任務の帰り道、リーに呼ばれて振り返ったら、いきなり唇をさらわれた。その時、条件反射で口を開けてしまい、顔を離した瞬間に照れたのはおれの方だった。
リーはおれの肩に手をかけたまま、天真爛漫に笑った。
「ガイ先生、大好きです」
鍛えられた筋肉、固く丈夫な骨、伸びた身長。けれど、それ以上に、本当にお前は大きくなった。
だから了承の印に、今度はおれから口付けをした。

木ノ葉へと戻る途中の宿場町で、一泊することにした。もちろん、リーと肌を合わせるために。恋人同士が行くような宿にはさすがに入る気はしなかったが、町の外れ、できるだけ静かな部屋を取った。
粗末だが、しっかりとした造りの寝台の上で、ひとまずおれ達は服を脱ぎ始めた。その横にはもう一つ、寝台があるのだが、今夜は使う予定は無い。
「大丈夫でしょうか? 一泊してしまって・・・」
リーが心配そうに言う。
「かまわんよ。急ぎの報告があるわけでもないし・・・、早く帰りたいのか?」
にやり。おれが笑うと、リーも笑顔でいいえ、と答える。心底嬉しそうに。頬に触れると、愛しそうに手に擦り寄る。
「嬉しそうだな。おれみたいなのとする、って言うのに」
言葉の意味は、特に顔が整っているわけでもない、ただの筋肉馬鹿のおれとよくする気になったな、だった。リーは一瞬、ぽかんとした表情をしてすぐに眉をしかめる。
「先生は綺麗です! ぼくは先生としたいんです!」
むきになって言ってくる。本当に本当に、愛しい存在だよ、お前は。おれは目の前の、リーの傷だらけの体をしげしげと見つめ、
「お前も本当に綺麗になったよ」
またリーはぽかんとした表情を浮かべたが、すぐに意味が分かったらしく、ゆっくりと微笑むと顔を近づけてくる。
そのまま口付けをして、リーの体を撫で上げる。口の中でリーの喘ぎがする。背中の大きな傷を触ると、さらに声は大きくなる。
「傷も感じるか? リー」
聞くと、弟子は視線を横にずらす。
「どうした?」
「あ、ぼく、傷だらけで・・・」
そんなこと。確かに、リーには左手足、背中には脊椎を模したような大きな傷があり、さらには日常の鍛練でこさえた小さな傷が無数に散っている。なにも知らない人が見れば、確かになんと言われるか思われるか、分からない。だが、そんなこと、おれにはどうでもいい。その傷さえ、お前が積み上げてきた夢のかけら。
「・・・お前がそれを気にする必要は無い」
お互い裸なのに、おれはつい、いつものように師匠の顔に戻って言ってしまう。リーも神妙に頷いて、少しの間の後、顔を見合わせて笑ってしまう。
仕切り直しとばかりに、リーの肌に舌を滑らせる。胸までは耐えていた弟子だが、腹の筋肉を吸い上げると、びくりと両腕を胸の前に持って行く。リーの癖で、なにかに怯えるとつい両手を構えてしまうらしい。
「相手がおれでも怖いか?」
それはそうだろうと思う。異性とするならばいざ知らず、同性に抱かれることが万人にあるとは考えにくい。攻める側はたいした違いはないが、受ける側はそうもいかないだろう。
「・・・そんなことはありませんが・・・。ぼく、昔から先生の体に欲情してたかも知れませんし・・・」
途切れ途切れの息の中、リーが言った。そうなのか? 脇腹を舌でくすぐってやると、愛らしい顔で悶える。
「ガイ先生のようになりたい、と思う反面、ちょっと感じてたかも知れません」
「・・・そうか・・・」
おれとしては多少、複雑な心境だがな。そっと、リーの勃ちあがった性器を握る。不意に急所を触られて、けれど、ずっとそうしてほしかったのだと言うように、弟子は目を閉じた。
それを口に含むと、すぐに喘いで腰をくねらせる。おれだって、男の性器を口にする日が来るとは思いもしていなかった。ただ、それがリーのものだと言うだけで、こんなにもすんなり出来ようとは。
「先生・・・、出ちゃいますよ・・・」
「いいぞ」
瞬間、リーの体が波打った。口の中に生温かい粘液と、なんとも言えない味が広がる。ゆっくりと性器から唇を離す。
「せ、先生・・・。タオルか何かに出しちゃっていいですよ」
いやだ。音を立ててリーの欲望を飲み下すと、弟子の目と頬が恥ずかしさで赤くなる。
「さて。次はなにをするかな」
「はい、先生! 次はぼくがします!」
今は修行じゃないぞ、リーよ。言おうとしたが、口を塞がれた。先ほどの己の欲を清めるように、口内を丹念に舐めまわしてくる弟子に、おれは甘んずる。
今度はおれが下になるが、どうしても身長の違いがここにも出てしまう。押し倒されているのはおれなのに、強制している気になるのは錯覚ではない。それでも、リーは懸命におれを満足させようと手を、舌を使う。
「リー・・・」
そっと、顔に手を伸ばして上向かせる。
「なにを泣いてるんだ? リー」
大きな目を半月にさせて、弟子は泣いていた。涙が胸に何滴も落ちる。くしゃくしゃと、小さな顔は笑った。
「分かりません。でも、悲しいのではないですよ」
おれも泣きそうになった。でも、それだけは我慢して、リーの体をきつく抱きしめた。

やっと手に入れた、愛しい愛しい、愛しい存在。
人を好きになることが、こんなにも痛くて甘いなんて、おれも知らなかったよ、リー。

翌日。空は真っ青に晴れ、風も無い。
「早く帰りましょう、ガイ先生!」
「そうだな。さすがにもう一泊すると、ツナデさまにどやされるしな」
重い荷物を背負って、里へと向かう。
おれ達は師弟の枠を超えてしまったわけだが、しかし、
「幸せですよ、ぼくは。今までも、これからも・・・」
朝日に照らされて笑う、お前は本当に美しい。

今までと、これからと、分かりもしない未来を、おれ達は共に生きる。


2007/04/13〜2007/04/14




ああ、師弟最高・・・!!
あれ? なんかネジとかカカシ先生とかテンテンの冷たい視線を感じる・・・。「なんでガイリーだけこんなラブラブなんだ・・・?」的な。
だって・・・・・・、入り込める余地が無いほどラブラブなんですよ、(あくまでも)うちの師弟は。すげぇ! アガペーだ・・・! あのね、もうね、お互いしか見てませんから、この二人は。
あと、最近はガイ先生が本気で「いい男」に見えてしょうがない・・・。ああ、いい男だ・・・、ガイ先生!
これはサイトを始めた頃に描いた漫画を小説に直しました。ま、内容から見て分かるようにバリバリに18禁なわけで・・・、ちょっと絵だとアレだな〜、とか思いつつ・・・。
というか、初期の絵は壊滅的にリーくんもガイ先生も「ひどい」ことになってるので、見せたくない。すごく見せたくない。今、イラスト部屋に置いてるのは、「まだ見れるほう」を残しただけなので・・・。