感情の起伏が乏しいのは、軍師にとって喜ぶべき才だ。
私は軍師としての資質を仲達に見出され、此処に居る。
だが私は無表情なだけで、本当は悲喜交々な感情をこの皮膚の下に隠しているのだ。
恋愛においてすら、上手く感情を示す事の出来ない私は、本当は脅えている。
いつか仲達が、この腕を擦り抜けて行くのではないかと。



   ― イジワルな愛情表現 ―



事の始まりは、張将軍・夏侯将軍・徐将軍の話を聞いてしまった事だ。
 ― 殿は司馬懿殿を如何思っていらっしゃるのでしょう?
 ― 想っているのではないか? 何時も傍に居るし
 ― しかし、其れにしてはつれない態度でござらんか?
 ― 戯れに過ぎぬと?
 ― そんな冷たい殿も美しい!
戯れに司馬懿を愛する。
そんな事ができればどれだけ楽だろう。
あの顔色の悪い男は、私の感情の一切を支配するほどなのに。
素直になれない私の心は、如何したら解って貰えるのだろうか。



「仲達、私を愛していますか?」
突然の質問に司馬懿は眼を白黒させる。
「なっ…何を突然?」
「私はな、彼方を戯れで愛しているのかもしれませんよ。」
態と意地悪い言い方をする。
司馬懿は少し眉を顰め、羽団扇を一振りした。
「馬鹿らしい。」
思いもよらぬ言葉。
司馬懿の手がの髪に伸び、口付ける。
「…仲達?」
「お前は…心底惚れておらねばこの様な事させぬ女だ。」
自分の心を見透かす男。
「…さすがは司馬八達。」
余裕の微笑みに隠した肯定。
「ふっ…嘘の付けぬ女だ。」
司馬懿はその侭を抱き抱え、そっと床に押し倒した。



後日またも似た様な会話をしている張コウ達を見掛けた司馬懿は、薄笑いを浮かべながら話を聞いていた。
「司馬懿殿は殿の愛情を物足りないと思われないのですか?」
張コウの言葉を司馬懿は鼻先で笑った。
「足りぬなど…あれは愛情深い女です。」
「そんなものでござるか?」
不思議そうな徐晃に、司馬懿はさらに不敵な笑みを浮かべる。
「あれは、素直でないのが愛情表現のようなものですから。」
それだけ言うと、司馬懿は3人を放って執務室へと向かった。
後に残された3人は、司馬懿の言葉通りなら、は司馬懿にベタ惚れではないか…と赤い顔で騒いでいた。



お子様な彼女。好きな子にイジワルするのが愛情表現。







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またも意味不明ですか? てか消化不良ですか?
うーん…やっぱ司馬懿視点の方が楽です。
今回も実は司馬懿にベタ惚れなヒロインのお話でした。