**R18ですな**
〜奥手たちの恋の序章〜
ニコッではなくヘラッと笑った相手は完全に酔っている様だ。
そうでなくとも普段は無表情か怒っているかのどちらかなのだから
笑顔を向けられるだけで嬉しいが、それがヘラッとした笑いなら冷や汗を拭えない。
酔っ払いのヘラッほど嫌なものはないのだ。
ヘラッのあとにリバースする輩もいれば、怒り出す輩もいる。
そんなことをメトロの忘年会で散々経験していた有楽町は、
東上のヘラッとした笑いに引きつった笑顔を返した。
どういう風の吹き回しか、珍しく東上からのお誘いを受けたのは夕刻の和光市駅。
夜通し酒を飲まないか?と誘われ有楽町は一つ返事を返す。
それもそのはず、普段はまったくもってつれない相手からのお誘いだ。
それが好意をもっている相手からならば嬉しくて仕方がない。
有楽町の了承に東上は何故か一瞬顔を赤らませたが有頂天にいた有楽町はそれを見過ごす。
もし、彼がそんな東上をみていたら東上の気持ちに気がつき、
こんなことにはなっていなかったのかもしれない。
もっと別な風に始まっていたのかもしれない。
「ゆうらくちょー」
「は、はい?」
東上は酔っ払っているのか喋り方が舌足らずだ。
さっきまで機嫌よく飲んでいた東上が急に立ち上がり、
有楽町の正面から横に席を移動してきたかと思ったら、
両肩を掴まれドサリと畳の上に押し倒された。
今、有楽町は自分の腰の辺りに座って見下ろしてきている東上を見上げながら、
とり合えず名前を呼ばれたことに対する返事を返した。
すると東上はまた上機嫌にヘラッと笑うのだった。
「ゆうらくちょうは・・・おさけ、すき?」
「・・・あ、うん・・・まぁ・・・」
「おれもすき!おさけはぁ・・・ふわふわしてきもちよくなれるし!あまえんぼうになれる」
「・・・・甘えん坊・・・?」
そう言われれば今夜の東上はどこか甘えん坊かもしれない。
酒を飲み始めて30分くらい経った時に感じた違和感はそれかもしれない。
普段はツンツンしている東上が妙にしゃべったりして、その目が優しかったのだ。
「ゆうらくちょうもふわふわして、きもちいいから、おさけ、すき?」
「・・・ああ・・・そうだな・・・気持いいから・・かな??」
「ふーん・・・つーことは!」
「う、うん・・・?」
相変らず嬉しそうな東上は急に身体を覚束無い動作で下にずらし始めた。
腰辺りに座っていたのに有楽町のつま先辺りまで体をさげ、
四つん這になりながら有楽町の膝を触ってきたのだ。
「あ、あの??東上??」
「ゆうらくちょうはぁ、きもちいいからすきなんだろー?おさけ。いま、いってた!」
「う、うん・・・言ったね・・・」
でもそれと、いま東上がしている行動と何がどう関係してくるというのか全く分からない。
けれどヘラリとした東上の手が躊躇いもなく有楽町のベルトに手をかけ、
さらにはジッパーをおろし始めたのでギョッとしてあわてて止めさせようとするが、
東上の力は思いのほか強くできなかった。
本気を出せば出来ただろうが本気を出す前に急所を握られてしまったのだ。
「と、とととととうじょう〜!!!????」
「おれが、いまから、もっときもちよくしてやる」
「へ?・・・って!うわぁ!!ちょっと待・・・・!」
『いまから気持ちよく』と言われ、ズボンのジッパーをさげられれば流石に有楽町も気がついた。
あわてて止めようとしたが「あーん」と大きく口を開いた東上の口に、
一瞬のうちにして男の欲望の全てを食べられてしまってはなす術もない。
急激に沸き起こった衝撃にビクンッと腰は揺れ、東上の口の中に突き出す格好になってしまい、
それに気をよくしたのか、東上は最初からバキューム並みに有楽町のモノを吸い上げてきたのだった。
「(ちょっと待て!)・・・っ、・・・とう・・・じょ・・・」
「・・・ん・・・・ふ・・・」
「(まずい!まずいってば!)と・・とうじょ・・・待・・!」
有楽町だってそれなりに経験はある。
自慰だってそれほどではないがする時だってあるし、
真面目が服を着て歩いているような男だが欲望だってある。
東上はどこでそんなテクを身に付けたのか、
同じ男だから感じるポイントを心得ているからなのか、
とにかく舌と唇と、咽の奥で有楽町の欲望を限界にまでたちまちに追い込んでいくのだ。
決してそんなに『早い方』ではないはずの有楽町はすでに出したくてたまらなくなっていた。
「東、上!出る!・・く、口の中・・出しちゃうって!!」
そんなの嫌だろ?と口を離してくれるように説得を試みるが、
当の東上はチラッと上目使いで有楽町を見ただけで口の動きは止めなかった。
それどころか加えきれない部分に手を添え、追い詰めようとしてきているのだ。
「・・・とう・・とうじょ・・・・っ・・・・!!」
いくら真面目が服を着ている男でも限界はある。
快楽に飲まれれば理性は失い、欲望に従順になるのだ。
足の間で欲望を支配している黒髪に手を添えると優しく髪をすく。
