肩を掴む指先が震える。

口付ける首筋が震えている。

怯えて廻された腕、背に触れる掌が熱い。

夢中で深い接吻を繰り返し舌を絡める。

夢にまで見た、愛する女の身体に溺れていく。

初夜

震える身体が余りに愛しくて、夏侯惇は其の腕の中にを抱き締める。

……」

夢にまで見た其の身体は、自分より遥かに薄く頼りなかった。

この身体が戦場を駆け回る事実を思わず疑わさせる程、組み敷いた身体は女の柔らかさと儚さを携えていた。

接吻を繰り返す度、猥雑な音が部屋に響く。

絡めた舌が熱を持つ様な錯覚を何度も繰り返し感じて、頭の端から痺れていく甘い感覚に侵される。

、大丈夫か?」

夏侯惇は己が性急さに呆れながら、が怯えていないか不安そうに見詰めた。

「大丈夫です。元譲ですから、怖くなど有りません」

深遠な黒い眼が、真っ直ぐ夏侯惇を捉えた。

その眼差しに吸い込まれる様に、夏侯惇はまた接吻を繰り返した。

慣れぬ舌が、戸惑いながら呼応する様に夏侯惇の舌を舐め劣情を煽った。

夏侯惇は、戸惑いながらもの帯に手を掛け固く結ばれた結び目を解こうとした。

予想外に手間取りながらも、夏侯惇は何とか帯を解き裾を割った。

触れた肌の感触に、思わず息を飲む。誰も触れた事の無い肌は、夏侯惇の為に誂えたかの様に馴染み虜にした。

夏侯惇は、跪き其の白い脚にそっと口付けた。

は、少し身体を震わせ戸惑った様な視線を夏侯惇に投げかけたが、夏侯惇が優しく微笑むのを見ると安心したのか、恥ずかしそうに再び眼を瞑った。

夏侯惇は、踝に唇を寄せると優しく舐り始めた。は其の感触に身体を震わせたが、夏侯惇は掴んだ細い足首を離そうとはしなかった。

「元譲、擽ったい……」

は恥ずかしそうに身体を捩ったが、夏侯惇が余りに愛しげに優しい眼差しで見詰めるので、見惚れて其れ以上の拒絶は出来なくなってしまった。

夏侯惇は、暫くしてやっと手を離し、同時にの上に被さった。

「……綺麗だ」

は恥ずかしそうに眼を逸らしたが、夏侯惇は微笑み首筋から鎖骨に噛み付く様に舐める様に痕を付けた。

夏侯惇は、柔らかい乳房に熱い掌で触れそっと乳首を口に含んだ。

「あ……」

は嬌声とも付かぬ声を小さな声を上げたが、夏侯惇は片手を繋ぐとその侭乳房への愛撫を続けた。

骨ばった指で優しくの頬を撫でながら、夏侯惇は下腹部へ舌を滑らした。

浮き出た腰骨を指でなぞると、腰が揺らめいた。舌を足の付け根へと滑らせると揺らめきは更に増した。

夏侯惇は其の可愛らしい動きに愛しげに眼を細め、遂にそっと濡れた蕾に舌を這わせた。

「元譲っ!」

は、非難というよりは戸惑いの声を上げた。

「…優しくする。」

握られた熱い手に、は縋り付く様に強く握り返した。

夏侯惇は、片手で性器を押し広げると執拗に蕾を舐った。

人前に曝された事の無い薄紅色の性器は、うっすらと蜜を垂らし始めた。

蕾を口に含み皮を剥く様に舐りながら、夏侯惇は慎重に指をナカへと推し進めた。

充分に濡れているとは言え初々しいナカは、喘ぎ声を漏らしながら収縮して指を締め付けた。

平素涼しげな美しい顔は、すっかり高潮し色の有る眼差しを浮かべていた。

また黒衣に包まれている筈の身体は、華奢ではあったが女性らしい曲線を描き夏侯惇を魅了した。

「大丈夫……か?」

理性を繋ぎとめながら尋ねると、はうっすら微笑んで頷いた。

其れを見た夏侯惇は、蜜を自身の性器に絡める様にしながら入り口に宛がった。

「挿れるぞ?」

もう1度が深く頷き、其れを合図に夏侯惇が侵入した。

其の狭さに夏侯惇は顔を歪めたが、も其の質量に息を飲んでいたみを噛み殺していた。

は呻き声を漏らしながら、愛する男の与える痛みに耐えていた。

夏侯惇は、其の表情を可哀想に思い、愛しくも思った。

「抜く……か?」

は其の問い掛けに首を振り、夏侯惇へ手を伸ばした。

夏侯惇はその仕草に一層愛しさを募らせ、優しく腰を打ち付けながら、ひたすら絶頂を目指した。

「早く、終わらせるから……」

夏侯惇の言葉に、は思わず苦痛に歪んだ顔に少し笑顔を浮かべた。

やがて夏侯惇は絶頂を迎えると、ナカへ精液を吐き出し肩で息をしながらを抱き締めた。

「すまない……」

申し訳無さそうに夏侯惇はの首筋に顔を埋めた。

「痛かっただろう。俺だけ……」

夏侯惇が言いかけると、がその唇を甘噛みした。

「確かに身体は痛いです。でも、其れ以上に心が満足しているから」

は夏侯惇の身体に手を廻し、耳元で囁いた。

「元譲が事の外優しく抱いてくれたのは解りました。だから嬉しいで。」

夏侯惇は其の言葉に深く安心すると共に、嬉しさの余りまた深い接吻を繰り返した。

二人はその侭眠りに落ちていき、其の顔は至極満足げだった。

破瓜の痛みも、流した血も、彼方のものになる為なら怖くは無かった。

私を抱き締める彼方の腕は何時も少し震えていて、私を大切に思ってくれている事を伝えていたから。

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新年を迎える前に書いてしまいたかった山場(笑)。

詳しく書くと唯の痛い話なので、所々端折ってあります。一応嘘臭くならない様には気をつけたのですが…。

やっと此処まで来たか…と個人的には非常に感慨深いです。

この連載はもう少し続きます。今後もお付き合いいただければ幸いです。

2003.12.31 viax