随分睫が長いのだな、と思った。

決して密毛では無かったが、長い睫が適度に生え揃い、白い肌に影を落としていた。

白い肌、黒い髪、珍しいほど漆黒の眼。普通は黒目と言っても、黒が薄かったり若干茶色かったりするものだが、の眼は不思議なほど黒かった。

吸い込まれそうな黒。

の大半は白と黒で構成されていたが、妙に紅い唇が禁忌の様だった。

紅をさしていなくとも紅い唇を、は好きではない様だったが、張遼は好きだった。

は美しいが、其れは可憐とは言えなかった。野に咲く花の様な控えめな美しさではなく、咲き誇る牡丹の様な大輪の美しさ。其れは美しいが故に人を圧倒する類の物で、故には倦厭されがちだった。

本当はとても控えめで、思った事さえ碌に口に出せやしないのに。

様、お慕いしています……」

一頻り見惚れると、張遼はそう呟いて政務室を後にする。其れが何年も日課の様に続いていた。

「……文遠様」

去ってゆく足音を聞きながら静かに目を開ける。其れも何年も日課の様に続いていた。

少し近付くのがとても嬉しくて、早足なんて勿体なくて出来ない。

+++++

第参弾「張遼」。エラいシンプルな選択肢でした。

相変わらずヘタレ純情。ウチの張遼で遼来々とか幻だ。

2004.05.03 [17:19] viax