〜不器用な二人〜


本日の業務は事故とか色々あって終業まで大分時間がかかってしまった。
自分のせいではないけれどそこは相互直通、
一蓮托生でどこかになにかが起こると自分も巻き込まれる。
その逆もしかりなのでいちいち目くじらを立てていては疲れるのだが、
そうもいかないのが自分の性格で・・・・。

東武東上は首をコキコキ鳴らしながら誰もいなくなった事務所の電気を消す。
今夜はもう越生の待っている宿舎には戻れそうもない、
池袋の仮眠室にでも泊るか・・・と、
大きなため息を吐きながら事務所の扉を開けたときだった。

「・・・・っ」

何の前触れもなく目の前には青い布が飛び込んできた。
確かめずとも分かる・・・この服は・・・。

「・・・西武?」

何の用だよ?という感じで眉間に皺を寄せつつ、
少しだけ高い位置にある相手の顔を見据えれば、
その表情にはいつもの覇気はなく青ざめていた。
クンッと鼻を鳴らせばまだ鉄の匂いが鼻をつく。
深夜の為駅構内の電気はほぼ落とされているので薄暗いが、
彼の着ている制服には所々赤黒い斑点も見て取れる。

そう、今日の東上、有楽町、副都心の遅延の原因は、
西武池袋線内で起きた人身事故だった。
夕方の帰宅ラッシュ時に起きたことにより、
夜遅くまで引きずってしまっていたのだ。
そんな西武池袋がまだシャワーはおろか着替えすら済ませていないところを見ると、
彼はまだまだ仕事が残っているのだろう。
気に喰わない存在だがご愁傷様、くらいに思う心は持ち合わせている。
けれどそんな『いたわり』の言葉をかけてやるのも東上の性格上、出来ない相談で、
ハッと嫌味たっぷりに笑いながら話しかけた。

「なんか用か?今日は誰かさんのせいで大変だったから、
 たいした用がなければ明日にして欲しいんだけど?」

だが東上の言葉に対する西武池袋の返事はなかった。
いつもなら1つ言えば2〜3個言い返してくるというのに・・・。
こりゃ、久々に重症か〜?などと、心の奥底でため息をついたとき、
ズズイと封筒が目の前に差し出された。
そしてそれまで黙っていた西武池袋がやっと口を開く。

「・・・・今回の書類だ」

けれどその声にはやはり破棄がない。
あ〜あ、やっぱ久々に重症だな〜、と東上が思っていると
封筒を受け取ろうと伸ばしていた手がフイに西武池袋の指に触れた。

「・・・!」

東上はその瞬間ビックリして封筒を落しそうになってしまう。
季節は夏だというのに触れた西武池袋の指は氷よりも冷たかったのだ。
コレは尋常じゃないだろう・・・、
西武池袋は気に喰わないが目の前で倒れられても後味悪いし、
明日また運休されても困る・・・・。
東上は、はぁ・・と何度目かのため息の後、
西武池袋の手首を掴み事務所に逆戻りをする。
パチンと消した電気をもう一度つけ、
近くにあったパイプ椅子に西武池袋を座らせた。
・・・・ここまでしても西武池袋に抵抗する気配はない。

「(どんだけ重症なんだよ?つーか何が原因?)」

自分や副都心の嫌味が原因じゃないことは確かだ。
それくらいでへこたれるほどヤワなヤツではない。
有楽町は胃を押さえながらも振り替えはしてくれるし論外だ。
では他に接続がある路線から何か言われたのだろうか?

「(それにしてもなぁ・・・?)」

どこの誰に何を言われようとも西武池袋は気にしないはずだ。
彼が兼愛している例の会長さん辺りになら別だが・・・・。
けどその会長ももういない・・・、まぁ、別の会長がいるが・・・。
うーん・・・?と東上は考えながらも戸棚をガサガサ探し続ける。
そして真夏には不似合いなあるものを見つけると、
徐に西武池袋にむけて投げつけた。

