一度言った。
「好きなんだ、東上が」
「・・・・・・は?」
けれど東上は事態が飲み込めていないのか返事が相変らず変なものなので、
有楽町は根気強く告白し続けた。
「好きだ、好きだ、好きだ!東上が好きなんだよ、俺」
「・・・う、うん・・・あんがと・・・」
しかし一応例は返ってきたものの、
まだよく事体が飲み込めないのかポカンとしている。
「・・・東上は?」
「・・・・へ?」
「俺のこと好き・・・?」
「・・・・・・・」
「それとも嫌い?」
「・・・・・・・」
「・・・なぁ?なんで俺と・・その・・するの?」
「・・・・!!」
「なんで、キスはダメなの??東上・・・?」
真っ直ぐに、真面目な顔で有楽町は今までの疑問をぶつけた。
告白はした、ならこの疑問を聞いてもいいはずだ。
東上は有楽町に肩をつかまれたまま、真っ赤になりながら目線を逸らした。
でも有楽町は東上の顎に手を添え、自分の顔を近づけてもう一度聞く。
「・・・キス、どうしてだめなんだ?」
息のかかる距離。
顎を掴まれているせいで逸らせない目。
東上はギュッと目を瞑り、モゴモゴと答えはじめた。
「お前、・・・いつもニコニコしてるから・・・」
「・・・・は?」
「秩父鉄道と一緒だ。いつもニコニコ・・・。でも秩鉄は結局俺から・・・。
だから有楽町もそうなのかなって・・・。
ただ俺が秩鉄のことで落ち込んでたから慰めてくれたのかなって・・・。
ならキスはしちゃだめかなって思ったんだよ!だって・・キスって・・・」
「キスって?」
「・・・・一番好きな人とするものだろ?
昔の遊女とか、身体は売っても唇は売らなかったって・・・。
有楽町も男だし身体と心は別かなって思ってたんだ」
「俺は東上が好きだよ」
「・・・うん・・・さっき聞いた・・・いっぱい」
東上の目にはみるみる涙が溜まっていっていた。
うるうる潤んで、けれども有楽町を真っ直ぐ映している。
「・・・俺も・・本当は・・いつもキスしたいなって思ってた。
俺・・・いつの間にか・・・好き、になってたみたいなんだ」
「誰を?」
「・・・誰って・・・有楽町だよ!
俺が寂しいときいつも傍にいてくれたお前が好きなんだ!」
涙を浮かべた目でいつものように怒鳴りながらの東上らしい告白。
「秩鉄より?」
「・・・・!あの人は・・・もう思い出っていうか。
ああ、多分、アレだ。俺、きっとブラコンなんだよ」
「秩鉄は東上のお兄ちゃん?」
「そう、そんな感じ・・・。有楽町に対する好きとは違う好き・・かな?」
「・・・キスしてもいい?」
「・・・・・・いいよ」
涙を浮かべたまま苦笑した東上がスッと目を閉じた。
東上の両方の瞼にそっとキスをして、おでこにキスをして、頬にキスをして、
そしてそっと唇にキスをした。
口を少し離して目を開ければ東上も薄っすら目を開けたけれど、
すぐにまた閉じられたので、有楽町はもう一度唇にキスをした。
肩に置いていた手を腰に回し、顎においていた手は頬に移動させた。
手に生暖かい液体を感じたけれどそれには気づかない振りをして、
有楽町と東上は今までの分を取り返すように長い間キスをし続けていた。
後日談<メトロ>
「せんぱーーーい☆」
「・・・・副都心?」
メトロの会議室前でKYな後輩に呼ばれ渋々振り返ると、
副都心は読めない笑顔を浮かべながら指摘してきた。
「先輩☆昨夜はいっぱい乳繰り合ったんですね!?」
「・・・・は?」
一体全体この後輩は何を言っているのか?
有楽町は訝しげに副都心を見上げた。
「だって、唇が腫れてますよ〜?」
「・・・え?」
「先輩ってばス・ケ・ベ☆」
「何でだ!?」
「だって東上さんの●●●を夢中でしゃぶっちゃたからでしょう??」
「お前ねぇ!!」
なんちゅーことをいうんだ、お前は!と思いっきり副都心の頭を殴るが、
当の本人はたいして痛くないのかケラケラ笑いながら「スケベ」と繰り返している。
「俺の唇が腫れてるのはそんな破廉恥な理由じゃない!
