〜止めた理由〜
有楽町が東上と「そういう関係」になって何年か目・・・。
面倒をかけさせられたいた後輩もなんとかひとり立ちをし、
自分の時間が出来始めたとある夜の有楽町の部屋の出来事・・・。
「・・・・ん・・・んんん・・・・」
中を穿つ有楽町の指の動きに東上の眉が寄った。
「・・・!ごめん・・・、痛い?」
「・・・・ん」
東上はシーツを噛みながら小さくコクンと頷いた。
濡れ方が甘かっただろうか?
確かに自分でちょこっと指を舐めただけであったし、
自分の部屋で「致す」のは初めてなのでつい急いでしまっていた。
有楽町は東上の中を穿っていた指を引き抜き、
その手で中が兆し始めている東上の性器を軽く刺激した。
「・・・!!ふ・・・う、ンンンンッ」
「気持ちイイ?」
すると東上はシーツを噛んだまままた小さく頷いた。
シーツを噛むことで声を押さえているのだろうが、
もうそんな必要はないので有楽町は小さく笑ってしまった。
これまでは有楽町の部屋には副都心・・・『新線』がいたし、
東上の家には越生がいる。
すると必然的に「致す」のはそういう目的のホテルか、
各々の休憩所だったりしたわけだが、
休憩所では声もなかなか出せないので、
東上は有楽町のYシャツを噛むなどして声を抑えていたのだ。
つまりシーツを噛む=声を押えることなのだろう。
「・・・東上・・・、もう声を押える必要ないよ」
東上の噛んでいるシーツをそっと口から取り出し、
かわりに自分の指を東上の唇にもって行く。
そしてなんどか唇を撫で、耳元で囁いた。
「・・・舐めて?」
「・・・・・っ・・・」
「東上が濡らしてくれる?」
「・・・・ぅ・・・・んく・・・」
真っ赤な目が有楽町を睨む。
東上は有楽町のモノを舐めるのは平気なのに、
指を舐めるのは苦手らしい。
有楽町が調子に乗って口の中を掻き回すからだが、
東上はそれが気持ちよくて戸惑ってしまうらしい。
そう、告白された時は有楽町のほうが憤死しそうになったが、
今では自分の指で乱れる東上を見るのもこの好意の楽しみの一つにはなっていた。
「・・・東上、舐めて」
「・・・・んっ」
何度か唇を撫でると、目元を真っ赤に染めた東上がオズオズと口を開いた。
有楽町がゆっくりと指を入れると、待っていたかのように舌が絡んでくる。
・・・と、その時だった・・・、なぜか東上の顔が一瞬だけ歪んだのだが、
すぐにいつも通りの表情になったので有楽町は行為を続けるのだった。
「んぅっ・・・!んぅ!!・・・・っ」
穿つスピードが速くなるにつれ、有楽町の息づかいも荒くなっていく。
背中に東上の爪がたてられ、痛みに顔を歪め、
更に奥を突き上げれば東上の身体が弓なりに撓り、また中が絞まる。
それを何度か繰り返すうちにやがて熱い時は終わりを告げる・・・・。
「・・・・っ」
ズルリと中に入っていたものが抜けていく感覚に東上はブルリと震えた。
行為のあとも有楽町は東上の顔中にキスをしながら抱きしめてくるが、
東上はあることが気になって、いつもならそそくさと着替えてしまうところを、
有楽町の好きにさせていた。
「・・・・お前、さ」
「・・・ん?なに?」
有楽町の手が東上の髪を撫で、頬を撫でる。
自分の頬の位置まできたその手首を掴み、
東上は首を傾げながら「気になったこと」を口にした。
「・・・お前、・・・タバコ始めたのか?」
「・・・・・へ?」
その瞬間、有楽町の鼓動が早まったのがくっついているのでわかってしまった。
これは吸っているな、と鈍い東上でも分かってしまうくらいに。
「・・・タバコ、吸ってんのか?」
「あ・・・えーっとぉ・・・、ははは・・・・」
困ったように苦笑いを浮かべ視線を泳がせる有楽町。
これはもう間違いようがないだろう。
「・・・・お前・・・」
「・・・ごめん」
「・・・や、・・・別に謝んなくてもいいけど・・・」
「東上はタバコを吸う男は嫌い?」
「・・・嫌いでもねーけど」
「でも、気になるんだろ?てか気になるから気づいたんだよな?」
はぁ・・・、と大きなため息の有楽町。
よっこらせと布団から起き上がると、どこからもなくタバコの箱を取り出した。
「副都心も無事に巣立ったし、久しぶりに吸ってみたんだよ」
タバコの箱から1本取り出し、有楽町は口に咥えた。
「それって今までは禁煙してたってことか?
