**ぬるいです**

何が悲しくてこの男と二人きりなのか・・・?
この休憩室は自由に使っていい場所であるし、
別に居ても不思議ではないのだが、
この男は極端に篭りがちというか・・・、
だからこそこの共有スペースに居るのが不思議でならない。
かくいう私も自分の所の休憩室のシャワーが壊れていて、
この共有スペースにきたのだが・・・・。





〜シャワー室の悪夢〜





シャワーを終え扉を開いたとき、
同じくシャワーを浴びる為であろうが、
つなぎのチャックを下ろし終えた東武東上と出合った。
腰にバスタオル一枚しか巻いていない私の姿を見るや否や、
東武の顔は心底嫌そうなものに変わり、
プイとそっぽを向かれた。

・・・・普段から罵りあい、時には殴り合いになる仲だ。
その態度に不思議はないし疑問も持たないが、気に食わない。
だから私はいつも憎まれ口で相手に話しかてしまう。
東武が真っ赤な顔で反応してくる姿を楽しむ為だ。

「・・・なんだ貴様もシャワーか?」
「・・・そうだけど?」

ぶっきらぼうな返事。
東武はテーブルの上に置いていた着替えとタオルを持つと、
今私が出てきたシャワー室に入ろうとしたので、
私は東武の肩を掴んでその足を止めた。

「・・・んだよ?」

何か用か?と眉間の皺がいつも以上に刻まれている。
今日は夏日で、東武は車両故障を起こしていた。
この炎天下の中、車両の点検をしていたのであれば、
私たち西武よりも涼しげな格好、つなぎとはいえ、
汗を相当かき汗でベタベタして気持ちが悪いのだろう。
その証拠に東武のTシャツは汗で身体にはりついていて、
胸の飾りが目立っていた。
私は無意識にその場所に目をやってしまっていたが、
東武の不機嫌そうな声で現実に引き戻される。

「その手を離せよ!俺は早くシャワー浴びたいんだよ!」

誰にも懐かない野良猫のような態度で食って掛かってくる。
どうしてこの男は私にだけ(ではないが、私相手だといつも以上に)
こうもヒステリーなのだろう。
キャンキャン吠える声は耳障りだし、
振り回される拳や足は避けるのに一苦労だ。
暑い夏がさらに暑くなる。
まったくいらだたしい存在だ。

それなら声をかけなければ良いのだが、
見かければ何かを言いたくなる。
私が放った言葉で歪む顔を見るのが正直私の楽しみの一つなのだ。
だから私は今回も口端を歪め、東武が怒るであろう言葉を選んで口にした。

「いや、なに・・、一つ忠告をと思ってな」
「忠告?」

東武が鋭い目つきで睨みつけながら、それでも一応は聞く気があるのか、
私のほうに顔だけ振り返った。

「貴様、普段から油くさいが今日は一段と油くさい」
「!!?なっ!!」

途端、東武はクルリと身体を返し、私と向き合う形となった。
拳を握り、身体全体をプルプル震わせながら、
殴りかかるタイミングを見計らっているようだ。
東武の細かく震える唇に目をやりながら、
ソコから放たれるであろう反撃の言葉を待った。

「車両点検してたんだから仕方ねーだろ!
 それに!!俺は昔ほど油くさくねーよ!!
 8000系も大分淘汰されたしな!」

確かに、東武の『油くさい』は8000系と呼ばれる車体のものが多かった。
しかし時代の流れか、東武東上の行っているATC化についていけないのだろう、
長年東武鉄道で使われてきた8000系は、
だんだんワンマン運転の路線でしか見れなくなってきていた。
その影響か、ほかの車両が増えた東武は本人いわく昔ほど油くささは消えていた。
だがここで言い返さないほど私は甘くないのだ。

「ふん。車両の問題ではない。
 貴様自身が油くさいのだ。
 よく『乳臭い』という言葉を聞き及ぶが、
 貴様は『油くさい』がよく似合う。
 つまりイメージが油くさいのだ」
「・・・・っ」
「今日はおあつらえ向きに油くさいんだ。
 そのままシャワーを使わずいたらどうだ?
 水道代もタダではないんだ、勿体無いぞ?」