てか腫れてないだろーが!」
「そーですか?でもいつもより赤いですよ??」
「・・・・!!うっ」
「おやおや??真っ赤ですよ??」
副都心は素直な先輩の反応に嫌な笑みを浮かべながらからかい続ける。
そしてこれまた会議室に入ろうとやってきた銀座と丸の内を見つけ、
「聞いてくださーい!」と叫ぶものだから有楽町は慌てて止めに入る。
「こら!!副都心!」
「いーじゃないですか!先輩に恋人が出来たのは事実。
別に皆、先輩が●●●をしゃぶるのが大好きなスケベ星人でも
温かく見守ってくれますよ?」
「人を勝手に変態にするな!!」
そうこう言い争っているうちに怪訝な顔の丸の内と、
ニコニコ顔の銀座が二人の前に現れた。
そして有楽町の顔を見て何故か嬉しそうに微笑んだ銀座は、
「どうしたの?」
と柔らかい笑みを浮かべて話しかけてきた。
「銀座さん!先輩ってば夕べはお楽しみだったみたいですよ☆」
「副都心!」
「・・・何いってんだ?お前。有楽町がお楽しみって?」
「見てくださいよ、丸の内サン!先輩の唇!」
「ん?・・・あー・・なんだ?有楽町、少し腫れてるぞ??病気か??」
「違いますよ!先輩は夕べ東上サンの●●・・・もががががが」
これ以上言いふらされてはたまらないので、
有楽町は自分の手で副都心の口を塞いで彼の口を塞ぐことにした。
丸の内は首を傾げながらその様子を見ていたが、
銀座は爽やかな笑顔を浮かべて副都心の口を塞いでいる有楽町の手を外すのだった。
「ぎ、銀座??」
せっかく黙らせたのに・・・と、不機嫌そうな顔の有楽町に、
「良かったね。上手くいったんだ?」
と、満面の笑みで銀座は言ってきたのでもう黙るしかない。
「アレ??銀座サンは知ってるんですか?先輩の唇の理由」
「知ってるよ。でも僕と有楽町の秘密だから教えられない」
と、ポケットからゴソゴソとなにか長方形の物を取り出し有楽町に手渡すのだった。
「???銀座??」
「お祝いだよ」
「え?・・・って・・・えぇぇぇぇ!?」
お祝い、と渡されたモノを見て有楽町は言葉もなかった。
「お!なんだ有楽町、お前、彼女でも出来たのか?」
「彼女じゃないよ、丸の内。彼氏だよ」
「へぇ?ならソレは必要ないんじゃん??」
「マナーは大事だからね。有楽町はしっかり者だから大丈夫だろうけど、一応。
最近はすごいね!バナナの香りとか、メントールとか、暗い場所で光ったりとか。
あ、それはね、ゼリー付きで優しいらしいよ」
「アハ☆よかったですね、先輩☆それで12回はできますよ」
「・・・・(お願いだから放っておいてくれ!)」
後日談<東上宿舎>
「あれ??東上、唇が赤いぞ??」
「え?」
東上が朝食の支度をしていると目を擦りながら起きてきた越生に、
「おはよう」より先にそんなことを言われた。
「病気か??」
「え?・・・そんなことは・・・」
「・・・本当か〜??って、あーーーー!!」
「!!え?何??」
越生は眠気眼をガバッと開けると、
東上のTシャツを掴んで青い顔をした。
「越生??」
「赤い!」
「・・・・へ?」
東上が自分の胸元を見れば確かに赤いものがチラホラあった。
最初は何か分からなかったが直ぐにそれが何か思い当たる。
「(・・・ゆ、有楽町め!!痕つけやがったな!!)」
どう言い訳しようか、考えていると青い顔の越生が東上に向って叫んだ。
「布団干すぞ!」
「え?」
「やっぱ布団干しはサボっちゃだめだよな!東上がダニに喰われてるし!」
「へ?ダニ???」
「その赤いの、ダニだろ??あ、唇もダニに喰われて赤いのか??」
「い・・いや・・えっとぉ???」
なんだかよく分からないが越生はキスマークと気づかなかったらしいので、
東上は内心ホッと息をついた。
「大丈夫か?」と心配そうに自分を見てくる子供の優しさに心の中で手を合わせながら。
有難う御座いました。
唇が腫れるほどキスをしたね〜♪っていうある歌の歌詞を思い出し、書いてみた。
いかがでしょうか??
そういえば私がエ■シーンを書くとき、ゴムの事書いてないなぁ・・と思い、
後日談に書いてみた。・・・・マナーは大事ですよね。
でも皆付けなさそうですけど(笑)
2010/8/8
戻る
|