「!!」
「・・・いま風呂沸かしてくるからとり合えずそれであったまっとけ」
「ホッカイロ?・・・私は別に寒くなどない」
「はぁ?お前、それマジで言ってんのか?」

東上は呆れたように西武池袋に近づくと、
普段の犬猿さはどこへやら、
彼の手を握ってホラッと言うのだった。

「お前の手、真夏だってのに氷より冷たいぜ?いいからそれ、使っとけ」
「・・・東武の施しなど必要はない・・・こんなもの不要だ」

自分には必要ない、と西武池袋は覇気のない顔でホッカイロを東上に返そうとした。
そんな覇気のなさでなにが大丈夫なのか?、
東上はフツフツと怒りがわいてくる。

「だったらさっそと風呂入ってその鉄くさい服を脱いでから、
 それから俺んとこ来いよ!!迷惑だ!」
「・・・・・!」

東上が怒鳴ると西武池袋は声にならない言葉を何か言っていた。
何を言っているのかは分からない。
おそらく言い訳であろうが、今はそんなことはどうでもよかった。

「・・・で?」
「・・・・?なんだ?」
「なんだ、じゃなくて、お前がそんなに落ち込んでいる理由だよ!なんだ?」
「・・・落ち込んでいる?・・・・私が?」
「自覚ねーのかよ?お前、ぜんっぜん覇気ねーだろ?それって落ち込んでるんだろ?」
「・・・・ああ・・・、そういうことか」
「西武池袋?」
「・・・私は落ち込んでなどいない・・・、人身など慣れているしな」

・・・・人身になれるやつなんていねーだろ?と心の中で突っ込みをいれつつ、
今はそれどころではないので西武池袋の言葉の続きを待った。

「・・・ただ事故の起こった場所が場所で・・・」
「ふーん?」
「その場所は他の西武の面々もおらず、私だけの路線で・・・・、
 事故の処理をしているとき・・・私は一人だ・・と思った」
「へー?」
「その時、なぜだか無性に心細くなって・・・、
 途中で西武有楽町が応援に来てくれて私はホッとした・・・」
「・・・・・そりゃよかったな」

ならなんでお前は落ち込んでんだよ?と思ったが、
東上はある考えが頭を過ぎり、
自分も椅子に腰を下ろしつつ口に出してみた。

「・・・お前ひょっとして、一瞬でも一人が寂しい、
 とか思っちゃった自分に驚いて落ち込んでんのか?」
「・・・!!」

その瞬間、蒼白だった西武池袋の頬は瞬く間に朱に染まった。
どうやら図星のようで、東上はやれやれと肩を竦める。

「別にいいんじゃねーの?」
「・・・何がだ?」
「だから!一人が寂しいとか思っても・・・、いいんじゃね?
 それって仲間が増えて今は寂しさを感じないってことだろ?
 それって・・・幸せなことなんじゃね?」
「東武・・・・、違う」
「あ?」

なにが?と訝しげに首を傾げれば、
西武池袋は天井を仰ぎつつ、深いため息を吐いた。

「確かに私は一人が寂しいと感じた自分自身に驚いた。
 だがその瞬間・・・、なぜかお前のことを思い出したのだ」
「・・・・俺?なんで?」

東上の眉間にますます皺がよっていく。
西武池袋は言うか、言うまいか迷っているのかずっと天井を見続けている。
そしてそのまま、ひとり言のようにボソボソと呟き始めた。

「・・・貴様は・・いつもこんな気持ちなのかと・・・」
「はぁ?」
「だから・・・、貴様はいつもこんな孤独を抱えているのかと・・・、
 そんなことを一瞬でも考え込んでしまった自分が腹立たしく・・・、
 そして気がついたらココに居たというわけだ・・・・」

全てを言い終えて、西武池袋が東上に視線を戻した時、
彼が無表情になっていたことに驚き、
思わず椅子から立ち上がった。

「・・・おい?」

さすがに心配になり、肩を掴もうとしたその時、
バチンと手がなぎ払われた。
いつもならそのまま殴りあいになるところであるが、
触れた東上の手が氷のように冷たかったので言葉を飲み込んでしまう。

気まずい沈黙が続く中、
場に不釣合いな電子音が聞こえてきた。
どうやら風呂が沸いたようで、東上はハッとしたように西武池袋を見た。
その顔はすでに無表情ではなく、
いつもの眉間に皺がよった顔であった。

