唇が熱い。
触れるだけで、先程の接吻を思い出させる。
好きになってはいけないと思っているのに、同じ心で傍に居たいと願う矛盾。
不実な我が心を疎ましく思い、それでも抱き締められた身体が愛しい。
もういっそ全て感情の侭言葉にする事が出来れば良いのに。
恋心
愛されている事に気が付いたのは何時だっただろう。
縋る様な眼差しで、私を見詰める隻眼の猛将。
その瞳に気がついたのは、自分も男に焦がれているからだとは言えなくて、唯その想いを心の底に宿して影として同じ戦場に立つ。それだけで充分だったのに。
男が優し過ぎるから。まるで硝子細工の様に私を扱うから、想いが増してしまう。
眼を射られて、男でなくて良かったとさえ想う心。
秘めた恋で良かったのに、男の想いが余りに素直で感情が暴走してしまう。
――ちょっとは好きか?――
男の声を思い出して赤くなる。
掴まれた腕が熱い。男の感覚の名残を感じる。
私は不実だ。
は静かに立ち上がると、男の部屋へと向かった。
「夏侯惇殿」
扉の向こうで大きな音がした後、夏侯惇が勢い良く扉を開けた。
「……」
夏侯惇は、夜半に来た想い人に戸惑いながらも嬉しさを隠せない。
「入れて頂けますか?」
は室内を見る。必要最低限の物しか置かれていない殺風景な部屋で、だが其れが夏侯惇らしいと感じる。
「あ……ああ」
夏侯惇は招き入れながら、肩を抱いて招き入れ、見詰めあい、抱き締め、口付ける……そんな仲であれば良いのにと思う。。
先程の感覚を思い出す。存外、華奢な身体。とても剣を振り回すとは思えない。この身体を、確かに抱き締めていた。
この腕の中で、確かにキツク軋むほど。
「どうした?」
訊ねながら、甘い乳香の香に眩暈がする。
「先程の無礼を謝りに」
「それなら……」
「そしてきちんとお答えしようと思いまして」
「?」
の眼が、優しい微笑みを讃える。
初めて見る、その穏やかな眼差しに見惚れる。
「私は不実です」
女は若干の戸惑いを見せた後、男を見詰める。
「彼方を愛しています。最早秘めておけぬほど」
その言葉を聞くや否や夏侯惇はを抱き締める。
「真に?」
「……はい」
「幻か?」
「いいえ。現実で御座います」
の腕が夏侯惇の首に回る。
「私は魏国を好きになれませぬ」
優しい眼差しが夏侯惇を見詰める。
「それでも彼方だけは愛しています」
「……ああ」
何も言えなくて、唯愛しくて。
泡沫の様な薄い身体を抱き締める。
「愛している」
抵抗など微塵も無い、甘い口付け。やがて貪る様に唇を噛み、舌を絡める。
夢幻も色褪せる現実。
手に入れたのは隻眼の猛将。
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あーやっとラヴくなってきた。もう早くラヴくしたくて、若干はしょり気味。ラヴラヴ万歳。激甘推奨。