ずっと見ていたよ。

例え君が僕じゃない誰かを見ていたとしても・・・・。



 
〜手 2〜



小川町の休憩室を除いたら、
そこでは東上が眠っていた。
珍しいこともあるな、と
そっと中に入れば、
彼は毛布に身をくるんで震えていた。


・・・ああ、風邪を引いたんだ。

珍しいな。

でも、だからこそ、越生に移さないようにここに居るんだろうな。

僕は東上の傍まで行くと、
眠る彼のおでこに自分のおでこを当てた。

・・・熱い。
相当熱が高いみたいだね。

「・・・は、ちこー?」

僕がおでこを当てたからか、東上が目を覚ました。
熱で潤んだ目で僕を見つめてくる。

「風邪?」
「・・・ん・・・、わからない・・、夕べからだるくて」
「そっかぁ・・・、季節の変わり目はひきやすいからねぇ・・」
「うん・・・」

おでこをくっつけたまま話し続ければ、
東上は何故か困ったような顔をした。

「・・・どうしたの?」
「・・・ん・・・、思い出した」
「・・・思い出した?」

・・・何を?、と問えば、東上は、昔を、と言った。

「・・お前、昔から、俺が熱を出すとそうやって熱測るだろ?」

越生にだって俺、そんな測り方しねーよ、と彼はクスクス笑う。

「そっか・・、うん、そうかもね。
 でもねぇ、東上・・・、僕がこの測り方をするのには意味があるんだよ?」
「・・・うん?」


ずっと見ていたから。

例え君が僕じゃない誰かを見ていたとしても・・・・。

僕は少しでも君に触りたいんだよ?

ねぇ?わかってる・・・?

熱でだるいのか、東上はトロンとした顔で僕を見つめてくる。
咽かわかない?ときいたら、東上は小さく頷くので、
僕は持っていた水のペットボトルの蓋を開ける。
中身を口に含み、東上の口まで運んだ・・・、昔と同じように。
東上は黙って僕の唇を受け止める。

・・・ねぇ?東上・・・・?
君は僕じゃない誰かを見ているハズなのに、
どうしてあの頃も今も僕の唇をその唇で受け止めるのかな?


・・・そろそろその答えを聞いてもいいのかな?

ねぇ、東上?


ずっと見ているよ。

例え君が僕じゃない誰かを見ていたとしても・・・・。

でも君は誰かじゃなくて本当は・・・・・。

ねぇ、東上・・・・。

君の風邪が治ったら聞いてもいいかい?


君の本当の答えを、さ。



有難う御座いました。 八高→東上だけど八高×東上になりつつある。 『手』に嵌ってまして、次はどのペアにしようか悩み中・・・。 なにかありますか??? 2011/2/25 戻る