前は吸ってたってことだよな?」
「んー・・・、まぁ・・・、時々?」
「・・・ぜんぜん知らなかった」
「まぁ・・・、流石に『大先輩』の前では吸えないだろ?」
「・・・大先輩?」
「・・・・それにタバコの件でこれ以上、嫌われたくなかったし?」
「・・・・それって・・・」
「うん。東上はさ、俺のこと嫌いだっただろ?」
「そんなことは、ない・・・、と思う・・・・」
と、言いつつも今度は東上の目がどこかに泳いだので、
有楽町は苦笑した。
東上は絶対に有楽町にいい印象を持ってなかった。
それは知っている。
それを持ち前の根気と努力でどうにかこうにかここまできたのだ。
まぁ、有楽町も最初は東上にいい印象はなかったが・・・・。
と、そんなことを考えていたら、
なにやら難しい顔をした東上の顔がいつの間にか迫っていた。
「お前だってそうだっただろ?」
「え?」
「お前だって俺にいい印象はなかっただろ?」
「・・・・・うーん?・・・まぁ・・・?」
「ならお互い様だな」
「・・・あー・・・、そうなるの、かな??」
まぁ、今はこういう仲だし、そうかもしれない、と一人納得していたら、
東上がタバコの箱に手を伸ばしてきた。
「東上?」
「だいたいライターは箱に入れているヤツが多いからな」
「!」
するとまさにその通りで、タバコの箱から1本のライターが・・・。
「なぁ?」
「うん?」
「久しぶりのタバコは美味かったか?」
「・・・・あー・・はははは・・、それが微妙?」
「ふぅん?」
「でも美味しくはないけど、ついつい吸っちゃうんだよな〜・・・、複雑」
「そっか・・・、じゃ、俺も何十年ぶりかに吸ってみるかな」
「は?って・・へ?」
カチッと音がなると、目の前にはライターの炎。
ジュッと焦げた匂いがすると、口に咥えていたタバコに火がついた。
けれど有楽町がそれを吸う前にタバコは口からなくなってしまう。
かわりに有楽町の目の前にはモクモクと白い煙が・・・・。
「!!うわ!!・・・けほっ!!けほ!!」
「ははっ!タバコを吸うくせに情けねーヤツ!」
「・・・・・!!」
煙の正体は東上の吐き出す、タバコの煙。
彼は慣れた手つきで有楽町から取り上げたタバコを吸っているではないか。
「・・・・あれ?東上??」
タバコなんて吸えたの?という目で見れば、
彼は悪戯が成功したような子供のように笑う。
珍しい光景だった。
「・・・まぁ・・昔な・・・」
「・・・吸ってたんだ?」
「・・・・ちょっとだけな・・・、いろいろあって止めてた」
「ふーん?」
「越生がイヤだって言うからさ」
「越生?」
「家の壁が黄ばむし、それに指がマズイって」
「・・・・指がまずい?」
それってどういう意味だろう?と首を傾げれば、
東上は再び苦笑して教えてくれた。
「子供って食べかすをよく口周りにつけるじゃん?」
「・・・・ああ、まぁ・・・」
「越生の口の周りについてた米粒とか取っては俺、自分の口に入れてたんだけど・・」
「うん?」
「ある時、カステラ貰ってさ、その時も口の周りにつけてたから、
俺、いつもの癖でカステラのカスとって自分の口に入れようとしたんだよ。
そしたらそれは俺が食べるって越生が俺の指食べちゃってさ・・・、
で、その時、俺の指を舐めた越生が、『マズイ』って」
「・・・それで止めたんだ?」
「ああ・・・、滅多にないけどまたそういう機会もあるかもしれねーだろ?」
「そうだね・・・、ああ!だからあの時、東上も変な顔をしたのか!」
「あの時?」
「さっき俺の指を舐めた時、東上一瞬だけどしかめっ面したから」
「・・・・!・・・・越生の言うとおり『不味かった』からな。
お前がタバコを吸ったのは直ぐに分かった」
「なるほどなぁ・・・、じゃ、タバコはまた止めないとな」
「?なんでだ?」
久しぶりに吸うタバコは美味しくないのか、
東上はそうそうに傍にあった空き缶に押し付けて消していた。
有楽町は箱の中からまだ吸っていないタバコを取り出すと、
その缶の中に全てを押入れ、タバコを破棄してしまう。
「・・・有楽町?」
何をやってんだ?と目を瞬かせれば、
かれはにこやかな笑顔で答えるのだった。
「だってこれからも俺の指を舐めてもらいたいからね」
「・・・・・!」
「不味かったら申し訳ないだろ?俺も東上に不味い思いさせるの嫌だし」
「・・・・!!!」
直後、恥ずかしさで真っ赤になって顔を伏せてしまった東上であったが、
数分後には再び有楽町の指を舐めているのであった・・・・。
ありがとうございました。
久しぶりの駄文がこんな話しですみません。
ご本家さまの本で有楽町がタバコを昔〜、みたいな会話があったので書いてみた。
彼は今は部屋も汚いらしいですね(笑)
そのへんの話も東上と絡ませて書いてみたいですね〜。
2012/4/8
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