**ブログでやっていた話の続き、のようなもの**




 

「・・・・・っ」
「・・・・東武」
「・・・・ぅ・・・・っ」
「・・・・声を出せ、その方が楽だろう?」
「・・・うる・・・せ・・・、っ・・・さっさと・・終わらせ、ろ」
「・・・・・」



この関係がいつから始まったかは分からない。
ただお互いなんとなく、だ。
普段は罵りあい、貶めあっている。
ただ、何の因果か・・・・、私たちは時々身体を重ねあっていた。





〜割れ鍋に綴じ蓋〜







「泊っていくのか?」



そんなことは決してない。
分かってはいるが私は毎回その言葉を投げかける。




「・・・俺が西武の部屋から朝出勤したら変に思われるだろ?」




応えは否。
毎回同じ返事。
私はそれに対し、ただ黙って頷くのみ。
東武がつなぎの前をあわせ、テーブルに置いてあった携帯電話を取る。
その時、何かを思い出したのか不機嫌な顔で私を振り返ってきた。

・・・頬は抱き合っていた時の余韻か、まだピンク色だった。

「・・・お前さ」
「・・・なんだ?」
「俺の着信音、弄っただろ?」
「・・・・・・着信音?」

直ぐには思いつかず、首を傾げたが、
東武が、

「お前からの電話、西武ライオ●ズのテーマ曲になってたぞ」

と、言うので、私は、ああ、と思い出す。

「そういえば・・・、いつぞやの逢瀬の時に弄った記憶があるな。
 ありがたいだろう?」
「・・・・いや、全然」

ベッドの端に腰をかけ、なんで西武●イオンズのテーマ曲なんだよ、
と東武はますます眉間に皺を寄せた。

なぜ?
なぜ私が着信音をかえたのか、やはりわからないのか?

『なぜ?』

私がそれを聞きたい言葉だ。
貴様は、何故・・・・。

「・・・貴様が電話に出ないからだ」
「は?」

東武が私の顔を覗き込んでくる。
私はそんな東武の顔に手を伸ばし、
そのまま強引にベッドに引きずり込んだ。

「うわっ!!」

裸の私の胸に、
つなぎをきた東武が落ちてくる。

「ちょ・・・、ちょ・・っと・・まっ・・」

身を捩る東武の首筋に歯を立て、
私は振り絞るように言った。

「貴様、私からの電話は出ないだろう?」
「・・・・っ・・・・ぁ・・・?」
「だから、私からだと分かりやすいように私からの電話の着信音を変えたのだ。
 貴様は我々を好いていないのは周知の事実。
 ならばライオ●ズのテーマ曲がなれば、周りに悟られない為に電話に出るだろう?」
「・・・・っ・・・・そん・・・な・・・こと・・で・・・!!!!」

つなぎを剥き、裏腿に手をかけ、東武を一気に貫いた。
まだ濡れているソコは柔軟に私を受け入れ、絞め付けてくる。

「んんーーー!」

嫌だと暴れる身体を押さえつけ、
強引に身体を揺らし続ける。
見下ろす東武の表情は苦しげなものと、
違うものが入り混じっている。
唇を噛みしめ、耐える姿に私はその意地を崩してやりたくなるのだ。
昔から変わらない、
意地っ張りで、
頑固で、
誰にも頼らない。




ああ、思い出した。
初めて身体を重ねたのは、あの時だ。
秩父鉄道が東武との直通を打ち切り、我々西武と手を繋いだあの時。
泣きそうな、もの言いたげな顔で私をねめつけてくる東武の視線に耐え切れず、
私は東武の宿舎まで赴き、無理やり奪った。

・・・東武はそれでも涙を流したりはしなかった。

それから何度か身体の関係は続いていた。

IT化が進み、携帯電話というものが流通しだし、
我々『鉄道』も利便性のためにそれを持ち始めた。
それでも貧乏東武は持たないと思っていたが、
奴らは新し物好きでもあるので、携帯は配給されたようだった。


『なんだ・・・、貴様も携帯なぞ必要なのか?』
『どういう意味だよ?』
『貴様、振替路線などないだろう?』
『!!事故ッた場所によるんだよ!!バカにすんな!!
 俺だって他社に振替依頼する時だってある!!
 現にてめぇにだって振替要請してんだろ!?』
『・・・・ふむ?それもそうだな。
 なら利便性のために番号とアドレスを交換しておくか?』
『・・・・は?』

怪訝そうな顔をしながらも、東武は渋々私に番号とアドレスを教えてくれた。
それからは2〜3ヶ月に1回くらいだった関係が、
1ヶ月に1回になり、半月に一回になり、
今では1週間に1回になっている。

