今回は、いつにも増して表現がストレートです。
なお、「人体改造」等の言葉に、ストレートに嫌悪を感じる方は、読まないほうが懸命です。
「大丈夫」という方のみ、どうぞ。























































乱雑に散らかった和室。
そこに、妙に白く見える布団が敷いてある。上には、二人の人間が乗っていた。
どちらも男だった。線は細いが長い手足を持った者と、華奢な体に大小の傷を纏った者。
二人は、行灯の小さな火を頼りに、互いの肌に口付けをしている。

カカシが軽く膝頭に触れると、リーは微笑んだまま、足を開いた。
拒絶も嫌悪も無く、リーは普段から体格に合っていない着物を翻し、惜しげもなく傷だらけの肌を晒す。
交尾期の動物のように、誰彼構わず尻尾を振る。

その尻尾をカカシが振られたのは、およそ三ヶ月前。

『今日の夜、ツナデさまがお留守なんです・・・』

それは、きっと彼が誰かを誘う時の常套句。囁かれた人間は、色を纏ったリーを拒むことは出来ないだろう。かく言う自分とて、

『どこから入ればいいの?』

と、誘いに乗っていた。
カカシの返事を聞くと、リーは嬉しそうに微笑み、

『来てくれるんですね、嬉しいです。お屋敷の東側の塀に傷がついているところがあるんです。そこから入ってください。すぐ、ぼくの部屋の前ですから。今日の夜、お待ちしていますよ』

カカシはその日の夜、言われた通りの場所からツナデの屋敷に入った。塀をなんなく飛び越えると、広い庭の向こうに仄かな灯りが、障子から漏れている部屋が見えた。足音も無く近寄ると、すぐに障子が開き、リーが顔を出した。
言われるままに部屋へと上がり、茶を出されるなどの歓待を受けた後、当然のようにリーはカカシに体を預けた。カカシも最初からそのつもりだったので、すぐにリーの体を抱きしめ、とりあえずは(顔布越しに)口付けをした。
上半身に纏った着物をはだけさせ、(顔布越しに)唇と指でなぞったリーの肌は、甘い匂いと味を感じられた。
気持ちいいです、とくすぐったそうに笑いながら言うリーに、カカシも笑い返した。
そして、下半身を覆う着物の中に手を入れて、まさぐる。
と、不意にカカシが体を起こし、彼にしては珍しく驚いた表情で、リーを見下ろした。

「ごめんね、あの時は・・・」
今、ぼそりと呟いたカカシの言葉に、リーはいいえ、と首を振った。
「いいんですよ。誰でも、最初は驚きますから・・・」
リーは止まった行為を促すように、足を更に開いた。カカシの眼前に、彼の下半身が露わになった。
リーの上半身は、固い筋肉に覆われて男そのものだ。
しかし、下半身にあるのは、男性器ではなく、女性器に近いものだった。いや、見た目には女性器そのもの。
確認するように、男は指を滑らせる。
睾丸が位置してあったろう部分は、完全に女性の大陰唇のようだ。指の腹に当たった固く勃ち上がったものは、男性が持つ先端ではなく、やはり陰核と言っていい。尿道口を下に辿っても(たどっても)、カカシの指に、濡れた感触は無かった。女性器ならば、男を受け入れ新しい命を産むための穴があるのだが、リーの部分には何も無かった。
「いたい、です・・・」
男性器でも自分を濡らす機能はついているのに、リーの下半身は自ら、誰かと行為をするための準備が出来ない。だから、単に愛撫をするだけでは、痛みを伴う。
カカシは、枕の上、無造作に放ってある小瓶に目をやった。中身は言うまでも無く、潤滑油だ。リーと同様に、甘い匂いと味を持つ液体を、下半身に塗りこむことで二人は快感を分かち合っていた。いや、リーの場合は、何人もの相手と。
「大丈夫だよ・・・」
だが、カカシは小瓶を手に取らず、いつものように笑いながらリーを見下ろした。
彼は小首を傾げながらも、カカシの性器をズボンの上から触る。十分に興奮している男を確認すると、同様に興奮で赤くなっている顔で、あやしく微笑んだ。
「カカシ先生・・・」
囁かれて、男は己をズボンから取り出し、リーの腰を引き寄せた。足が緩く(ゆるく)、カカシの胴体に巻きついた。
「カカシ先生、潤滑油を・・・」
リーが突然、怯えた表情をしてカカシを見上げた。どんなに行為を繰り返そうとも、あの独特の痛みに慣れないのはどうしようもないことだ。
「大丈夫だよ」
男は微笑むと、己をリーの下半身に触れさせた。あ、とリーが驚きとやはり興奮を抑えきれない声を発した。
ぴちゃり、と濡れた音が二人の耳に届いた、ような気がした。男のそこは、多量の液体を滲ませていた。
少しだけ、カカシは腰を動かした。そして、滑らかに動けることが分かるとリーの手を取り、しっかり掴まっているようにと悪戯っぽく笑った。