ん?と顔を近づけて嫌味たっぷりに笑えば、
頬に鋭い痛みが走った。

「・・・・っ・・・く・・・」

咄嗟のことに歯を食いしばれなかった。
私の口の中に鉄の味が広がる。

「バカにすんな!!」

私がボーゼンと切れた口から出た血を拭っていると、
東武の叫び声とともにシャワー室のドアの閉まる音がした。
同時にシャワーの音が聞こえ、怒り任せに身体を洗う音が聞こえてくる。
そんなに強く擦ったらいくら丈夫がとりえの東武の身体も傷がつくというものだ。
やはり東武はバカなのだな、と皮肉っぽく笑ったとき、
私は自分の身体のある変化に気がついた。



・・・いや、まぁ確かに・・・最近は忙しくて処理はしていなかったが・・・。
だがどうして東武にあっただけでこんな・・・・。
私はハァ・・・と大きくため息をついてシャワーを浴びるガラス越しの東武を見る。
姿がはっきり見えないとはいえ、そこに東武がいると思うだけでなぜか妙に興奮した。

なぜ、会えば嫌味を言うのか?
なぜ、会えば怒らせなければ気がすまないのか?
それは相手が気になってコチラを気にして欲しいからだ。
・・・・認めたくなくてこれまで自分をごまかしてきたが、
身体がこうも正直になってしまってはもう無理だろう。


私はもう一度ガラス越しの東武を見る。
そして同時にあることを思った。


・・・あの男、性欲とかあろうのだろうか?


・・いや秩父鉄道にたいして異様な眼光を向けているから、
恋愛感情はあるのだろうが、性欲はどうなのだろう?
両者は必ずしもイコールでは結びつかない。
中にはプラトニックな恋愛を愉しむカップルも多いのだから。

・・・アレ、はどちらだ?

気になると答えが知りたくてたまらなくなる。
私はシャワー室のドアをそっと押してみた。
案の定、鍵をかけていなかった扉はゆっくり開き、
シャワーを終えた東武がタオルで髪の毛を拭いている最中だった。
私は気づかれないようにゆっくり近寄り、
裸の東武を後ろから抱きしめ、同時にシャワー室のドアを閉めて鍵をかけた。

「・・・なっ!?だ、誰だよ!?」

東武は頭からタオルを取り、拘束から逃れようともがいたが、
私が腰をしっかり抱いていたので出来なかった。
狭いシャワー室では動きづらくいつもの力が出せないのだろう。
だがあまりにも暴れるものだから、
私の腰に巻かれていたタオルも床に落ち、全裸となってしまう。

「・・・ひっ?」

少しだけとはいえ形を成している私のソレが腰に当たったのだろう。
いままで聞いたこともないような上ずった東武の悲鳴。
東武は恐る恐るといった感じで背後に振り向いた。

「てめぇ!何のつもりだ!?放せよ!」
「放せ、と言われて放すバカがいたら是非とも会ってみたいものだ」
「んだと!?」

私の腕の中で東武は罵詈雑言をはきながら懸命に身体を捩る。
だがそんなことをすれば私のモノは東武の身体に擦れ、
尚のこと形を成すというものだ。
東武もそれに気がついたのだろう、
やがて真っ赤な顔で動くのをやめてしまった。

「・・・どうした?抵抗は終わりか?」
「・・・ぁ・・・ぅ・・・、てめぇのが・・・くそっ!」
「ふふん」

私が勝ち誇った顔で東武を見下ろせば、抵抗を止めた東武がキッと睨んできた。

「おい、西武!」
「なんだ?」
「何のつもりかは知らねーがな!いい加減に放せよ!」
「何のつもり?この状況でそれを聞くとは貴様は経験がないのか?それともバカなのか?」
「なっ!!」
「経験のない生娘ならそれなりに順序を踏まえてやらんこともないぞ?」
「・・き・・生娘って・・・、お、俺は女じゃねー!!!」
「ほぉ?・・・では、ココを使った経験があるのか?」

私が指で東武の後ろの窄まりを撫で中に入れようとしたとき、
それはもう悲壮な叫び声が聞こえてきた。

「や、やめろ!!そんな場所使った経験なんてねーよ!!当たり前だろ!」
「ならば生娘ということだな?」
「だから俺は女じゃ・・・・あ!?」

私は後ろの窄まりから前に手を回し、
東武の内腿をゆっくりと撫でた。
東武は気持ち良いのか、それとも悪いのか、
身体を細かに震えさせてそれに耐えていた。
私はその手を前に移動させ、何の兆しも見せていない東武のソレを包み込んだ。

