〜受信料〜


「相撲?」

池袋についたら有楽町がお菓子があるからこない?と言うので、
仕方なくメトロの休憩室にお招きをされた東上。
もらったお菓子は袋に入っていたので、帰ったら越生と分けようと思っていたら、
テレビをつけた有楽町が残念そうに言うので聞き返してしまった。

「お前、相撲が好きなの?案外ジジくさいな・・・」
「ジジ・・って東上・・、全国の相撲ファンに失礼だろ?」

最近は若い人だって見てるのに、
俺だってものすごいファンなわけじゃないただテレビをつけるとやっているからなんとなく、
などととブツブツ言っているとそんなことには興味もないのか話の続きを聞きたい東上が、

「で、相撲がどうしたって??」

と聞いてきたので、とり合えず最初にもどり話の続きをはじめた。

「不祥事続きで相撲の中継をやらなくなったんだよ、残念だねって話し」
「・・・ふーん・・、で?」
「・・・で?って??」
「話はそれで終わりか?」
「え・・?そうだけど??」
「ふーん・・・」

すると東上は本当につまらなさそうにオレンジジュースを飲み始めた。
どうやら100%らしく少しだけ酸っぱい。
酸っぱいから眉間に皺を寄せたのだが、
どうやら有楽町はつまらない話しでご機嫌を損ねたと勘違いしたらしく慌て始めた。
何故だか分からないが東上の機嫌が悪くなるの慌ててしまうのだ。


「あ、あのさ・・とう・・・」
「相撲ってさ」

けれど有楽町の心配も徒労に終わる。
なぜなら先に東上が口を開き、話し始めたからだ。

「相撲って確かN●Kで生中継だよな?」
「・・・え?・・・あ、うん・・そうだけど?」
「じゃあ、俺はともかくお前が残念に思うのは仕方ないかもな。」
「・・・??どういう意味??」

なぜ東上は残念でなくて有楽町は残念なのか?
東上が相撲を好きでないからだろうか??
頭のあちこちに「?」を浮かべていると、東上にしては珍しく人の悪い笑みを浮かべた。

「と、東上??」
「だって俺は受信料を払ってないけど、お前は払ってるだろ?」
「へ?(今なんて言った??)」

ズズズズ・・・とオレンジジュースのストローを啜る東上は相変らず眉間に皺を寄せている。
有楽町といえばあまりのオドロキに言葉もなかった。

「(え?だって受信料って払う義務があるんだよな??いいのか??)」

グルグルと考え込んでいれば、ジュースを飲み終わった東上が恥ずかしそうにボソッと囁いた。

「・・・・なんだ」
「え??」

けれど声が小さすぎて聞き取れず、有楽町は首を傾げる。
するとよほど恥ずかしいのか、東上は顔を真っ赤にさせてもう一度言ってくれた。

「だから!うのテレビはN●Kが映んないから払ってないんだ!」
「・・・・・はぁ??」
「仕方ないだろ!?オンボロなんだ!
 なぜか日本テ●ビとテレビ東●と埼●テレビ以外は映らないんだ!」
「・・・・・」
「だから受信料を払う義務なんかないね!そう言ってN●Kの職員も追い出してやった!」
「・・・・へ・・へぇ・・・そぉなんだ・・・・」

それじゃ、相撲中継も見ないよね〜・・・などと思いつつなんだか少し不憫に思ってしまった。
そしてそれと同時にあることを思いつく。
ひょっとしたらこれで東上の笑顔が見れるかもしれない。
何故だか分からないが有楽町は東上には笑っていて欲しいのだ。

「ねぇ、東上」
「あ!?」

どうやら怒鳴っているうちに彼の怒りはMAXに達してしまったのか、
心なしか返事が怖い。
けれどまぁ、そんな彼には慣れっこなので、有楽町は冷静にとあることを提案した。

「・・・ウチに・・・ちょっと古いけど全チャンネルちゃんと映るテレビがあるよ?」
「!?」
「・・・・・最近は処分にもお金がかかるから捨ててなかったんだけど・・・、
 そのよかったら・・・いる?」
「・・・・!」
「捨てる予定のテレビだからお金なんか要らないし寧ろ貰ってくれるとありがたいっていうか・・、
 ・・・あ、あの・・・東上??聞いてる???って・・うわっ」

その時、突如方を掴まれ有楽町はビックリした。
少し下にある東上の頭。
真っ直ぐ有楽町を見つめる瞳は珍しく笑っているようだ。
有楽町はなぜかドキドキしてしまう。

「有楽町」
「は、はい?」
「それ、リモコン、あるのか??」
「・・・へ?」
「チャンネル、回して合わせるやつじゃないよな??カラーだよな??」
「・・・あ、あぁ・・もちろん」
「本当にくれるのか・・・?タダ?」
「う、うん・・・」

有楽町の返事に東上は後に花を咲かせて微笑んだ。
まるで秩父鉄道と一緒にいる時のように。
有楽町は益々ドキドキしてしまった。

「サンキュー!有楽町!お前、いい奴だな」
「と、東上・・・!」


ギュッと有楽町に一瞬抱きつくと、パッと離れ、

「そうと決まったら部屋を掃除しなきゃな!」

と、腕まくりをしてメトロの休憩室を出て行こうとした。
チラッと後を振り向き「いつ持ってきてくれるんだ?」と聞いてきたので、
有楽町は東上に抱きつかれた影響で石化していたが、
何とか「今日、仕事が終わったら」と答えたのだった。

「わかった!越生が喜ぶだろうな〜。やっと相撲中継も見れるようになるし」

と言いながら今度こそメトロの休憩室を出て行くのだった。



・・・なんだ、本当は相撲中継見たかったんだ・・・と思いながらも、
いまだに石化の溶けない有楽町。


それは思いがけず東上の笑顔を見たからなのか、
それとも抱きつかれたからなのか、
答えはおそらく両方なのだろうが、
自分の恋愛には疎いタイプなのか、有楽町はしばらく気づかないのであった。

有難う御座いました。 一応、有楽町×東上・・・のつもりです。 彼らはこんな感じで日常が進み、くっつくまでに時間がかかりそうですよね。 東武はビンボーということで、 東上宅のテレビは白黒の、チャンネルも回すタイプで、映るチャンネルもすくないのでは? という設定にしてみました。 2010/7/11 戻る