季節は真夏。
それも8月だ。
8月といえば、暑い。
ジッとしていても汗がにじみ出てくる。
が、異常気象などもあって8月であっても肌寒くなることもあり、
本日の天候はまさにソレであった。
真夏なのに20度を少し超える程度の外気。
けれど仕事で動き回っていれば暑くなる気温である。

朝の一仕事を終え、
軽く汗をかいた東武東上線はタオルで汗をぬぐって、
朝霞台駅のベンチで水分補給をしていたら、
その人物は北朝霞駅の方から現れたのだった。







〜やる時はやります〜


「やっほー!東上」

JR武蔵野線は目的の人物を見つけると、
いつものようにやる気のなさ気な声で話しかける。
別に止まったからとか、遅延したからの理由で
振り替えお願いするべく朝霞台に出向いたわけではない。
朝のラッシュが落ち着いた時、武蔵野は北朝霞にいた。
高架下を何気なくみたら東上がみえたのだ。
どうやら彼も一息つく様子に見えたので、
一人で休みより誰かといたほうが楽しいよな、と、
武蔵野は多少の面倒くさい思いを横に跳ね飛ばして赴いてきたのだ。

が、武蔵野が話しかけると東上は珍獣でも見るかのような目を向けてきた。

「(あり??ひょっとしてご機嫌ななめ??)」

タイミングを間違ったかな、と背中に冷や汗を感じ始めたとき、
ベンチから立ち上がった東上は指でついて来いと即してきたので、
武蔵野はそれにおとなしく従うことにした。
ここで逃げたら後が怖い・・・。
ついて行っても怖いが・・・・。

などと頭をグルグル回していたら東上線の休憩室の前にたどり着いた。

「・・・武蔵野」

休憩室のドアを開けると今度は顎で中に入るよう即された。
武蔵野は恐る恐る休憩室の中に入ると、
続いて東上も中に入ってきて、後ろ手でドアを閉めた。
そして武蔵野の姿を上から下まで見ると、
呆れた顔で口を開き始めるのだった。

「・・・武蔵野・・・、お前・・・」
「え?・・なに??何怒ってんの??」
「・・・別に怒ってねーよ」
「え?そぉ??でも機嫌悪くね?」
「機嫌も悪くねーよ・・、ただ・・」
「ただ?」
「・・・お前の格好を見て呆れてはいるけどな」
「俺の格好?」

季節は真夏。
それも暑い8月だ。
ジッとしていても汗がにじみ出てくる。
が、8月であってもたまに肌寒くなることもあり、
本日の天候はまさにソレであった。
真夏なのに20度を少し超える程度の外気。
けれど仕事で動き回っていれば暑くなる気温である。
しかも今は朝のラッシュという一仕事を終えた時間帯で・・・、
それなのに武蔵野の格好はどうしたことだろう?

「お前・・、今は8月だぞ?」
「だね〜・・・、それが?」
「8月って暑いんだぞ?」
「ま、夏は暑いのがウリだかんな」

東上の言葉にもっともらしく頷いてみせる武蔵野。
だけど東上はそんな武蔵野を信じられない、という風に見上げた。

「・・・お前」
「ん?なに??そんな珍獣でも見るような目で見ちゃって」
「・・・まさしく珍獣を見ている気分だからな。仕方ねーだろ?」
「はぁ?どゆこと?」

今度は武蔵野が東上を珍獣でも見るかのような目で見下ろした。
さっきから東上が何を言いたいのか、分からないからだろう。
なんなんだよ、とちょっとだけイラ立ち始めた時、
東上の手が武蔵野の胸辺りに伸ばされてきた。

「(うわっ?投げられる??)」

武蔵野が衝撃に備えようとした時だった。
投げ飛ばされた時の衝撃とは別の衝撃が襲ってきた。
それは腕に何かが食い込む衝撃で、
同時に寒さがブルリと全身に染み込んでくる。

「ぎゃっ!!ちょっ・・なにすんの!!東上!!」
「何すんの、じゃねーよ!!
 このクソ暑い8月に半纏なんか着てんじゃねー!!」
「だって今日は寒ぃじゃん!!」
「半纏を着るほど寒くねー!!」

そう怒鳴りながら武蔵野から半纏を奪おうとする東上は半袖だった。
そりゃ、ガテン系の東武に比べたら、
軟弱なJRのなかでも特に軟弱な武蔵野に、
今日の寒さは半纏がないと辛いのだ。

「脱げ!!見てて暑い!!」
「脱げって・・・、うわっ!!さ、寒い!!寒いって!!」
「寒くねーよ!この軟弱の国鉄が!!いいから脱げ!!」

東上が武蔵野の半纏を引っ張る。
脱がされまいと東上の引っ張る半纏を死守する武蔵野。
半纏の縫い目がプチプチいい始めた頃、
このままだと力負けをして半纏を奪われる、
そしたら寒くて風邪を引いて運休して、
結果、東上とその他諸々に殴られる、
という計算式ができた武蔵野は、
半纏を引っ張る東上の手首を掴んだ。

「な、なんだよ!?」

手首を掴む武蔵野の目は真剣だったので、
東上は少しだけ怯んでしまう。
けれどすぐにいつものやる気のなさそうな笑顔をうかべていたので、
東上は掴まれた手首を外そうと、
掴まれていない手で自分の手首を掴む武蔵野の手を外そうとした、その時だった。