「ちょっ・・・ま・・・、せ・・せーぶ!」

東武の息が上がる。
私の手に反応しているようだ。
その証拠に手の中の東武は徐々に形を成していった。

「・・・貴様もちゃんと性欲はあるようだな?」
「う・・うる・・せ・・・、アッ・・・やめっ・・」
「嫌いな私の手にも反応するとはとんだ淫乱だ・・なぁ?」
「何言ってやがる!?嫌いなやつの手で反応なんかするかよ!?」
「!!?」


・・・なに?
今、なんと言ったのだ?

「・・・・っ・・・?・・・せーぶ・・?」

急に動かなくなった私を変に思ったのだろう。
なかば涙目となっている東武が背後の私を見上げてきた。
その途端、彼はギョッとした顔をするのだった。
・・・ソレはそうだろう・・、私の顔はおそらく今・・・・。

「・・・おま・・・、なんでそんな真っ赤・・・?」
「・・・っ・・・!こ、これは・・・その・・・」

私の拘束の力が緩む。
東武は身体の向きを私と対面するように変えると、
首を傾げて私の顔を覗き込んでくる。
その無防備は顔は・・・やめろ!

「おい・・?って、うわっ!」

私は無意識に東武の身体を引き寄せ、抱きしめていた。

「ちょっ?く、苦しいって!なんなんだよ!?」

私の胸を両手で押し、逃げようとまたもがき始めた。
だがもがけばもがくほど私は抱きしめる力を強める。

「ちょ・・ちょ・・・ほん、と・・・苦し・・・」
「・・・・いかない・・・」
「・・・は?・・・なに?」
「いま、・・わたし、の・・顔を見られる・・わけには、いかない」
「はぁ?」
「わたしは・・いま・・・、情けない顔をしている」
「情けない顔って・・・?」

・・・・この男、なんという無神経。
いや、無神経ではなく鈍感なのだ。
おそらくさっきの台詞も無意識だ。
この男はまだ自覚していない・・・、私への気持ちを。
・・・・だが。

「鼻の下が伸びている、ということだ!ばか者!!」
「なっ!?バカ・・?バカってな、んぅ???」

私は東武を抱きしめながら普段は罵詈雑言しか言わない、
小憎らしい口を勢いのまま自分の口で塞いだ。

「ん?んんぅ???んーーーー!!」

東武の私の身体を叩く力が増す。
けれど呼吸が苦しくなってきたのか、叩く力は段々弱まっていく。
キスをしたまま狭いシャワー室の床に二人してズルズル座り込む。
それでも私は口付けをやめなかった。

「んっ・・ん・・・、あ・・?・・・」

やがて唇を放し、閉じていた目を開ければ、
同じく閉じていた目を開いた東武の目には溢れんばかりの涙が・・・。
私がそれを唇で吸い取れば、かれは擽ったそうに身を捩るが、逃げたりはしなかった。
けれど唇は『ばーか』と動いたのを確かに見たので、
私も『それは貴様だ』と同じく唇を動かして答える。
そして私は自分の膝の上に東武を抱き上げると、もう一度唇を寄せた。
今度も東武は逃げなかったので、
私たちは何かを埋めるかのようにお互いを貪り続ける。
そして東武の手が私のモノに絡み付いてきたので、
私は東武の身体に腰をより密着させて、
彼のモノと自分のソレを一緒に握りこんだ。

「・・・は・・・お前の・・・熱・・・い・・・」
「・・・貴様もな」

同時に刺激を与え続けると二人して息が上がっていく。
あがて東武は震える腰を抑えられなくなったのか、
今まで一緒に動かしていた手を話し、
私の首に腕を回してきた。
耳に東武の乱れた息づかいが聞こえてくる。
おそらく私の息づかいも東武の耳に聞こえており、
互いのモノの嵩がドンドン増していく。
先から流れ出る快楽の証がすべりとなって、私は手の動きが早くなっていく。

