男は決して美しい訳ではなく、だが惹き付けられる。
口角を上げて笑う笑い方が、癪だが妙に似合う。
戦場でも、閨でも、男の顔は同じ。
唯、激しく一途で廻りを見ていない。
其れは自分も同じなのだが。
三日月
声にならない悲鳴をあげる。喉が詰まって上手く叫ぶ事さえ出来ない。
男の肩に足を乗せて激しく責め立てられるのは、本当は苦手だ。関節が軋む様な不快感が付きまとうし、絶頂を迎えにくい。にも拘わらず男のそうやって抱かれているのは、男にそうやって抱かれるのが心地良いからだ。
男の激しさに息が詰まり、半ば意図的に背中に爪を食い込ませても、男の激しさが緩和される事はない。寧ろ増していく激しさに眼を瞑る。
「……っ……」
絞り出す様に男がの名を呼び、のナカで果てた。男がゆっくりと性器を引き抜きながら、の額に手を当てる。
「……お前は汗をかかぬな」
男は少し寂しそうに笑った。先程までの有無を言わさぬ激しさが嘘の様だった。
「……女は待っているだけですから」
は小さな声で呟いた。
「ん?」
男は聞こえなかったのか、不思議そうにの顔を見た。
「いえ、疲れたので腕枕して頂いて構いませんか?」
は男の腕を撫でながら笑った。
「あ……ああ、すまないな」
男の笑い方は、いつもの優しい少し気弱な微笑みに戻っていた。あの笑い方は矢張り隠しきれぬ残虐さなのだと、は思った。
遼来々、男はそう呼ばれる合肥の戦神だが、女の心は解らない様だった。
女は何時も待っているだけ、男が果てるのを、男が帰ってくるのを、男が死ぬのを。
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連続更新企画おまけの「黒い張遼夢」。
何処が黒いのか書いた私にも良く解りません。寧ろ女の方が黒い様な……でも、張遼は其の黒さを本当は知っている様な。中途半端な話ですみません。
2004.05.06 viax
BGM : T.M.Revolution [SEVENTH HEAVEN]