呉の主は、天も蕩ける様な甘い顔で薄布を被った女を抱いていた。
孫堅は、その侭女を下ろす事無く私室の奥に続く寝所へと入った。
女の細い指が孫堅の髪を梳いた。
孫堅の無骨な指が、女の薄布を取り払った。
― 千夜甘話 ―
十重二十重に薄布を被せた天蓋付きの寝台。
孫堅の寝所に置かれたやけに豪奢な寝台は、を抱く為の揺り籠だ。
孫堅がをそっと寝台へと下ろす。
柔らかな布地がの身体を包み込む。
孫堅の身体がの上に覆い被さり、その重みでの身体が布地へと沈む。
何時もの優しい眼差しとは違う、男の眼をした孫堅と眼が合う。
恥ずかしげに視線をずらすと、孫堅の掌が頬に添えられ、精悍な顔が覗き込んだ。
無造作に縛られた髪がへと零れてくる。
甘い眼差しが掴んで離さない。
「好きだ……」
少し擦れた声で囁きながら、孫堅の顔が近付き啄ばむ様な接吻を繰り返す。
は呼応する様に孫堅の唇を甘噛みした。
孫堅の唇が首筋をなぞり始めると、着物の衿を両手で押し広げられた。
露になった白い乳房を、無骨な指が優しく撫でる。
歳若い男の様に手荒で早急な愛撫ではなく、の事を悦してやろうという思い遣り故の余りに優しい手の動きに、の方が恥ずかしくなる。他の女もこんなに優しく抱いたのだろうかという思いが一瞬の頭を過ぎるのだが、乳首を優しく唇で啄ばまれれば、もうそんな事は考えられなくなる。
片方の乳首を舌先で転がされ、もう片方は指で摘まれる。痛くない程度に摘み上げたり押し潰されたりされれば、唇からは嬌声交じりの吐息しか零れない。
孫堅が赤子の様に乳首を吸い上げ、軽く歯を立てる。痛みさえ快楽を与え、は首を振りながら孫堅の髪を乱す。
孫堅の手が器用にから帯を剥ぎ取り、着物を開く。白い身体は薄く色付き、は恥ずかしそうに手で隠そうとするが、孫堅が其れを許さない。
の指に自分の指を絡めながら、孫堅の舌が腹部を滑り落ちる。
太腿の付け根を舐めながら、揺らめく腰を見て愛しそうに眼を細める。
片方の足を持ち上げ、足を綺麗に舐め上げる。内腿に与えられた感触に、は唯頭を振りながら脚を動かすが、孫堅の腕や身体はそれをもろともせず、脚の指先を一本一本舐った。
「文台様ぁ……」
が遂に懇願の眼差しで孫堅を呼ぶと、孫堅は甘く笑って接吻し、やおらの脚の間に顔を埋めた。
は思わず金切り声の様な嬌声を上げて孫堅の髪を掴んだが、孫堅は軽く眼をやり愛しそうに見詰めながら舌の動きを止めはしなかった。
孫堅はゆっくり下から上へと舐めていたが、髪を掴む力が緩むと、固い蕾を口に含み舌先で転がした。
その急激な快楽には如何する事も出来ず、眼を瞑って喘いだ。
から蜜が零れ出すと、孫堅は指をナカに推し進め柔らかくざらついた内膜を擦り上げた。それだけでもは爪先を強張らせて悦がったが、孫堅はさらにもう一方の手で蕾の皮を剥き少し押し潰しながら素早く擦り続けた。
は最早嬌声を上げ続ける事しか出来ず、蜜の擦れる卑猥な音が聞こえぬくらい鳴いた。
孫堅はの身体を起こし後ろから抱き締める様にすると、蕾を擦る手を止めない侭ナカへ入れる指を増やし、良く知っているの弱いところを攻め立てた。
は背に当る孫堅の性器の高ぶりを感じ、如何にかしてさし上げなくてはいけないと頭では思ったが、手で擦ってやる余裕さえなく、後ろ手に孫堅の首にしがみ付きながら絶頂の嬌声を上げた。
孫堅は満足げに指を引き抜き、の蜜が絡んだ指を舐めた。
は其の卑猥さに思わず俯いたが、孫堅が顎を掴んで上を向かせ、深い接吻をした。
舌を絡めながら接吻をしていると、孫堅が自らの着物を脱ぎ、床へ放ったのが解った。
孫堅の日に焼けた肌が眼の前に曝される。身体には程好く筋肉が付き、とは違う割れた腹筋が眼に入る。
その下にはそそり立った性器が、やはり蜜を零していた。
「余り見るな。」
孫堅が笑いを含んだ声で言う。
「余裕が無いのがバレて恥ずかしいだろう?」
そう言いながら孫堅はを抱き上げ、ゆるゆると性器の上に腰を下ろさせ始めた。
「んっ……」
のナカへと入ってくる性器は大きく、内膜を分け入る様に侵入する。
孫堅はナカの小ささに眼を瞑る。締め上げられ思わず吐息が漏れる。
が小柄な所為か、孫堅が大柄な所為か、少しの余裕もなく入り込み締め上げる苦痛にも似た快楽に、二人はお互いにしがみ付きながら喘ぐ。
がゆっくりと腰を上下させるが、焦らすような其の動きに孫堅は堪らず激しく腰を打ちつける。
は腹部まで達する様な衝撃に叫ぶ様に嬌声を上げる。
孫堅はの腕を後ろ手にして掴み、有無も言わさず快楽を与える。は押し上げてくる快楽に如何する事も出来ず、二度目の絶頂を向かえ、激しくナカを締め上げる。
流石の孫堅もその快楽に耐え兼ね、を押し倒すと激しく腰を振った。は、もう訳も解らぬ侭孫堅の背中に爪を食い込ませて鳴いた。
のナカに精液を注ぎ込むと、またもナカが痙攣する様に収縮し、孫堅は思わずもう一度抱いてしまおうかと思ったが、自分の下で額に汗して息も絶え絶えなを見ると無理もさせられず、唯優しく髪を撫でた。
自分でするという声を無視しての身体を拭いてやり、夜着を着せてやる。
は疲れ過ぎて震える指で孫堅の夜着の帯を結ぼうとしたが、孫堅は笑って諌めた。
眠りに就く為、孫堅がを優しく抱きこむと
「文台様……」
が鳴きすぎて枯れた声で孫堅を呼んだ。
孫堅が呼応する様に優しく微笑むと、が擦れた声の侭囁いた。
「好きです、文台様」
その可愛らしい行為に孫堅は一層愛しさが増した気がした。
「俺もだ……」
唇をそっと重ね合わせ、ぴたりとくっ付く様に抱き合って眠った。
千の夜を彼方と過ごす。
その甘さに神さえ眼を背ける。
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2003.11.19 viax