離さないで欲しいと願ったあの日から、この手はずっと繋がれた儘。
大好きな大きな手は、私を守る鉄壁の揺り籠。
この手の中で、私はこの人に相応しい女に成りたい。
− あ、肉まん −
張飛の屋敷には、不似合いな幼い女の子が居る。名をと言い、張飛が戦場で拾った子だった。強面の張飛にも拘わらず良く懐き、一緒に昼寝などしている姿は仲睦まじい兄妹の様だった。
張飛もが可愛いらしく、遠征の度高価な土産を買っては喜んでいた。
しかし其の溺愛振りは些か度が過ぎており、劉備や諸葛亮は時たま眉をひそめる事があった。
例えば、比較的安全だと思われる遠征には幼いを連れて行ったりする。万一の事があったら困るので必ず誰かが止めるのだが、張飛が聞き入れる事はなかった。
「翼徳、大好き」
未だ幼いは、にこにこ笑いながら張飛に縋り付く。
「ああ、俺も好きだぜ」
相好を崩しての頭を撫でる張飛の眼差しは、信じられないほど優しい。其の眼差しは、愛する者を見詰める類の物だった。
何時しか、誰もが張飛はを娶るつもりなのだと解った。
張飛の愛情は底を知らず、だがは其れに溺れることなく健やかに育っていた。
「土産だぜ」
張飛が放って投げた包みを、が喜色満面で覗く。
其処は戦場ではなく、穏やかな日常だった。
一口食べた後は、必ず「熱いっ」と吃驚する。
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肉まんって思いの外肉汁が熱いですよね。
2004.05.10 viax