「んっ・・・んぅ・・・んっ・・・」
「・・・っ」

東武の足を抱えなおし、より奥へと私を穿つ。
私に抱きつけばいいものを、
東武はシーツを握り締め、唇を噛みしめて身体を逸らし、
我慢も限界にきたのか、一瞬だけ甲高い声をあげた。

「−−−−っ!!あーっ!!」

東武の腰が揺れる。
私を受け入れている内部も何度も収縮を繰り返しては、
私を快楽の終わりへと道筋を立て始めた。

「・・・く・・・、緩・・・め、ろ・・・!」
「・・・う、るせ・・・っ!!
 ・・・んなこと、できりゃ・・・やって・・る!」



前回、抱いたのは丁度1週間前。
私はそれを思い出して、昼間東武に電話をした。
けれど、東武は出なかった。
だから今度はメールを送った。


『私からの連絡を無視するとは、 
 それは今夜はメチャクチャに犯されたいという意思表示か?』


しばらくして東武から返事がきた。


『この変態!!今夜なんてねーよ!』

東武は逃げた。
けれど逃げた先が成増駅とは学習能力がない。
和光市でなければ私はこられないと思っていたのか?
だがメトロを使えば、成増駅など目と鼻の先だ。
本当に逃げたければ、自分の路線でしかいけない場所に逃げれば良いのだ。
それをしないということは・・・・。

「んぅっ・・!せ・・ぶ・・せい・・ぶ・・・」
「わかっている・・・、私も・・・もう、・・・っ」

東武を抱きしめ、彼の性器に手を這わせた。
シーツを握り締めていた東武の手も、
この時だけは私の身体に回り、強く抱きついてくる。
身体を細かく痙攣させて、息を荒くしている東武を見つめながら、
私も今夜、2度目の欲望を彼の身体に解き放った。








さすがに2回はきつかったのか、
東武はしばらく休んでから帰る、とベッドに横たわっていた。
私はだまって東武を抱き寄せたが別に嫌がられなかった。
だか彼はしきりに携帯を弄っている。
・・・・東武越生にメールでも入れているのだろうか?
『今夜は遅くなる』と。
だが彼が携帯をパチンと閉じると、
どこからともなく携帯の着信音が。

「・・・・あれ?この音・・・・」
「!?」

東武はその着信音を聞いて、
それはもう、ものすごい勢いで私を振り返ってきた。

私の頬が熱くなる。
東武の顔も真っ赤になっている。

「おま・・・おま・・・え・・・の?」
「・・・・この部屋には・・・私と貴様以外いないだろ?」
「・・・・そうだけど・・・でも、今の・・・・」

私は何も答えず、自分の携帯電話に手を伸ばす。
メールは東武からだった。



『この絶倫!少しは手加減しろ!明日遅延したらどうしてくれんだ!?』


・・・文句ばかりの内容だった。
だがそのメールを見ている最中にもう1つ、メールが届いた。
・・・・東武からだった。



『でもお前とのセックスは嫌いじゃない。
 疲れたから今夜は泊ってく』


今まで一度も泊ったことがなかったというのに・・・・。
私は驚いて東武を見下ろすが、
彼は真っ赤な顔で掛け布団を頭まで被り、たぬき寝入りを始めていた。
だが私の気持ちと彼の気持ちがやっと重なり合ったのは理解できた。



東武は昔から変わらない、
意地っ張りで、
頑固で、
誰にも頼らない。

そんな彼が私を受け入れた瞬間だった。
私は今の今まで自分の東武に対する気持ちが曖昧だったが、
彼の、泊ってく、の一言で全てを理解した。
私は彼に自分を見てもらいたかったのだ。
武蔵野鉄道の頃から、
秩父鉄道の問題の時も、
自分を見てもらいたかった。
それがやっと念願かなったのだ。

私は胸が温かくなってたぬき寝入りをする東武を抱きしめた。
背中から確認するように唇を触れ合わせれば、彼は逃げなかった。
・・・思い起せば口付けはこれが初めてかもしれない。
つまりようやく私たちはお互いを認め合うことが出来たのだろう。




そして、・・・・そんな私の東武からの着信音は、
TJライナーのテーマ曲だ。



有難う御座いました。 なんだか途中まで西武→東上なお話になってますね。 本当はお互いに好きあっていたんですよ。 ただ素直になれなかっただけで・・・・。 着メロがお互いのテーマ曲(?)だったらいいな、という妄想でした。 2011/12/4 戻る