有楽町は変わった。

少なくとも僕が新線と呼ばれていた頃とは大分違う。


あの頃はもっと優しかった。

もっと僕に構ってくれた。

僕はそんな有楽町が大好きで、

大好きで、大好きで、

早く大人になりたいと思っていた。



 
〜手 1〜


久しぶりに熱を出した。

昔はよく出していたけど、
大人になってからは久しぶりだ。

咽が痛い。
身体が痛い。

ああ、目を開けるのが億劫だ。

顔は熱いのに、鳥肌が止まらない。


・・・・、ああ、本当に久しぶりの風邪だ。


昔は熱を出すと先輩が傍にいてくれたっけ。

寂しいと泣けば一緒に寝てくれた。

・・・僕が治ると今度は先輩が風邪を引いて、
すると東西さんとか日比谷さんが看病して、
その間、僕は先輩の部屋には立ち入り禁止で、
僕はそれが悔しくて・・・、
悔しくて、悔しくて、
早く大きくなりたいと願っていた。



「・・・副都心?」

ああ、誰かがの僕を呼んでいる。

おでこに何かひんやりした感触がする。

火照っているから気持ち良い。

そういえば昔、先輩にそう言ったら、ずっと手を置いていてくれたなぁ・・。
熱いおでこにずっと置いているから、
先輩の手はそのうち温くなって・・・、
でもそれがとても気持ちよかったのを覚えているなぁ。


・・・懐かしいなぁ。


新線の頃は早く大人になりたいと思っていたけど、
今は新線に戻りたいと思うこともある。

・・・あの頃の優しい先輩にもう一度会いたいからかな・・・?



「・・・副都心?」


ああ、もう一度僕を呼ぶ声がする。


「・・・大丈夫か?」


やっぱり僕を呼ぶ声がする。

・・・どうやら幻じゃないみたいだ。

目がとっても重いけど、開けなきゃなぁ・・・。

「・・・副都心?」
「・・・・らく・・ちょー?」

先輩だ。
・・・有楽町だ。
有楽町が僕のおでこに手を当てている。
・・・・熱を計っているのかな?
有楽町の名前を呼びたいのに、
咽が痛いから掠れた声しか出せない。

「・・・まだ熱が高いな」


有楽町が心配そうに僕を覗き込む。
・・・あの頃と、新線の頃と同じように僕を心配してくれている。

「・・・すみ・・ませ・・・ぼ、く・・・」
「ああ、いいよ。無理して喋らなくて・・・、辛いだろ?
 副都心線は大丈夫だから。お前は早く治すことだけ考えな」

有楽町は眉をハの字に下げながら咽かわいてない?と聞いてきた。
僕は返事をせずに頷くだけで答えた。
有楽町はコクンと頷いてスポーツドリンクのキャップを開けた。
そして僕を起こすと、
あの頃と同じように背中に手を添えて、
ペットボトルを口元に持ってきてくれて飲ませてくれた。


ああ、あの頃と同じだ。
有楽町は少しも変わっていない。
優しい。
大好きな有楽町。


「早くよくなれよ。やっぱお前が元気ないと寂しいからさ」

ペットボトルを枕元に置くと、
まだ仕事があるから、と有楽町・・・、先輩は部屋からいなくなった。

・・・・それが寂しい。

・・・新線の頃もそれが嫌だったのを思い出した。

ただあの頃と違うのは、
あの頃は大きく感じた先輩の手が、
今はなんだか小さく感じた。
それがおかしかった。

・・・それは僕が大きくなった証拠なんだけど。


有楽町は変わってなかった。

僕が新線と呼ばれていた頃からずっと同じ。。


あの頃も優しかった。

僕を構ってくれる。

僕はそんな有楽町先輩が大好きで、

大好きで、大好きで、

大人になれてよかったと思った。


・・・・早く風邪、治さなきゃなぁ・・・。


だって僕が引くと必ず先輩も引くから。

・・・あの頃と違って、僕はもう大人だから、
今度こそ先輩の看病をしよう。


絶対に。



有難う御座いました。 ただ副都心が語っているだけです。 つまり先輩が好きなんだ、という話ですね! 2011/2/25 戻る