瞼に唇を寄せる。
熱い吐息に擽ったそうに身を捩る。
離れぬ様に抱き締める。
小さな身体が心地良い体温を伝える。
重なり合う影を月だけが見ていた。
冬の月
年明けも近付いた寒い夜、廊下に出たは、愛しい人を見付けた。
中庭の茂る草木の中で、愛しい人 ― 夏侯惇が月を見上げていた。
「元譲様」
の声にゆっくり振り返った夏侯惇は、の姿を見ると優しく微笑んだ。
「……どうした?」
傍にきたの髪を撫でながら、夏侯惇はもう片方の手をの腰に廻して引き寄せた。
「何だか眠れなくて……」
夏侯惇の胸に抱かれながら、はそっと夏侯惇の顔を見上げた。
を見詰める眼が、優しく美しい弧を描いた。
唇が額に近付き、僅かに触れた。
それだけで、熱が身体中に回る気がした。
「……元譲様は何をしていたのですか?」
は顔を赤くしながら尋ねた。
「ん……余りに月が蒼白いのでな……」
夏侯惇は、背を屈めの耳に口を寄せた。
「あの月は、蒼白く美しく孤高だ。まるでの様だ……」
耳に掛かると息が、否応無くに夏侯惇を意識させる。
頬に添えられた手が、熱い。
夏侯惇の激情を伝える様で、恥ずかしくて顔を見る事が出来ない。
「元譲様……」
の声が、震える。
「、愛してる…」
頭上から夏侯惇の声が降り注ぐ。
甘く、優しい、の愛してやまない愛しい声。
「……はい……私も、です……」
震えて応じる声。
照れ屋な恋人は、確実な言葉を口にはしないものの、夏侯惇の想いに応じようと必至に言葉を紡ぐ。
「……」
夏侯惇は、を引き寄せると抱き締め接吻した。
は、戸惑いながらも夏侯惇の大きな背に腕を廻した。
夏侯惇の唇が僅かに離れ、次は深く舌を絡めて話さなかった。
月だけが見ていた 二人のこの恋を
+++++
壱萬打記念夢。アンケート第1位の夏侯惇夢。いつもの夏侯惇と違い、若干強引です。
冬なので、一応クリスマス意識の冬設定にしておきました(笑)。
ちなみに最後の1行は、杏里の「夏の月」からです。歌自体は悲恋なのですが、此方は甘々に致しました。
2003.12.18 viax
DLF期間終了致しました。お持ち帰りいただいた皆様、有難う御座いました。
2004.01.02 viax