毎日夕方の政務が終わると出掛けて行く父。
戦から帰ってくると、数日姿を見せない父。
数日暇が取れないと、苛々した様なそわそわした様な素振りを見せる父。
しかし何処か幸せそうな父。
一体父は何を隠しているのか,、と孫家三兄弟は常々不思議に思っていた。
千夜夜話 前日
戦から帰ってきた翌日、父は何時もの様に何処かへ出掛けた。
どこか後ろめたさはあるものの、好奇心には勝てず三兄弟は跡をつけた。
父は、私邸近くの上品だが小振りな邸へと入っていった。
「……おい。オヤジは女を囲ってるのか?」
「まさか! ご友人の家では?」
「すっごく嬉しそうだったけど?」
慌ててそっと邸の壁によじ登り中を覘くと、父と女の姿が見えた。
小柄で髪の長い女は、父に髪を梳かれていた。
父は女の髪を梳きながら、その髪や首筋に口付け、女は笑いながら父を諌める。
其処に居たのは見知らぬ男だった。
自分達の知っている父はいなかった。
尚香と大して歳の変わらぬ女に、父は溺れている。
―― 此度の戦は少し時間が掛かった。
―― 大変で御座いましたね。
―― に寂しい思いをさせた。
―― 文台様がご無事ならよろしいのです。
―― ……俺も寂しかった。
父は女を抱き上げ、口付けた。
女は細い腕を父に廻し、幸せそうに眼を閉じた。
それ以上見ていられなくなった3人は、家から離れ少し呆然としていた。
策や権は、それでも父を理解できた。
戦場で戦う自分を待っていてくれる者の存在は支えだ。
しかし尚香は如何思っているのか。
2人は恐る恐る尚香を見た。
意外にも尚香は嬉しそうだった。
「尚香?」
「何?」
「……オヤジに女が居て嫌じゃなかったか?」
「全然。だってあの女の人凄く綺麗! そんな人に愛されてるなんて、やるじゃない?」
尚香の反応に呆れながらも、2人は一安心した。
「しっかし、俺より若そうだったけど、あの人を母と呼ばぶ事になるのか?」
策の一言に、権は青褪めた。
「……私より先に父上が結婚する……?」
策と尚香はニヤっと笑い、可哀想に……と権を慰めた。
いつか紹介される時を、今は静かに待つばかり。
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つまらないおまけ。何れ書き直します。