すると東上は驚いたのか動きを止め、ビックリした顔で有楽町を見上げてきたのだ。
咥えていたものを口から放すと寝転がっていた有楽町が身体を起こした。
東上が有楽町の肩に手を置くと、それと同時に有楽町が東上の後頭部に手を添えた。
そうして数分の間見詰め合っていたら、
先走りの液体と、東上自身の唾液で濡れててかった唇が小さく動く。
スキナンダ
と。
有楽町は聞こえてきた小さな声に我もなくかき抱くように東上を自分の胸に引き寄せ、
貪るようにてかった唇を塞いだ。
東上の腕も有楽町の背中に回され求め合うようにキスをしあう。
歯茎をなめ、歯を舐め、上顎をそっとなぞる。
舌に舌が触れれば驚いたのか東上の舌は逃げてしまったが、
狭い口内ではたちどころに追いつき絡めとってしまった。
「う・・・んっ・・・・」
「・・・東上・・・」
息継ぎの合間に彼の名前を呼ぶ。
東上は恥ずかしそうに目を逸らすが、すぐに目を合わせ唇を近づけてきた。
応えるように東上の口の周りを舐めると、小さく笑って有楽町は囁いた。
「初めてのキスなのに・・・苦いな」
「!!・・そ、それは・・・おまえの!」
「ああ・・・うん。わかってる。でも・・・苦いけど、甘い」
「!!!??????」
酔いはとうに醒めているのか、何かを反論しようとしていた東上の口をもう一度、
今度は優しく塞いだ。
そして一瞬でキスを終えると、ギュッと抱きしめて目を見ながら聞いた。
「いい?」
「!!!!!」
「東上?」
「・・・・っ、あ・・当たり前だろ!」
「何」が「いい」のか、東上にだって分かってる。
むしろ今夜そうなるように仕組んだのは東上自身なのだ。
素直じゃない自分。
怒りっぽい自分。
奥手の自分。
そして相手も奥手。
確信があったわけではないが有楽町も東上と同じような目で自分を見ているのには気がついていた。
でも奥手同士はなかなか先に進めない。
だからこうして「飲み会」と言う名目で自分から迫ったのだから。
もし、拒絶されても「お酒のせい」と言うことが出来るから。
・・・まぁ、本当は本気で酔っていたのだが・・・だからこそ大胆な行動に移れたわけだが。
と、東上が告白すると驚きながらも有楽町は苦笑した後に満面の笑みを浮かべた。
「東上の方が勇気あるな。俺はヘタレだ」
「・・・ふん!そうかもな!でもそういう奴ってあんがいすごいんだろ?」
「へ?」
何がと聞こうとしたけれども東上が豪快に服を脱ぎだしたので聞くこと適わず。
本当は自分が脱がしたかったのだけれど・・・と思ったが、
また次の機会でいいか、と有楽町も自分の服のボタンを外し始めるのだった。
「・・・・・ん?」
翌朝、目を覚ますと肩口に黒髪がありギョッとしてしまったが、
すぐに昨夜のことを思い出し相手を起こさないようにそっと体勢を変える。
横向きになり、まだ眠っている東上の顔を覗き込んだら目元が赤く腫れていた。
散々泣かせたのだから仕方ないが・・・、と、その時、急に有楽町は顔を真っ赤に染めた。
昨夜、2回目が終わり3回目に突入しようとした時に潤んだ目で東上が言ったのだ。
『やっぱお前みたいな奴って布団の中ではすごいんだな』
もちろんその言葉で有楽町の身体にさらに火がつき、
東上を泣かせたのは言うまでもない。
確かに我慢していた分は爆発したかもしれない。
でも東上だって悪いのだ。
あんなに抱き心地が良いのだから。
と、言い訳を己の心に言い聞かせつつ、有楽町は苦笑いをする。
「俺ってそんなにがっついてたかなぁ??てかムッツリってことか?」
でもそれは東上にだけだよ?と意識のない相手に語りかけながら額にそっと唇を寄せた。
一瞬身じろぎをした東上だが相変らずスヤスヤと寝息を立てながら眠っている。
あまりに気持ちよさそうなのでこのまま寝かせておいてやりたいが、
自分たちには大切な「仕事」があるのだ。
あと30分もしたら起こさなくてはならない。
「起きた時どんな顔するんだろーな?」
真っ赤になるだろうか?
いきなり怒り出すだろうか?
それとも無表情だろうか?
「多分真っ赤になって、目を合わせてくれないんだろうな」
一人苦笑しながら、有楽町はいまだ眠る恋人を優しい目で見つめ続ける。
東上が起きたら真っ赤になってそそくさと逃げ出そうとするかもしれない。
でもそんな東上を優しく抱きしめて、
真っ赤に染まっている顔と同じくらい赤く美味しい唇におはようのキスをしよう、
と、有楽町は東上が目を覚ますまでの穏やかな時間を堪能するのだった。
これから過ごす、二人の楽しい時間をアレコレ考えながら・・・・。
有難う御座いました。
多分、二人は奥手だ!(有楽町は奥手と言うより身構えるタイプ?)
ということで、奥手はお酒の力をかりて大胆になればいいよ、と作ってみた。
お互い好きだけど、なかなかくっつけなかったカップルのベッド事情ってすごいと思うんですよね。
この二人はそんなイメージです。
2010/7/24
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