「ほお・・・、これは・・・」
ツナデは素直に、感嘆の声を表情を出した。
目の前には、一人の少女が立って、両腕をツナデに向かって突き出していた。
少女の細い両腕の、手から肘までが淡い緑色に光っていた。
ツナデが手を伸ばして、光に手をかざす。
温かなものが、身体に流れ込んできた。全ての細胞が潤され、満たされるような。気づけば、ツナデは日向ぼっこをする動物のように目を細めていた。
部屋の隅に控えていたシズネが、驚きの表情をしたのが気配で分かった。
「・・・・・・なるほど。良いチャクラだ。これなら、病院で働きたいという申し出も分かる。・・・だがね・・・」
「私はチャクラ治療だけではなく、一般の治療もずっと習ってきました。十分に、お手伝いができると思います」
少女は決然と、ツナデをまっすぐに見て言った。その目に、迷いも不安も焦りも無い。ただ、綺麗な丸い双眸だけが、木ノ葉の里・五代目火影をしっかりと見据えていた。
「・・・よし、分かった。早速、明日から木ノ葉病院に行ってもらうとしよう。シズネ、院長に話をしに行くよ」
「え? あ、はい!!」
「お前も一緒においで」
少女の肩に手を置くと、少女は安堵した表情で頷く。
「・・・それにしても、その服はちょっといただけないねぇ・・・」
確かに、少女は病院の寝巻きを普段着代わりにしていた。
「お前が着ていた服は、こちらで処分してしまったからねぇ・・・・・・」
火影が何やら思案するのを、秘書兼目付け役のシズネが不安そうに眉を寄せる。
ぱ、とツナデが顔を上げた。両目が爛々(らんらん)と輝き、頬が赤く染まっている。
「シズネ! ついでだ!! この子の服も買いに行くよ!!」
「ええ!? でも・・・、そのお金はどこから・・・」
「予算に決まっているじゃないか!!」
「・・・・・・・・・」
やっぱり、と口だけ動かして、シズネはため息をつく。こうやって、里の予算がツナデの娯楽に消えていくのだ。それなのに、諌める(いさめる)ことが出来ない、自分の弱さを呪う。
「あ、あの、私はこれでもいいですから・・・」
シズネの顔を見た少女が、慌てた様子で手を振る。だが、そんなことで折れるほど、火影の意志は脆くない。
「いいんだよ! お前に似合う服を買ってやる!! 膳は急げだ!!」
意気揚々と前を歩くツナデに、二人はただ、不安げな表情で着いて行くしかなかった。
「さあ、シズネ、こまり!! 行くぞ!!」
ツナデは、おととい聞いたばかりの少女の名前を、呼び捨てにして、豪快に笑った。




2008/03/01