女は、其れは楽しそうに笑った。
周りの者も思わずつられて笑い出してしまう程、心地良い笑い方。
関羽もまた、女のその笑顔をが好きだった。
女の顔が決して翳る事のない様、願わずには要られなかった。
その為に、戦場に立つ。



   − 戦場で −



戦神と謳われる関羽は当然負け知らずであったが、敵に捕まる事を恐れてはいた。度重なる拷問によって自分の精神が脆弱になり愛しい者を守れなくなる事を恐れたのだ。
「まぁ……珍しく弱気なのですね」
は笑ったが、其れは確かに関羽にも自分が持つとは思いもしなかった感情だった。
「そう……弱気だ……」
閨の後、汗ばんだ関羽の躯がを抱き寄せた。
「そなたを愛し、故に弱気にもなった。だが無為な経験では無い」
其の儘臥床に押し倒されたは、首を傾げながら関羽の口付けを受け入れた。

弱き心を知って、強き心の弱さも知った。常に眼前に死があるという事を理解した上で死を恐れると、未だ死ねないという思いが一層強くなった。兄者の為にも、の為にも、自分は未だ死ぬ時期を迎えてないと思った。



戦場で思い出す兄者の顔は優しく穏やかだ。
だが、の顔は常に自分を睨み付けている。笑顔を見たいと思い、だからこその元へ帰る事が出来る。







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愛しい人々だけが、誰かを生かす事が出来る。

2004.06.09 viax
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