薄明かりが照らし出すのは、乱れた男の姿。
日々の声音も泡沫の向こう。
今涙して零すのは、欲の混じった嬌声のみ。
女の舌が熱いから、女の掌が巧みだから。
朧な思考は真っ直ぐで、唯女の身体を待ち望む。
翻弄
「もう……ですか?」
男は机上の手を震わせながら、女に懇願の眼差しをむける。
「司馬懿様、言わねば解りませぬよ?」
女は態と名で呼んでやる。
稀代の名軍師司馬懿の痴態を知るのは自分だけと、解っているから性質が悪い。
「……っ!」
歳若い女に良い様に弄ばれて、其れが堪らないとは口が裂けても言えぬと思うのに、彼女に追い立てられれば何時でも結局は言いなりなのだ。
女の手が、巧みに司馬懿の性器を弄ぶ。
達さぬ様に根元を帯で結び、楽しそうに扱いては舐め、舐めては扱く。
その動きに全てを支配されて、司馬懿は机に寄りかかって立っているだけが精一杯だ。
女の様な美しい顔をした司馬懿。
其れを組み敷くのは、女の中でも稀代の美形の。
美しい者は、追い詰められても、追い詰めても美しい。
平素から司馬懿の心を弄ぶ恋人は、寝所の事とて司馬懿の思うようにはならず、あまつさえ良い様に組み敷かれてしまう。
「……もう、解いて……」
司馬懿は途切れ途切れに懇願する。
も解っているのだ。解っていて、あえて言わせているのだ。
然程女を知らぬ司馬懿の身体は、誂えた様にに馴染む。
其れが余りに可愛らしくて、つい加虐的に嬲ってしまう。
愛しいから、より加虐的になるこの性癖に、司馬懿は寧ろ悦んでいる。
とんだ愛しい男だ。
「よろしゅう御座いますよ。」
の手が素早く帯を解き、しかし弄ぶのをぴたりと止めたので、司馬懿は後少しが足りない。
「……!」
「何で御座いますか?」
女は艶然と微笑みかける。
其れに抗う事が出来ないのは、司馬懿自身が1番良く解っている。
「咥えて欲しい…!」
男は咽喉から欲望を搾り出し、懇願する。
乱れた愛しい男の願いに、は満足げに微笑む。
「うぁ!」
司馬懿は予告無く咥えられ吸い上げられた快楽に、堪らず声をあげる。
に追い立てられて、司馬懿は呆気無く白濁とした精液を放つ。
「……気持ちよかったですか?」
は咽喉をごくりと鳴らし、司馬懿に悪戯な微笑を向ける。
「……身体に良くないぞ。」
司馬懿の放った精液は何時もに飲まれてしまう。それが恥ずかしくて仕方ない。
「仲達を咥え込む方が良くないでしょう?」
「何故だ……」
「だって激しいから。」
は司馬懿を机上に押し倒しながら囁く。
司馬懿は瞬時に顔を赤くして俯く。
「もう勃ってますね。」
の手が司馬懿の性器を弾く。其れすら司馬懿には快楽で、小さな声を漏らす。
そんな司馬懿が愛しくて、は事の外優しい眼差しをくける。
「ん……っ」
の身体が司馬懿を咥え込む。
「おいっ!」
慣らしもせず呑み込まれた事に司馬懿が驚いて身体を起こす。
「良いから……」
は少し上ずった声と共に司馬懿の身体を押し戻す。
慣らす間も惜しいほど追い立てられれているのは、とて同じ事。
僅かな痛みを押してでも、司馬懿が欲しい。
身体の上で上下する細い身体に、面白いほど追い詰められてている司馬懿には当分解らないだろう。
そんな司馬懿が愛しくて、思わず微笑むけれど、快楽に悶える司馬懿には見えなかったろう。
「うぁ……ん……!」
司馬懿の弱い所など知り尽くしているから、其処ばかり狙って責める。
「……!」
その事を司馬懿は毎回気にしている。
自分ばかりが気持ちよくて、が詰まらないのではないかと。
何しろ愛しくて堪らぬ女の事、司馬懿とは思えぬほどの気の使い様だ。
「良いから、今日は。」
はそう言うと司馬懿を絶頂に導く。
にとっては自分の快楽など司馬懿の身体を弄べばいくらでも得られるもので、司馬懿さえいれば満ち足りる事なのだ。
「っ……!」
司馬懿の手がの身体を抱き締めようと宙を舞う。
その手を掴み、首に手を回してやる。
「っ……っ……!」
うわ言の様に自分の名を呼ぶ男が愛しくて、はその美しい髪を梳く。
「あっ……」
精液を放ち脈打つ身体を愛しげに撫で、がゆっくりと腰を引き上げる。
「っ!」
子供の様に縋り付いて来る腕を愛しげに撫で、おいで…と囁く。
司馬懿はふら付く身体で寝所の扉を開ける。
窓辺の寝具に倒れこむ様に座った司馬懿は、に眼差しをむける。
其れは、いつも翻弄されてしまう司馬懿なりの愛情。
は薄布の寝間着を羽織ると、司馬懿の身体に寄り添う。
司馬懿は満足げにを抱き上げ、囁く。
「、良い夢を。」
は頷き甘い口付けをすると、司馬懿の身体に全てを預け眠る。
この愛を誰が邪魔できよう。
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初・司馬懿夢。激しく白司馬推奨(笑)。
相変わらず偉そうですが白いです。個人的には司馬懿は真っ直ぐお馬鹿さん。遂翻弄したくなります(笑)。
此方は単発続き物の感じですが、此れからもお付き合い頂ければ幸いです。