「・・・脱げってさ・・・」
「あ?」

武蔵野の顔が東上の顔に近づいてくる。
顔が斜めに傾き、キスされる!?と目を瞑った東上だが、
唇にはいつまでもその感触は感じられない。
なんだ?と目を開けようとしたその時、
耳に武蔵野の吐息を感じ、背中にゾワゾワと何かが走るのを感じた。

「脱げ、なんて東上ってばエッチだよな・・・」
「は?・・な・・な、に言って・・・」

耳元で喋られ始め背中のゾワゾワが一層強くなっていく。
武蔵野の半纏を脱がそうとしていた手からは力が抜け始め、
布地を握っていられなくなっていた。
武蔵野の半纏から完全に手が離れたとき、
耳元で笑う気配がして、
なんだか悔しくなった東上が殴ろうと手を振り上げたその時だった、
耳朶に濡れた感じがして、さらには小さな痛みを感じたのだ。

「ひっ・・あっ!!むさしの!!」

殴ろうと振り上げた手は武蔵野を殴るでなく、
彼に抱きついて彼の身体にまわされていた。

「やめ・・やめ・・やめろ!!舐めんのやめろ!!」

耳は弱いんだ!と訴える東上に、
武蔵野はお構いなしに耳を舐め、おまけに耳の後ろ辺りに吸い付いてきた。

「武蔵野!!」

東上の膝がガクガク震え、立っていられなくなる。
ズルズルとしゃがみ込む東上に合わせ、
武蔵野も一緒にしゃがみ込みながら、
相変らず耳や首を舐めたり吸ったりしているのだった。
そして完全に床にしゃがみ込んでしまった東上を、
勢いのまま床に押し倒すのに成功すると、
武蔵野の名前を連呼しながら武蔵野の行動をやめさせようと、
開いたり閉じたりしている口に自分の口を押し当てた。

「むさ・・・、んむ??」

武蔵野の手が東上の後頭部に回り、東上の頭が固定される。
と、同時に東上の口に中に武蔵野の舌進入してきて、
息苦しさと一緒に別のゾワゾワ感が背中から腰にまで伝わり、
武蔵野の口が離れる頃にはグッタリとしてしまうのだった。
そんな東上を人の悪い笑みを浮かべながら、
武蔵野は着ていた半纏を脱ぎ、制服の上着も脱ぎ始めた。
そして東上のつなぎにも手を伸ばしてきたので、
さしもの東上も武蔵野の意図を感じ取り、
慌てて逃げ出そうとしたが、武蔵野に押さえ込まれていて出来なかった。

「お前!!わざとだな!?」
「ん〜??何のこと?」
「先に・・キ・・キキキキ・・キスしたの!わざとだろ!?」
「さーねー?ま、東上がキスすると腰砕けになるのは知ってたけどね?」
「きたねーぞ!?」
「えー?」

自分の下で、自分から逃れようと力の入らない身体を捩っている東上。
相変らず人の悪い笑みを浮かべた武蔵野は、
腰に結ばれていた東上のつなぎの袖を解いて、
Tシャツを上にたくし上げると、
そこに隠れていた小さな飾りに唇を寄せた。

「ひぁっ!!むさし・・・っ!!」
「東上さー・・」
「そ・・そこで・・しゃべん・・な・・っ」

東上の腰やら胸の飾りやらおへその周りやらを撫でながら、
東上の懇願を無視して喋り続ける武蔵野。

「東上さ、半纏を脱がせようとしたじゃん?」
「・・・っ・・・れが・・なんだって・・んだよ!?」
「俺が寒そうにしてたから東上さ、
 身体をはって協力してくれようとしてたんだろ?」
「は?・・・っ!!・・・やめっ・・」

話を続けながらも着実に脱がされていく東上。
何度もキスをされ、体中に武蔵野の冷たい手が這い回る。
不思議と悪寒はしない・・・、
それだけ慣らされた、と、いうことだろうか。

「寒いときは運動して暑くなるのが一番だもんな〜。
 東上、俺とエッチして俺のこと温めてくれようとしてたんだろ?
 だから半纏を脱げって言ったわけでしょ?」
「・・・・っ!!?・・バ・・カ・・言ってんじゃ・・・っ!!」
「折角の東上からのお誘いだしー?俺も応えなきゃ男じゃねーからな」
「応えんでいい!!・・・つー・・か・・・、
 そもそも・・・誘って・・ねー!」
「や〜・・、今日は8月なのに寒くて憂鬱だったけど、
 東上のおかげで寒さに勝てそうだわ」
「うっ・・・く・・・んぅ」

これ以上は好きにさせないと、
武蔵野を上からどけようとするが、
すでに身体は武蔵野に従順になりつつあり、
自分の意思では動かせなくなっていた。
東上がもどかしげに腰を揺らし、
熱のこもった目で武蔵野を見上げると、
武蔵野の咽がゴクン、と鳴った。
それを見て東上は苦笑を浮かべながら、

「こんな時ばっかやる気出してんじゃねーよ・・・ばか」

と、身体から力を抜き、かわりに武蔵野に抱きつくのだった。
武蔵野も東上の身体に腕をまわし、
自分の唇を東上の唇に近づけながら、

「俺だってやるときはやるんだぜ?」

と、言いながら優しく唇を重ねあわせ、東上の身体に圧し掛かるのだった。




・・・・武蔵野の身体を浮かべながら、
このやる気を仕事の方にももうちょっと出してくれたらなー、
と、東上が思ったのはいうまでもない。


2011/821


ありがとうございました。 久々に武蔵野×東上。 この二人は書き始めるとスラスラ書けます。 でも武蔵野のキャラは掴みにくいです。 でもこの公式(?)CPは書いてて楽しいから好きかもです。 戻る