眠れないのだ。
私の隣で寝息を立てる男が愛しくて。
朝になり眼が覚めれば、腕枕をしていた所為で痺れた腕を擦る癖に、止めはしないのだ。
私の腰に廻された腕は、眠っている間さえ放そうとはしない。
私は決して逃げないのに…。
― 不健康? ―
早朝、司馬懿は腕の痺れにブツブツ文句を言いながらもの頭をそっと枕へと下ろす。
「可愛らしい顔をしよって…」
平素司馬懿を翻弄しているとは思えぬ可愛らしい寝顔に本来の年齢を見た気がして、そんな女を夜毎欲する自分に赤くなる。
司馬懿が唯一全身全霊を傾ける存在。
其れが若干16歳の少女とは…司馬懿は思わず自嘲する。
そっと髪を撫でてやれば寝顔も微笑むようで、司馬懿は自分がこの少女にどれだけ溺れているかを改めて思い知る。
衣服を着替える間も、少女は規則的な寝息を立てる。
着替え終えた司馬懿は、を起こす為床へと近付く。
「、朝だ。」
静かな声で呼び掛ければ、少女はうっすらと眼を開ける。
「…おはよう、仲達。」
声が擦れているのは、昨夜鳴き過ぎた名残なのか。
「着替えねば…」
司馬懿はを抱き起こし、腰掛けさせる。
「此れで良いのか?」
司馬懿が着物を広げて見せると、は頷き司馬懿に向かって手を広げる。
司馬懿は愛しそうにを胸に受け入れ、壊れ物を扱う様に優しく立たせる。
の白い首筋には、司馬懿の激情がはっきり刻まれており、それを見た司馬懿は一人赤面する。
「仲達?」
が不思議そうに司馬懿に声をかける。
「ん…何でも無い。」
の着替えをゆるゆると手伝いながら、その身体の薄さに不安になる。
「。」
「ん?」
「お前は少し痩せすぎだぞ?」
「んー…気をつけます。」
からすれば、顔色の悪い司馬懿の方が心配なのだが。
執務室では、曹操と司馬懿が今日も揉めている。
「相も変わらず飽きないものだ。」
呆れ顔の夏侯惇がに話し掛ける。
「お元気です事。」
は相変わらず笑っている。
「あんなに怒っていては健康にも良くないぞ。寝不足故ではないのか?」
「そうですわねぇ。」
夏侯惇は知らない。
あの人が存外健康な事を。存外良く眠る事を。
私が彼の寝顔に見惚れて碌に眠れない事も。
誰も知らない。私がこの顔色の悪い男に存外惚れているという事を。
「?」
夏侯惇が訝しげにに声を掛ける。
「はい?」
は何も無かったかの様に微笑み返す。
「ぼーっとしておったぞ。如何致した?」
「いえ…不健康だなぁ…と。」
は含み笑いで応えた。
「司馬懿か? お前も思うか。」
「いえ…」
の不敵な笑みに夏侯惇は不思議そうな顔をする。
司馬懿を思って眠れぬ私の方が、存外不健康だろう。
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意味不明? 支離滅裂? 本当にすみません。
甘めにしようと頑張ったのですが…最後惇兄様との会話ばかりですね…。
まぁヒロインもラヴい所を見せたかったのですが、上手く入ったでしょうか?