部屋に、抑えられた喘ぎ声と息遣い、粘着質な音が、数十分鳴り響いていた。

「ね、平気だったでしょ?」
ぐったりと布団に横たわっているリーに、話しかける。うっすらと目を開けた彼は、まだ息が整っていないようだった。
「はい・・・、びっくりしました・・・」
それでも、妖艶に微笑んで体を大儀そうに起こした。腹には、一人分の行為の後がへばり付いていた。リーはただ、汗で体を濡らしているだけだった。
リーは陰核に似た場所をカカシのものに擦られて、何度か白い平原を見ていたようだ。無論、カカシにはそこはどのような場所か、分からない。一生、分かりはしないだろう。
カカシは、部屋に置いてある水差しから少量の水を、衝立(ついたて)式の衣桁掛け(いこうかけ)に干してあった清潔な手ぬぐいに含ませた。
リーの手を取り、汗を拭く。
「あ、自分でしますから・・・」
恐縮するリーに、いいからいいからと言い、汗を拭き続ける。
行為が終わると、途端に小さく見えてしまうリーをカカシは無言で眺める。

『ツナデさまのご厚意です。ぼくがツナデさまと最初に会った時、ぼくは血と肉の塊で、性器は切り取られていたそうです』

あの夜、リーは少しだけ悲しそうな表情だったが、妙に淡々と話し出した。

『お前が男だったから、あんな目に遭ったのならば、いっそのこと、と。けれど、女にさせることもできないと。それでこんな風に、ぼくの体を作り変えてくれました』
『きみは、それで良かったの?』

カカシの問いに、リーは無言で頷き、前髪で顔を隠すように俯いた。

『辛いね』
『そんな言葉、いりません』

突如、リーは感情を露わにした。彼らしからぬ表情で、カカシを睨んだ。

『なぜ憐れむんですか、触れるのをやめるんですか、傷がある人間はそんなに不憫ですか』

リーの絶叫が、部屋にこだまし、そして静かに空気となって消えた。
カカシは数秒、リーの言葉を反芻するように顎を引いて、そして静かに目を閉じた。

『・・・すいません・・・』

我に返ったリーが、謝る。

『そんな風に、いつも誰かに怒ってきたの?』
『いいえ・・・。大抵は、ぼくの下半身を見た直後に逃げ出します・・・。あとは・・・』

リーが言葉を切った。カカシも、聞きたくは無かった。

『じゃあ、なんでおれには怒ったのかなぁ、傷つくなぁ』
『すいません・・・』
『リーくん、そういうことされるとね、期待しちゃうよ? 感情を他人に露わにするのって、そういうことだよ?』

カカシは言って、リーの顔に手を伸ばした。リーが身じろぎをする。

『あ、ぼく・・・、カカシ先生のこと好きなんでしょうか?』

突然すぎるリーの告白に、男は苦笑する。

『さあ、それもどうでしょうね。けど・・・』

「リーくんを受け入れたいと、どうしようもなく思うのは、やっぱり好きなのかもね」
「え?」
驚くリーに、カカシは笑いながら顔を上げた。
「でも、どうしようもなくリーくんと何度でも、何回でもしたいなぁ、って思うのは、やっぱりただの性欲かな?」
「さあ・・・」
リーは微笑むと、カカシの手を取り、甲に舌を滑らせる。
「ぼくは・・・、カカシ先生が言ってくだされば、何回でもしますよ?」
「・・・おれが言ったから、じゃなくてね」
呼気が絡まりあうほどに顔と顔を近づける。なにか呟くように、リーが唇を動かした。隙間を狙って、(顔布越しに)口付けをする。
「ぜひ、リーくんから、したいですって、言ってほしいなぁ? ・・・ツナデさまがお留守の時以外でもね・・・」
カカシの言葉に、リーは困惑した目で返事をした。
「まあ、答えは次回にでも聞くけどさ」
言うと、リーの体を拭き終えた手ぬぐいを、衣桁掛けに戻して、自分も軽く身支度をした。
じゃあ、またね。呟いて、部屋の障子を開ける。
「ええ、また・・・」
リーも呟き、閉められた障子をぼんやりと、見つめ続けた。


2007/10/25



不快感を催された方は、申し訳ないです・・・(まあ、ここまできちんと読んで頂いた方には、無用の言葉でしょうが・・・)。
これ、もともと漫画で、二つの話を無理やりに一つにまとめてみました。なので、幾分、文章に違和感があるかと思いますが・・・。
Lリーくんの下半身についてですが、最初は普通に男性器が付いていたのですが(がっつり描いていた頃が私にもありました)、「うーん・・・」と考え直し・・・。
機能的な面については、かなりの間違いがあるかと思います。あと、肛門についても、人工肛門にしようか、とか考えたのですが、そこまでいっちゃうと更に専門的な知識が必要になってしまうし・・・。
人体改造なんかをしてる男性で、睾丸を取っちゃった〜と軽いノリで撮った画像を見たことがありますが、「ああ、睾丸取っちゃうと、普通に女性器に見えるや!!」とすごく感動したのを覚えています。
ちなみに、うちのカカシさんは肛門は(対男性でも対女性でも)使わない人です。・・・のだと、思うのだが、いずれはリーくんを説得してみてください(おい)。