「・・・風呂が沸いた。入っていくだろ?」
「・・・いや・・・私は・・・」
「せっかく沸かしたんだから入ってけ。
 ・・・・服は貸してやる」


・・・小さいのではないのか?とは口が裂けてもいえなかった。
西武池袋とてさすがにそれぐらいの空気は読める。

「ついて来いよ」

東上はそういうと椅子から立ち上がり、浴室へと案内した。
おそらく、夜勤の職員などがつかう簡易バスルームなのだろう。
けれど、遠い昔に尋ねた彼の家とは違い、シャワーはついているようだ。
湯船も小さくて狭いがきちんとある。

「着替えは用意しとくから早く入れ」

クルリと背を向けシャワー室から出て行こうとする背中を呼び止める。

「・・・・・東武」
「・・・なんだよ?」

不機嫌そうに返される声。
自分たちはいつからこうなったのだろうか?
考えても思い出せない。

「・・・貴様はもう風呂には入ったのか?」
「・・・まだだけど?」

それが?と目で問う東上の手首を掴むと、
西武池袋は徐にシャワーコックを捻り東上に向けてかけた。

「うわっ!!?」

当然だがびしょぬれになってしまった東上は、
何するんだ!?と怒鳴り、掴みかかるが、
西武池袋はシレッとした顔で言うのであった。

「・・・今にも死にそうな顔色だったのでな。
 温まらねば死んでしまうと思い・・・、
 目の前で死なれても後味が悪いことこの上ない」
「・・・だからって・・・あーあー・・・!!」

変えのつなぎ置いてあったかな〜、
と愚痴る東上のぬれたつなぎのファスナーに手を伸ばす。

「おい!」
「早く脱がねば真夏とはいえ風邪を引くぞ?」
「わかってるよ!!だいだい誰のせいでこうなったと・・」
「私だな」
「わかってんなら偉そうに言うんじゃねーよ!!
 つーかお前も早く入りやがれ!!俺が風邪を引くだろーが!」
「・・・そうだな・・・、なら一緒に使えばいい」
「は?・・・うわっ!!つなぎを脱がすな!!」
「服を着たままでは風呂に入れんぞ?」
「んなの知ってる!!げっ!?お前も脱ぐんじゃねー!!」
「脱がなければ風呂に入れない」
「そうだけど・・・、俺は一緒に入る気はねーんだよ!!」

身を捩り、東上が叫んだとき、西武池袋はフッと笑った。
なぜそんな風に笑うんだ?と、ますます眉間に皺を寄せれば、
いつものように嫌味たっぷりに言われるのだった。

「相変らず気が合わないな・・・、
 私は貴様と入る気、満々だ」

その自信たっぷりの言葉と、
思いのほか強い力にたいした抵抗も出来ず、
東上は泣く泣く西武池袋と一緒に風呂へ入るのだった。













「狭いな」
「当たり前だろ?もともと一人用だ」

だから一緒に入るのは無理だといったのに、
と、東上の目はそう言っている。
西武池袋はたいして気にならないのか、
タオルを頭に乗せながら狭いながらも寛いでいた。

「・・・つーか、お前さ」
「なんだ?」
「・・・くっつきすぎなんだけど?」
「狭いのだから仕方ないだろう?」
「そうだけど・・・もうちょっと端にいけんだろ?」
「これが限界だ。私は貴様と違ってガタイがある」
「なっ!!」

聞き捨てならない台詞に思わず西武池袋に掴みかかろうとするが、
殴ろうと伸ばした腕はヒョイと避けられ、なんなく掴まれてしまう。
そしてマジマジと身体・・主に上半身をジロジロ見られて東上は困惑してしまった。

「・・・な、なんだよ?同じ男の裸なんて見たってつまんねーだろ?」
「・・・・確かに男の身体など見慣れているが・・・」

ふむ・・・、と西武池袋はより東上との距離を縮め、
自身の身体と密着させなにやら考えていた。

「おい?なんなんだよ?」
「・・・筋肉は普通にあるのだな?
 ・・・だが内側につくタイプなのか?いささか華奢だな」
「筋トレはかかさねーからな・・・、そりゃ人並みにはあると思うけど・・、
 てかそうじゃねーと武蔵野とか投げ飛ばせねーだろ?」
「・・・なるほど、一理ある」

