単独任務の帰り道。テンテンはのんびりと、木ノ葉の里へと続く、森の中の道を歩いていた。
しかし、ふとした空気の微妙な震えに、足を止めた。
一拍置いて、茂みがざわりと動くと、黒いものが飛び出してきた。
「木ノ葉の忍びだな!?」
その声が聞こえた直後、目の端で光る物を捉えて、テンテンは素早く動いた。
敵(便宜上)は三人。性別は全員、男。手にはそれぞれ、両刃の刀が握られていた。
一番彼女の近くにいた一人が、顔めがけて刀を突き出した。攻撃を仰け反って避け、両腕を軽く振ると、両袖から細身の隠し刀が、鋭い音と共に飛び出た。
短い気合と一緒に、敵がそうしたように刀を突き出す。あっけなく、刃は敵の喉を貫いた。男は潰れた断末魔を上げて倒れた。
それを見た残りの二人が、雄たけびを上げながら同時に刀を振り下ろす。テンテンは、まずは右、次に左と器用に、なおかつ素早く身体をひねって、刃(やいば)をやり過ごして、両腕に力を込めた。
次の瞬間、ばいん、という一種、間抜けな音と一緒に隠し刀の刃(は)だけが飛び出し、男達の口に入った。刃先が少しだけ後頭部から顔を出した。
どさりどさりと倒れこむ音。男たちは、特になんの主張も無く死んでいった。
「なんだったの? 一体・・・」
テンテンは呆気に取られた声を出し、袖の中に手を突っ込む。数秒後、かちん、という操作音がして手を出した。
(あー、もったいなかったかなぁ・・・。この隠し刀使ったの・・・。刃(は)だけは一回使い切りなんだよねぇ・・・)
思って、死体を何度も見たが、男に突き刺さった刃を抜き取ることはしなかった。
(それにしても・・・。殺してよかったのかなぁ・・・。よくよく見ると、この人たち、物盗りでも無いし、ましてや忍びでも暗殺者とか間諜(かんちょう)の類でも無いみたいだし・・・)
確かに男達は、普通の着物姿で、刀も一般に出回っているものだ。
(勝ち目なんかあるわけないじゃない・・・。なのに、この人たちは忍びを襲った・・・)
考えられるのは、家族を殺されたとか里をつぶされたとか、忍びになんらかの恨みを持っていることになるのだが・・・、
(よく、どこの忍びだか分からずに、無差別に襲う人間もいるらしいけど・・・。その割には、木ノ葉の忍びを狙っているような感じだったし・・・)
考えれば考えるほどわけが分からなくなり、
(まあいいか。里に帰って報告だけはしよう)
楽観的に考え、男達の死体をまさぐり、所持品を調べる。火打石や、携帯食料などはあったが、
身元を特定するものは出てこなかった。
(結構、みんな汚れてるし、野営しながらここまで来たのかな・・・?)
とりあえず、火打石と携帯食料を持って帰ろうと、腰につけていた布袋に入れる。
次に、人目に触れないくらいに離れた場所へ死体を動かした。
(これでよし、と。ああ、里に帰ったら、とんかつ定食食べよう)
肉厚のとんかつを思い出すと、すぐに三つの死体のことなど忘れてしまった。



2008/02/29・03/01