雨がきらい
2004.11.20


憂鬱な得意先回りが終わったと思ったら、ビルの外はバケツをひっくり返したような土砂降りだった。
「うわっ・・・すげぇ雨・・・。」
同僚の坂井が顔をしかめて真っ暗な空を見上げた。
「この辺コンビニあったかな。」
少しくらい濡れても今日はこれで直帰の予定だから心配は無い。
止みそうにも無い雨を忌々しく思いながら、祐介はコンビニまで走って傘を買うかと諦めた。

「ウチくるか?すぐ近くなんだ。」
「えっ?」
激しい雨音に掻き消されないように、坂井が耳元で大きな声を張り上げる。
「どっちみちコンビニ探して傘買っても、びしょ濡れになるだけだろ。」
「悪いな。」
少し迷ったが、結局その提案を受け入れて走り出す坂井の後を追いかけた。

ずぶ濡れになりながら坂井の部屋に辿り着くと、雨を吸って重くなったスーツを脱ぎ捨ててトランクス一枚の格好になる。
急いで服を脱ぎ捨てる様子が抱き合う前の光景に似ていて何だか急に恥かしくなった。

「あー、パンツまでびしょびしょ。」
後ろを向いたまま下着を脱いだ坂井の姿に目を奪われて動きが止まった。
足の間からチラリとぶら下がっているモノが大きく揺れている。
「何、ボーとしてんだよ、ちゃんと拭かないと風邪引くぞ。」
坂井は呆然と止まったまま手の中にあるバスタオルを奪い取り、祐介の頭を掻き回すように乱暴に拭いた。
「お前細いなー、色白いし・・・。」
上から降り注ぐ優しい坂井の声に顔が熱くなるのを感じた。
「やっ止めろって、坂井っ・・・。」
「ホラ、今風呂沸かすからパンツも脱いじゃえよ。」
坂井がからかうように下半身に張りついた塗れた下着に指を引っ掛けると、祐介は慌ててバスタオルを腰に巻いて下着を下ろした。

坂井といると何だか変な気分になる。
あの広い肩に抱かれたら・・・さっきからそんな事ばかり考えてしまう。
湧きあがる感情に頭を振って祐介は自分自身に駄目だと言い聞かせる。
坂井は会社の同僚なんだから。
でも・・・。
祐介は熱いお茶をすすりながら昂ぶった感情を抑えつけた。

「風呂沸いたから先入れよ。」
「いいよ、坂井が先で。」
「遠慮すんな。」
半ば強引に勧められ、祐介は丁寧に身体を洗い流しと湯船に身を浸した。
溜息をひとつついて目を閉じると、静まり返った浴室の中にまで雨音が響いている。

子供の頃から雨が嫌いだった。

共働きの両親はいつも留守がちで、身体があまり丈夫じゃない祐介は、いつも雨の日になると一人部屋の中で過ごしていた。
静まり返った部屋に雨音が響くと、このまま誰も帰ってこないような錯覚に陥った。
今でも雨音を聞く度に子供の頃の嫌な感情が蘇る。
纏わりついた感情を洗い流すように熱い風呂に身を沈めると、嫌な想い出と共に身体の疲れがじんわりと湯船に溶け出していく。

何やってんだ俺・・・。
情緒不安定なのは雨のせいなのか、今日は日頃ひっそりと潜んでいる自分の中の感情や欲望が暴れるようにドアを叩く。

ガラリと風呂のドアが開いた音に驚いて顔を上げると、そこには一糸纏わぬ姿の坂井が立っていた。
下半身に自信があるのだろう、坂井は前を隠そうともせずに、そのまま浴室に入りシャワーで身体を洗い始める。

「なっ・・・何だよ坂井。」
「何って、俺だって風呂入らなきゃ風邪引くだろ。」
「だからって恥かしいよっ・・俺、後でいいって言ったのに・・・。」
「別にいいだろ、男同士なんだから、気にすんなよ。」

気にするなと言われても。
いけないと分かっていながら、先程はチラリとしか見えなかった下半身に視線が釘付になる。
股間にぶらさがった長いモノは重量感を感じさせ、大きく張った先端がブラブラと揺れている。

欲しい・・・。

ゴクリと喉を鳴らすと火がついたように全身が熱くなり、その熱は身体の一部に集中し、祐介の股間を硬く変化させていく。

祐介の視線に気付き、坂井は自分のモノを軽く摘むと悪戯が見つかった子供のようにエヘへと笑う。
「そんな見んなよ。」
そう言って片手で股間を隠したが手の隙間からはみ出たモノは僅かに膨らんでいるようだった。

