リーの指は切り傷も多いが、ささくれも多い。そのささくれを自分で引き剥がすものだから、自然、陥入爪が多くなる。
ガイはいつ見ても膿の溜まっている指先を手にとって、ため息をついた。
「・・・痛そうだ」
「そうでもないですよ、慣れれば平気です」
とは言うものの、黄色い指先はそれだけで痛そうである。リーは自分の手を引き寄せると、
「こうやって膿を出すんです」
と、爪と肉の間を広げて見せた。その途端、膿がどろりと出てきた。ほら、とそれを見せ付けられてもガイはどんな反応をしていいか困る。
「やめたほうがいいぞ」
やっとそれだけ言うと、またリーの手をとった。確かに腫れは引くだろうが、自然治癒が一番良いのではないかと思う。
「むしろ、病院に行け」
「先生もネジと同じことを言うんですか」
病院の苦手なリーは、顔をしかめて目を伏せた。あまりにもその表情が嫌そうだったので、思わず笑ってしまった。
本当は痛いくせに我慢して、結局治療するのは悪化してからなのだ。
ならば、とガイはリーの指先に歯を立てた。リーは狼狽するが、陥入爪を押し潰される痛みに呻いた。ガイはお構い無しに次々と指に歯を立てる。
口の中に血と膿の味が広がる。自分のものならば別にいいのだが、やはり人のものとなると別だ。
「美味いものじゃないな」
ようやく口を離すと、リーから膝蹴りを食らった。指先を真っ赤に、そして少し黄色く染めたリーは半分泣いていた。
「痛いです!! なにもそんな風にしなくてもいいじゃないですか!!」
「でも、それで少しは痛みというものが分かっただろう?」
言ってやると、唇を噛んで下を向いてしまった。

もう、ささくれを取るな、陥入爪が出来たら病院に行け、と頭を撫でるとかすかに頷いた。


2006年10月29日