長い睫毛は決して密毛に生え揃っている訳ではないが、其れだけに一本一本の長さが際立っている。
そっと瞼に触れると、僅かに瞬きをした睫毛が指を擽った。
青白い肌は、月明かりで一層妖しい艶を見せている。
いけない事とは解っていたが、関羽は思わず瞼に唇を寄せた。
睫毛を啄ばむ様に口付けると、は眠ったまま擽ったそうな表情を浮かべた。



寝顔



「起きているのか?」
余りに可愛らしい顔で擽ったがるので尋ねてみたが、矢張り寝ているのか規則正しい呼吸音がするだけで返事は無い。
「……寝ているのか」
関羽も誘われて笑顔を浮かべながら、の長い髪を指で梳いた。
眠っているは幼子の様で、何時もの儚げな、何処か寂しそうな雰囲気は影を潜める。少なくとも、関羽の傍では安心して眠る事が出来る、其の事実が彼の心も又安心させる。一人寝の夜、何か足りない気がして何時もより眠りが浅いのは、この寝顔が足りない所為だと思う。
「そなたが何時でも安心して眠れるような時代……其れを、拙者や兄者が作っている……だから寂しい夜も耐えられるのだ」
誰に言うでもなく関羽は呟き、の瞼に接吻をする。矢張り起きぬ儘、其れでもが微笑んだような気がして、関羽は気を良く眠りに付いた。


其の関羽の穏やかな寝顔を見ることが出来る人間も、また以外に有り得ないのだ。








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傍に居る誰かを、貴方だけが慰める事が出来る。貴方だけが愛する事が出来る。

2004.10.06 viax
BGM : LONDON SYMPHONY ORCHESTRA [Dvorak : Symphony No9 'FROM THE NEW WORLD']