そのまま簡単に身体を洗い流すと、祐介を浴槽の隅へ追いやり、ザブンと勢い良く風呂に浸かった。
「うぁー温まる。」
祐介は身体の変化に気付かれないように身を縮ませるが、狭い浴槽の中でお互いの身体が密着すると益々下半身が硬くなっていく。
「あんま、くっつくなよ。」
目を閉じて必死に別の事を考えるが、さっき見た坂井の裸が目の奥に焼き付いて離れない。
「何意識してんだよ。」
「別に意識なんて・・・。」
祐介の心を見透かすように、坂井が足の間に挟んだ硬くなったモノに手を伸ばした。

「岡田・・・。」

坂井の顔が近づき自然と唇が重なる。
彼にそっちの趣味がある事は日頃接していてなんとなく気付いていた。
意識はしていたものの、確証がある訳では無かったから、祐介もあくまで同僚として接する事に徹底していた。
坂井もやはり同じだったのだろう、祐介が手を伸ばして捕まえたソレは信じられない程に大きく張り詰めていた。

一度触れ合うと抑えていた欲望が爆発し、狭い浴槽の中で抱き合いながら舌を絡めて、お互いを激しく求め合っていく。
坂井の舌先に胸の先端をくすぐられ、軽くかまれただけなのに漏らした祐介の甘い声が浴室に響き渡る。

「んっ・・・自分で洗うから、先に出てて・・・。」
祐介耳元で囁くと手の中の坂井のモノが一回り大きくなった。
「俺・・・我慢できねぇ・・・早く来てくれよ。」

浴室を出ると坂井は待ちきれないといった様子で祐介の全身に舌を這わせながらベットに押し倒した。
「やっ・・・坂井・・・あんっ・・・待てって・・・。」
祐介の静止も振りきり、すっかり興奮している坂井は、明かりも消さずに熱くなった祐介の中心に破裂しそうなモノを沈ませる。

「んっ・・・ふぅっ・・・入った・・・岡田って入れてても勃つんだな。」
「ぁっ・・・何で・・・?。」
「前の男がさ、入れると萎えちゃう奴でさ、なんか感激・・・。」
ゆっくりと腰を動かしながら、祐介の身体に舐めるように観察をする。
「ばか・・・ぁぁっ・・・こんな時に・・・ぅぁっ・・・前の男の話し・・なんかっ・・・。」
「あっごめん・・・。」
はっと気付いてシュンとした坂井の腰の動きが止まってしまう、すでに坂井のモノで満たされた祐介は堪らずに腰を押し付けた。
「いいから・・・・ぁっ・・・もっとっ・・・そっ・・・ぁっ・・・ぁぁっすげっ・・・。」

坂井に激しく突き上げられながら、雨音も痛みも嫌な想い出も全てが祐介の中から掻き出され、後に残るのは激しく疼く快感だけになった。
中を突き破る程に硬くなった坂井自身は次第にに熱を孕み、先端が痙攣するように膨らんでいく。

「ぅぁぁっ・・・岡田っ・・・お前の中・・・・はぁっ・・・すげぇよ・・・。」
僅かに身体を震わせるとギュッと目を閉じて激しく腰をぶつけられる。
坂井の限界が近づいている事を察した祐介は、先端から溢れた液体で塗れた自分のモノを扱き、もうすぐ来るであろう坂井の絶頂に備えた。
「ぁぁぁっ・・・祐介っ・・・・俺・・・もう・・・。」
「ふぁっ・・・ぁっ坂井っ・・・イっていいからっ・・・。」
「はっ・・・・あぁっ・・・ぁぁぁぁっ・・・・・ぅぅっ・・・・。」
泣いているような声を上げ果ててしまった坂井の吐き出したもので中が満たされると、それに合わせたように祐介自身も溜め込んでいた快感の固まりを吹き出して気を失った。

「雨・・・止んだみたいだな。」
坂井の温かい肌に包まれて目を覚ますと、雨はすっかり上がっていて暗くなった窓の外には星が輝いている。
「んっ・・・もう一回しよ・・・。」
耳元で「綺麗だな」と囁く坂井の顔をじっと見つめて唇を重ねると、ねだるように甘えた声を出した。


子供の頃から雨が嫌いだった。


でも今日からは・・・・。
まだ昂ぶったままの坂井を全身で感じながら、雨の日も好きになれそうだと心の中で呟いた。


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