そしてまた何か思案している西武池袋に、
東上はなんでもいいから離れてくれ!と思っていた。
心臓がバクつくのだ。
いかに嫌いな相手でもこうも密着していては当たり前だ。
それにココしばらくは忙しくて人肌からも遠のいている。
相手が西武池袋であっても変な気になりかねない。
それだけは避けたい。

「・・・東上」
「・・・はぇ?」

であった頃はともかく、最近では東武と呼ばれていたので、
久々の呼ばれ方に思わず間抜けな声で返事をしてしまう。

「・・そう呼んでいたころは気づかなかったな。
 貴様がこんなに小さかったとは」
「・・・っ、なんだと?」

俺は小さくねぇ!と叫んだが、西武池袋はフッ笑うばかりだ。
・・・確かに西武池袋や有楽町、副都心に比べれば多少小さいが、
東上のなかではあくまで『多少』なのだ。
それにそこまで小さくないとも思っている。
すくなくとも同じ東武には東上より小さいヤツだっているし、
周りを見渡せば自分と同じ位の男だって沢山いるのだから。

「抱きしめれば体格差は歴然だ・・・」
「・・!お、おい!!ちょっと待てって!!」

けど東上の静止など聞こえないかのように、
西武池袋は東上の腕を引っ張り抱きしめる。
彼の足の上に座る形となった東上は全身を真っ赤に染めて悶えた。
下半身が密着している。
気づきたくはないが西武池袋のソレは少しだけ形を成しているようだった。
・・・・もちろん自分も。

「ちょ・・・、待てって!!今日のお前・・おかしいぞ!」
「・・・貴様もな・・・。
 嫌いな私に抱きしめられているというのに鼓動が速いぞ?」
「・・そ、それ・・は・・・」

西武池袋の胸板に手をつき、
身体を離そうと上を見上げた時、西武池袋と目が合ってしまった。
その目はいつものような小ばかにした様子は感じられず、
むしろ真剣そのもので、東上はごくりと咽を鳴らす。
西武池袋の頭の上からタオルが落ち、チャポンと音がなる。
顔を斜めに傾けながら髪の色は違うけれど、
昔と同じ目をした彼の顔が近づいてくる。

「(・・・あ・・・そっか・・・風呂だからコンタクト取ったのか)」

顔が近づくにつれて閉じられていく瞳を残念に思いながら、
東上も引き寄せられるように目を閉じ顔を傾けるのだった。








「は・・・ぁ・・・っ・・ふ・・・あっ」

ここは風呂だぞ?
とか、
俺とお前は敵同士だ、
とか、他にも色々と東上は叫んだ気がしたが、
西武池袋はそのどれも、
風呂でセックスしていけないと誰が決めた?
とか、
今は終業後で自由時間だ、
とか言ってやんわり退け、東上を溺れさせていく。
最初は口の中だった。
優しく合わさった唇同士、しばらくはただそれだけだったのに、
やがて無造作に進入してきた厚い舌に淫らな音を立てられつつ、
歯も歯茎も、舌も舌の裏でさえも貪られた。
やがて口全体が痺れ、だるくなってきたところで首筋を舐められ、
もっと下にある二つの小さな突起を唇と指で翻弄され続けた。
舐められるのはまだ良かった、耐えられたのだ。
ただ指で摘まれたり、唇で据われたりすると全身が痺れ喘いでしまう。
やがて西武池袋の手は東上の中心にまで伸び、
彼の中心と一緒に翻弄され始める。
熱くなった性器同士を擦り合わせていると東上はワケもなく震え続けた。
やがて西武池袋は東上の手を取り、互いの性器を握らせると、
耳元でそのまま弄っていろ、と囁かれ、
西武池袋自身の指は東上の後ろの窄まりへと移動していった。

