浴衣

 
～浴衣　伊勢崎と大師と半蔵門～

「あれ？」
「あ！はんぞーもんだ！いささき！はんぞーもんだよ！」
「・・・っ、！！だ、大師！！は、走らないで！！」
「はんぞ～も～ん！！」
「伊勢崎ちゃんと大師じゃーん！どしたん？浴衣なんてめっずらしー」
「あのね！今日ね！花火大会行くの！だから浴衣なの！」
「へぇ？そうえば今日、花火大会あったような・・・？」
「うん！あるよ～。ね！ね！はんぞーもん！」
「ん？」
「大師、格好いい？浴衣似合ってる？」
「おー！似合ってるぜ？ブルーの浴衣がいつものつなぎと・・・、あれ？」
「はんぞーもん？どうしたの？」
「・・・いや、ちょっと（浴衣もいつもと同じブルーってことは、
　じんべえみたいにリフォームしたのかな？？）」
「へんなのー！あ、いささきがやっときた！」
「もー！大師！勝手に走っていったらダメだろ？」
「・・・ごめんなさーい」
「（あ、伊勢崎ちゃんはブルーじゃないから大師のもつなぎのお古じゃないのかな？）」
「・・・半蔵門？」
「へ？」
「『へ？』じゃなくてさ！何？？黙っちゃって？？
　∑！！まさか事故を起こしたとかじゃないよな！？」
「え？い、いやいやいや！！違うって！！（だから拳を握らないで～）」
「本当に？」
「本当！本当！！ただ伊勢崎ちゃんと大師が浴衣着てるから珍しくって！」
「ふぅん？・・・ならいいけどさ・・・、
　今日は用事があるから事故なんか起こさないでよね」
「あ、うん・・・、気をつけます」
「・・・・ふぅ」
「（あれ？）・・・・なぁ、伊勢崎ちゃん」
「んー？」
「なんか顔色悪くない？」
「！！？」
「いささき、宿舎でたときから様子が変だったよ？」
「だ、大師！！」
「へ？そうなの？？具合悪いのに花火大会行って平気なのか？」
「・・・別に具合が悪いわけじゃないよ」
「でもさっきだって走らなかったよ？」
「さっき？」
「大師がはんぞーもんに向かって走ったとき」
「！！？」
「そういや伊勢崎ちゃん、大分遅れて到着したよな」
「！！？・・・や、それは・・・、痛！！」
「いささき？」
「！！伊勢崎ちゃん！？なに？？本当に大丈夫なのかよ？？」
「・・・っ・・・、く・・・、だ、だいじょうぶ・・・多分」
「多分って・・・、頭でも痛いのか？」
「頭は痛くないんだけど・・・、うぅっ」
「いささきー？」
「大丈夫って感じじゃねーけど・・、あれ？」
「・・・・っ」
「・・・伊勢崎ちゃん？」
「なに？」
「・・その下駄、随分でかそうだけど？」
「・・・！！そ、それが？？」
「それがって・・・、親指のトコ随分腫れてて痛そうだけど？」
「！！？」
「・・・さっき大師が走ったときに走れなかったのってその指の腫れが原因？」
「！！・・・う、ううううう、うるさいな！！
　別に買うのをリサイクルショップでケチって大きいの買ったわけじゃないからな！」
「・・・・・・ふぅん」
「た、たまたまこのサイズしか売ってなかったんだ！！」
「・・・・・へー」
「勘違いするなよ！」
「・・・・・・・」
「わかった！？」
「・・・・わかりました。
　（つまりリサイクルショップででかいサイズが安かったからそっち買って、
　で、大きくて指を痛めて顔色が悪いってことだよな？）」
「いささき、だいじょーぶ？」
「・・・痛っ・・・、う、うん・・大丈夫だよ～」
「なんなら俺、おぶっていってやろうか？」
「いいよ！恥ずかしいだろ！」
「・・・いい大人が子供よりとろく歩いている方が恥ずかしくね？」
「！！？」
「・・・ま、いーや。日光に殴られたくねーし。
　あ、そうだ・・・、コレやるよ」
「・・・・え？・・・あ、カットバン？」
「（カットバン？？）・・・このバンドエイド、日比谷に無理やり持たされてたやつなんだけど」
「日比谷に？」
「日光に殴られて怪我してももいいようにって」
「・・・あー・・・なるほど」
「いらねー、って思ってたけど、役に立ったじゃん？て、わけでやるよ」
「・・・・あ、うん。ありがと・・・、ちょっとはマシになるかも」
「どういたしまして？俺、貼ってやろうか？」
「・・・それはいい・・・」
「ざーんねん！」
「いささき！じゃ、大師が貼ってあげる！」
「本当？」
「うん！」
「じゃ、お願いしていい？」
「うん！いーよ～・・・、よいっしょっと・・・」
「お！大師、うまいじゃん！」
「うん！にっこーといささきがよく喧嘩するから！
　だから大師、よくふたりに貼ってあげてるんだよ、カットバン！」
「（だからカットバンってなに？）・・・へー」
「こ、コラ大師！！」
「？」
「・・・ふぅ・・・、大師、あまりおうちのことを人様に話しちゃダメだよ？」
「どうして？」
「大人の事情があるんだよ・・、わかる？」
「大人のじじょー？・・・うん！わかるよ！
　いささきとにっこーが布団の上でプロレスするのも、
　大人のじじょーで内緒なんだよね！」
「！！？？・・・・そ、そうそう！そうだよ！！だからそれ以上はお口にチャックだよ？」
「うん！わかった！大師いい子だからチャックする！
　！だっていい子にしてればとーじょーまでいけるようになるんだもんね？」
「！！？・・・あ、・・・うん・・・そうだねー・・・、いつか・・ね」
「大師、絶対にとーじょーまで行く～！！でも今は花火大会に行く！早くいこ！」
「・・・あ、ああうん・・・、そうだね。皆も、もう待ってるだろうし・・・、
　あ、半蔵門、またな？
　・・・それからプロレスのことは忘れてくれていいから」
「・・・ああ・・・うん・・・わかった（日光が怖いし）
　・・・・また明日な。
　（それにしても俺、東武の裏側をまた見ちゃった気がする・・・・・）」


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