劉備は、私室に招き入れた弟達の様子から何か大切な事を話されるのだろうと思った。
張飛は、訳知り顔で劉備の傍に腰掛け劉備に笑いかけた。
関羽は、意を決した様な表情で劉備の正面に座った。
何か言葉を探しているらしい関羽を見詰めながら、劉備は何処かで嗅いだ事ある匂いを感じた。
画材の匂いではないだろうかと、劉備が思った時関羽が声を出した。
− 義兄弟 −
「兄者、実は言わねばならん事があるのだ。」
関羽は、少し赤い顔で真剣な眼差しで劉備を見詰めた。
「雲長? どうしたんだ?」
劉備は相変わらずおっとりとした調子で関羽を促した。
「うむ…実は…想い人を紹介しようと…」
その言葉に劉備は嬉しそうな顔をした。
「そうか! 雲長にも恋人が! 私の知っている方か?」
嬉しそうな劉備の様子に安心しながら、関羽は戸口に呼びかけた。
「。」
劉備が戸口に目をやると、正装のが微笑んでいた。
関羽が立ち上がって傍に寄り、愛しそうに手を取って劉備に紹介した。
「 。私の想い人です。」
珍しく関羽が照れていた。
は微笑みながら劉備に頭を下げた。
劉備の妻の孫尚香の美しさを太陽とするならば、の美しさは月だった。
穏やかに笑うは、線が細く儚い感じが漂い蜻蛉の様だった。
関羽は、そんな彼女が消えない様常に傍に置いておきたい様だった。
劉備は、二人を微笑ましく思い張飛と顔を見合わせて笑った。
「此は美しい方だ。雲長は目が高い。」
関羽は照れながらを見下ろして微笑んだ。
は優しく微笑み返し、そっと関羽の手を握った。
劉備は、微笑ましい二人を心から祝おうと張飛の持ってきた大樽の酒を開けて振る舞った。
飲めないは3人にを見ながら微笑んでいた。
張飛は止め処なく関羽の話をに聞かせ、関羽は恥ずかしそうに笑っていた。
やがて張飛が大樽を抱えて鼾を掻き始め、劉備がうたた寝を始めた頃、関羽はを膝に乗せて抱きしめていた。
「仲が御宜しいんですね。」
は笑いながら関羽の輪郭に接吻した。
「…此処では…」
関羽は恥ずかしそうにを抱き込んだ。
「兄者の天下取りが終わるまで、の傍に居られぬ事も有ると思う。」
関羽は真面目な声で話した。
「我ら義兄弟は誓い合ったのだ。」
は静かに頷いた。
「を愛しているこの気持ちにも偽りはない。」
関羽は真摯な眼差しでを見詰め、やがて深い接吻を繰り返した。
美しき義兄弟の誓い。
甘い空気に気が付いても目を瞑って知らぬ振り。
*****
仲良し桃園三兄弟。無双のおっとり劉備はそれなりに好きです。ちょっと犬ぽくて良い(暴言)。
それよりも何処でも接吻しちゃう関羽達に問題有り。ちなみに気が付いていたのは劉備だけ。張飛は見て見ぬ振りなんて出来ません(笑)。
なんか関羽達は渋いバッカプル(?)って感じで結構好きです。やはり関羽は夏候惇の様に手玉には取れぬらしい(そんな純情夏候惇が好きなんですけどね)。
次のお題は途中暗くなってしまうかもです。ごめんなさい。
2003.12.07 viax