breaker =調教師=2
2004.12.25
通称ファームと呼ばれるここでの暮らしは思った程悪いものでは無かった。
日々の暮らしはバランスの良い食事と筋力トレーニング、そして3日に一度行われる商品となる為の調教。
排泄や自慰行為さえ管理され人間としての尊厳を奪われてさえいなければ居心地は良かった。


何度もシンに抱かれ商品になる為の調教を受ける時、屈辱よりも自分の愛撫に全く反応しない事に焦っていた。
このままでは廃棄品扱いになってしまう。
男同士だから相手を悦ばせる事が容易いと思っていたが、何度もシンに抱かれてそれが間違いである事を光輝は身を持って知る事になった。
「……っ………」
微かに触れる唇が焦らすように全身を撫で曖昧な快感がゾクリと背筋を這った瞬間、光輝は抑えきれない快楽に身を震わせて顔を背ける。
熱を孕んだ中心から堪らずに溢れた液体がシンの愛撫に反応して床に零れた。
「いいか、女を抱いてた頃は忘れろ」
シンの指が光輝の中に入り込むと先程までのもどかしい程繊細な愛撫から一転し、敏感な胸の先端を集中した強い刺激に甘い声で溜息を漏らした。
自分の身体が日々シンを受け入れるようになるばかりか、シンの肌が恋しいと思う夜さえある事に光輝は苛立ちを覚えた。
しかし反発すればする程に身体はシンを欲しがり、抱かれる度にその熱量は膨らんでいく。
「……っ……テメェ……」
ついこの間まで目的も無く、ただ街をフラついていただけの鈍く曇った瞳にはギラギラと刺すような光が宿りシンを睨みつける。
「チンピラの割りにはいい目だ」

「……お前等のおかげで俺にも生きる目的ってモンが出来た……」
喘ぎ声を噛み殺しながら吐き捨てた言葉は震えていた。
「お前らをぶっ殺してやる」
「それは楽しみだ」
シンは全く表情を変えない代わりに光輝の中を掻き回している二本の指で入口をぐっと広げると硬く尖った先端を口に含んだ
「ぅっ……ぁぁっ……」
シンの攻撃的な舌の動きに歓喜とも痛みともつかない声を上げて涙を流す。
コンクリートに囲まれて静まりかえった部屋に光輝を掻き回す指と湿った唇から漏れる音だけが漏れる。
その音に合わせて熱の篭った吐息が混ざり、耳の奥でうるさい程に高鳴る鼓動が光輝の思考を真っ白に染めていく。
光輝の熱を飲み込んだシンは唇は吸い付くように絡みながら上下に刺激を加速させていく。
「イク……」

光輝の吐き出したものをゴクリと飲み込むと中を掻き回す指を引き抜かれ、代わりに熱く膨らんだモノで埋められていく。
「……ぁぁっ………」
「覚えておけよ」
射精後の余韻に震えている光輝を容赦無く攻め立てるシンの動きに悲鳴を上げる。
余裕も無く、ただしがみ付いて歓喜の声を上げるだけの光輝はシンに唇を噛まれ理性を取り戻した。
全身を研ぎ澄ませながらシンの動きを追っていくと、ただ強弱をつける訳では無くシンの愛撫には流れるような旋律があった。
柔らかく繊細な旋律は徐々に激しさを増して情熱的な動きで相手を溺れさせる。
快感の旋律に溺れていると突然の転調にまた声を上げてしまう。
突き上げられる度に二人の波長が重なっていくような錯覚に飲み込まれ、自我さえも奪われるような錯覚に陥った。


初めて光輝を抱いた時、全身を溶かしてしまうような熱い舌の動きに翻弄された。
あれは偶然だったのだろうか。
シンは苛立ちと共に激しく突き上げて光輝を泣かせる。
あれから数回の調教を行っているが、シンを震い上がらせた光輝の力は眠ったままだ。
あの力が引き出せたら……。
高く売れる商品を育てれば当然シンに対する見返りも大きいものになる。
あの時、久しぶりに原石を見つけた事の喜びと経験した事の無い快感に暫く震えが止まらなかった。

「……ぁっ…うぁっ………」
光輝の中心は先端が震え早くも絶頂が近づいている事を知らせている。
腰の動きを減速して根元をキツク握ると光輝は整った顔を歪ませて喘いだ。
「この程度で終わるのか?」

すでに意識は朦朧としているようだが、光輝は繋がったままの姿勢で起きあがるとシンに抱きつき唇を重ねた。
「もうイカせてくれ……」
舌を絡ませながら涙混じりの切ない声で懇願すると中に入っているシンを掻き回すようにゆっくり腰をくねらせた。
重なった唇から漏れる泣いているような喘ぎ声が耳元をくすぐると絡まる舌にかすかな変化を感じた。
確かめるように貪るとあの時と同じように全てを溶かすような熱に変わる。
「ぅっ……っ……もっとだ………」
汗ばんだ髪の毛を掴んで食らい尽くすように光輝の舌を探ると、それに応えるように包まれた中心も溶かされていく。

"これを待っていた。"

舌だけでは無く飲み込んだシンの中心まで溶かすように熱を上げながら吸い付くようにグイグイと締め付ける。
上にまたがった光輝が僅かに腰を動かすだけで今にも零れそうな快感に歯を食いしばって耐えるが、焦らされ続けた光輝は速度を上げて絶頂を欲しがった。
「ぁあっ……イカせろよ……シンっ……」
堪らずに根元を掴んだ手を緩めて扱くと、さらに熱を増しながら激しく腰を動かした。

「ぁぁっ……ぁぁあっ………」
氷のように冷たく感情を閉ざしたシン、未熟なあまり熱い感情を持て余していた光輝。
この瞬間、対象的な二人の波長が重なった。
込み上げる快感を最大まで高め、すぐにでも吐き出したい衝動を抑えながら激しくぶつかる。
音も光も消え去りお互いの体温のみを感じて快感と一つになっていく。
声を上げ全てを吐き出した後も無意識に抱き合っていた。
荒い呼吸と激しく打つ鼓動の音で徐々に自我を取り戻すと目の前にある顔に目を背けた。


光輝にとってシンは憎悪の対象であり、彼を殺す事が生きる目的となった。

シンにとってはただの道具過ぎなかった光輝、しかし彼の中で眠っていた力を覚醒させた事により二人の運命は大きく歪み、やがて全てを失う事になる事にこの時はまだ気付いていない。

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読みきりのつもりで書いた調教師ですが、結構好評だったので五話くらいで完結できればいいなと思いながら続きを書いてみました。
今回のラストでデカイ伏線はってますが、現段階では全くのノープラン。
Poohもそうですが、勢いで書いたものって結構楽しいです。