水が入る、
とか、
気持ち悪い、
とか叫んでも、
乾いたままよりマシだろう?
とか、
直ぐに良くなる
とか言ってやんわり退けた。

「あっ・・・は・・・やばい・・・やばいって・・せ・・ぶ・・」

東上の中を指で掻き混ぜながら、ある部分を見つけた西武池袋は執拗にそこを弄り続けた。
西武池袋の膝の上に完全に乗り上げた東上は、
最早二人分の性器を弄る作業も放棄して、
西武池袋の耳元で熱い息を吐き続けている。
腰を揺らし、熱い息を吐き続ける東上の様子にゆっくりと中の指を抜いていく。

「・・んん・・・んんんっ・・・」

突然の喪失感に西武池袋の首筋に顔を埋めながら、
半ば放心状態で上を見上げる。
開きっぱなしの口からは飲み込みきれなかった唾液が伝い落ちていく。
その口にもう一度唇を寄せると、応えるように東上の舌が絡まってくる。
そのまま深いキスを交わしながらキスの途中で目を開き小さな窄まりに、
今か今かと待ち焦がれていた自身をあてがい、ゆっくりと腰を進めていく。
東上の眉が苦しげに歪む。
けれど逃げようとは思わないようで、
かわりに西武池袋にしがみつく腕の力が強くなった。
全てを東上の中に納め、ゆっくりを腰を揺さぶった。
東上の顔が苦しげに歪む。
けれど苦しそうな声と一緒に口からは熱い吐息が漏れているので、
苦痛だけではない、と悟ると、東上の腰と背中を抱きしめ、
徐々に穿つスピードを速めていく。

「あっ・・・ん・・・・んっ・・・」
「・・・東上・・・・」

名前を呼ぶとそれまで閉じられていた目が薄っすらと開かれた。
目に涙を沢山溜めた瞳はなんともいえないくらい綺麗で魅せられていく。
だからもう一度名前を呼ぶことでそれを伝える。

「・・・とう・・じょ・・・っ・・・く」

自分も東上もそろそろ終わりが近い。
腰を抱いていた手を前に移動させ、
東上の熱くなった性器を包み込んだ。
律動に合わせ東上のソレも最後に向けて追い込んでいく。

揺さぶるたびに水も大きく波打つ。
顔に飛んでくる水飛沫で東上は目を閉じたりあけたりしていたが、
目を開けているときはジッと西武池袋の目を見続けていた。
やがて首にまわっていた手が西武池袋の頬を撫で、
そのまま目に移動していった。

そして同時に最後を迎えるとき、
西武池袋は東上に頭を抱きしめられながら、彼の小さな声を聞いた。
絶頂を終え、身体は火照り、熱いはずなのに、
頭の奥は同時にスゥ・・・と冷えていくのがわかった。

東上は最後を向える時に、

『武蔵野』

と言ったのだ。

コンタクトをはずした自分の目はあの時のままだ。
その目をずっと見続けていた東上。
東上は西武池袋ではなく『武蔵野』に身体を許したのだと分かった瞬間、
腕の中で意識を手放した相手が無性に憎くて仕方がなかった。

あんなこと言わなければよかった、と西武池袋は思う。
一人が寂しいと感じた自分自身に驚き、けれどその瞬間・・・、
なぜか東上のことを思い出した。
つまりそれは寂しいときには彼に傍にいて欲しいわけで、
同時にかれが孤独を感じているときは自分が傍に居たいと思ったわけで、
だからそう思ってしまうこの気持ちは・・・・・。

「だから東武は嫌いなのだ」

東上に言い聞かせるように呟いた言葉。
けれど気を失っている東上には届かない。

なんともいえないやるせない気持ちを胸に抱いたまま、
西武池袋は意識のない東上に優しく口付けた。
その瞬間、小さく瞼が振るえ東上の頬を一筋の雫が伝ったが、
それには気づかないフリをして、
西武池袋は唇を合わせながら東上を抱きしめるのだった。



2011/8/7


ありがとうございました。 だからこの二人のエ■を書くと暗いORギャグになるのだよ〜(汗) なぜだろう?? ちなみに最後、東上は気がついてます。 でも『武蔵野』って言っちゃったんで気まずいんですね、はい。 どうなるんですかね、この後。 はれてラブラブか・・・、 はたまた犬猿のまま身体だけの関係が・・・・、 ・・・・ご自由にご想像ください。 戻る