「ん・・・せー・・ぶ・・・、いけ・・ぶ・・・も・・・っ」
「・・・とー・・ぶ・・・っ」

私は指の腹で自分のソレと東武のソレの先端を強く擦った。
その瞬間、脊髄が痺れ、体全体がブルリと震える。
東武も同じように身体をブルリと震わせ、
私に抱きつきながら同時に全ての熱を解き放った・・・・。


・・・その時、何故か私は首にチクリとした痛みを感じるのだった。



















「だーかーら!悪かったって言ってんだろ!」
「それが謝罪しているものの態度か?
 これだから品のない貧乏路線は嫌なのだ」
「なんだとっ!?」



シャワー室の出来事から丸一日。
私たちは今、いがみ合っている。
それは毎度のことだ。
だが今回はいつもとはいがみ合っている理由が違っていた。

「貴様のおかげで私はとんだ恥をかいたのだぞ?」
「だから悪かったって!あんなん初めてだからビックリしたんだよ!」
「なに!?・・・・初めて、だと?」
「そうだけど?」

それが?と、いう顔で東武は私を睨んでくる。
だが私はその答えになんともいえない高揚感が沸いてきた。

「・・・それは本当か?」
「嘘ついてどうすんだよ?」
「それはそうだが・・・・、女とも?」
「!!?う、うるせーな!!機会がなかったんだよ!」
「そうか」

納得したように頷くと、私はツカツカと東武に歩み寄る。
そして腕を引き寄せると、彼の耳元にソッと囁いた。

「!・・・嘘だろ?」
「嘘をついても仕方あるまい?」
「そうだけど・・・・」

東武は信じられないのか目をパチパチさせている。
だが私も『あんなこと』をしたのは東武だけなのだから、
嘘をつきようもない。
まぁ、東武も初めてだというのは嬉しい誤算だった。
ならばもう、首筋の噛み痕は大目に見てやるとしよう・・・。
私はニッと笑って東武を見下ろした。
当然だが東武は訝しげに私を見上げてきた。

「・・・嬉しい誤算もあったことだし、今回は見逃してやろう」
「はっ!そいつはありがとうよ!」
「だが・・・」
「え?うわっ!!」

私は徐に東武を抱きよせると、彼の双丘を鷲掴みする。

「ちょっ!!ここ外・・・!」

東武の訴えを無視し(どうせこんな時間は誰も通らない)
つなぎの上から双丘の間にある狭間に指を入れた。

「・・・!うわっ!!変なトコさわんな!!」
「噛み付いた罰だ。もう少しココは待つつもりでいたが、今夜は頂くぞ」
「は?何言って・・!つーか!ソコはまだやんねーよ!!」
「ほぉ?まだ、ということは、いつか、は良い訳か?」
「!!ち、ちが・・・!!」

東武は真っ赤な顔で否定するが今夜は逃がすつもりはなかった。
昨夜は結局、その場所はいただけなかったが、
嬉しい誤算を知った今、自分の欲望を抑えられるはずもない。

東武は相変らずギャーギャー叫んで逃げようとしているが、
私が優しく何度も口付けてやると大人しくなった。
やがてキスの合間に真っ赤な顔で言ってきた。

「・・・・痛くしたら許さねーかんな」

東武の答えに私はもう一度優しく口付け、抱きしめるることで返事を返した。


有難う御座いました。 ただ書いてみたかった二人のラブラブ話。 西武池袋は東上に噛み付かれた痕を、 きっと西武の面々にからかわれたのだと思います。 で、その晩は本番を行うのですが、 今度はやたらめったら背中を引っかかれて、 次の日喧嘩しているといいと思います。 「貴様!!貴様のせいで私ははまた恥をかいたぞ!」 「っ・・・!!しかたねーだろ!!  痛くすんなって言ったのにてめぇが痛くするから!!」 「私は優しくしてやったわ!!  だいたい貴様!痛いといいつつ喘いでいたではないか!」 「!!そ、それとこれは別だ!!本当にすっげー痛かったんだよ!  てめぇのがやたらでっけーから!!」 「!!??」 「・・・・・っ、しまったーーー!!」 「ふふん。そういうことなら私が謝らねばな?すまなかったな、でかくて」 「うぅ・・・」 とか、こんな感じでしょうか? それを見た先輩と後輩は頭に「???」を浮かべているんですよ、多分。 2011/10/2 戻る