ご機嫌斜め
2004.10.11


「やだっ、あのTシャツがいい。」

寝起きが悪い拓斗は、朝いつだって機嫌が悪い。
いつも朝飯が気に入らないだの、起こし方が気に食わないだの難癖をつけては健一を困らせる。

「だから、あのTシャツは洗濯中だっていってるじゃないですか!」
「やーだっ!!」

拓斗は癇癪を起こして、健一が用意したシャツを投げつける。
しかし、健一はそれを受けとめ、わざと優しい声を作って宥めるが、拓斗は膨れっ面のまま手足をばたつかせたままだ。
"そろそろ本気で怒らないと遅刻しちゃうな。"

「いい加減、服着て下さい・・・怒りますよ。」
「う゛−。」
拓斗はまるで動物のように威嚇の声をあげている。
健一はため息を一つついて、からかうように拓斗を抱きかかえる。

「そんな裸で、何?襲われたいの?」
「ちげぇよっ!ばーか、ばーか。」
「じゃあっ、さっさと服着なさいっ!!」
「やぁーだぁーっ!!乾かせよぉー。」

「拓斗っ!!」

拓斗のあまりの我侭に、普段は温厚な健一の中で何かがキレる音がする。
健一の平手が頭をぺチンと叩き、先程投げつけられたシャツを頭の上に落とすと、「う゛ー」と唸りながら拓斗がグズグズと涙を流す。

"・・・仕方ないな。"

健一は頭を抱えつつも、まだ乾ききっていないTシャツをアイロンで乾して、未だ機嫌の悪いままの拓斗に投げつけた。

「あ゛りがどぉー。」
やっと機嫌が直った拓斗に抱き付かれ、怒っているはずなのに、健一はつい微笑んでしまう。
"俺って甘いよなー・・・。"
と思いつつ、健一は涙と鼻水でグシャグシャになった拓斗の顔を拭いてやる。

こうして今日も健一の過酷な一日が始まった。

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