breaker =調教師=4
2005.02.03
シンが見てる……。

「……ぁぁ…コイツ…スゲェ締まるな」
尻に突き刺したモノをゆっくりと掻き回し、男は締めつける後ろの感触に恍惚の表情を浮かべて声を漏らした。
光輝は犬のような格好のまま埋められた後ろの苦しさに顔を歪め、少し離れた所で涼しい顔をしているシンを睨みつけた。
「おい、さっさと済ませろよ」
「次が詰まってんだからな」
「コイツ感じてるぞ?」
複数の男に囲まれ痴態を晒されながらも後ろに突き刺さる硬いモノが小刻みに動き出すと光輝は切ない声を上げた。

「いい格好だな……」
退屈な映画でも見ているようなシンの言葉に身体中が熱くなっていく。
「見るな……」
光輝の言葉は通りぬけ、余興程度にその姿を眺めているシンの冷たい視線が突き刺さる。
晒された痴態に注がれるシンの視線が冷たい程、光輝の体温は屈辱で上昇していく。
「見るなぁっ……」
奥を貫く振動に視界は翳み、嬌声と共に涙が零れた。

「俺、待ってられねぇよ………」
「ぐっ……」
喘ぎ声を上げてだらしなく開いている口が雄臭い汁を垂れ流しているモノに塞がれる。
頭を鷲掴みにした男が容赦無く喉の奥を突き上げると、満たされていく快楽に溜息を漏らしながら深く腰を押し付けた。
後ろと前を塞がれて湿った音の中に光輝の漏らした甘い声が混じり部屋の中に卑猥な空気が充満していく。

シンが……見てる……。


薄れゆく意識の中で光輝の何かが爆発した。
凍てついたシンの視線を跳ね返すほどの熱が光輝を飲み込む。

「んんぁっ……何だよこれ………」
「あ? どうした?」
「…っ……うっ……熱い……」
光輝を塞いだ二人の恍惚としている表情に、周りを囲む男達は食い入るように行為を見守る。
「ぁっ……ぁぁんぁっ……」
攻めているにも関わらず二人は我を忘れて女のような嬌声を上げて腰を振っている。
湿った音が部屋中に響き渡り、男の体温が光輝の中と同じくらい上昇すると、熱く濡れた粘膜に生温かい体液が注がれた。
呻き声を上げて震えている男の異物が引き抜かれると、すぐに別の男が入口を塞いで休む暇も無く光輝の中を掻き回す。
一度果てても硬さを取り戻した男は再び光輝を求めて空いている入口を探し、取り憑かれたように求め続けた男達が全てを出し尽くした時、萎んだ中心とは裏腹に貪欲に渇いた欲望を満たしきれない彼等の精神は光輝に支配されていた。




「…お前も来いよ……」
シンに抱かれた時、身体も心もバラバラになるような感覚に襲われた。
別の男にいくら抱かれても満たされない想いは、シンを求める疼きに変わる。
「俺に指図する気か? 自分の立場を忘れるなよ」
部屋中に満ちた湿った雄の臭いに顔をしかめたシンは、湧き上がる欲望を無理矢理に抑えつけているようにも見える。
その証拠にシンの頬は僅かに上気し、股間にはくっきりと欲望を吐き出そうとしている証が張っている。
「来いよ……」

「いいじゃねぇか、お前もやれよ」
光輝を取り囲んでいた男達がシンを抑えつけようと伸ばした手を振り払い、熱にうなされたように焦点の定まらない男の頬を平手で殴った。
一瞬部屋の中が静まり返り、乱れた衣服を整えながら男達に向かって唾を吐き捨てる。
「お前等も誰に雇われてるのか少しは考えた方がいい」
「じょ、冗談だって……そんなマジになんなよ」
睨みを利かせたシンの表情に顔を引きつらせながら、男達は急に熱が冷めたように慌てて部屋を後にした。


「随分と楽しんでたようだが、まだ足りないのか?」
二人だけになった部屋の中でシンはあざ笑うように光輝を見下ろし、吐き出した精液で汚れ情けなくぶらさがっているモノを踏みつけた。
「…っ……お前だって俺が欲しいくせに………」
羞恥心と屈辱に晒されてシンの足の下で血液が集まっていくのを感じ、光輝の体温は再び上昇し始める。
涙を浮かべながら強気に兆発的な言葉を吐いた光輝の髪の毛を鷲掴みにして耳元でシンが囁いた。
「お前……イラつくんだよ」
シンの顔が近付くどちらともなく唇が重なり、夢中になって互いを求める。

吸いついて 絡ませて 噛みついた。
精液の臭いと唾液が絡みつく音に煽られたシンの中心がその硬さを増していく。

「なあ、教えてくれよ……どうして俺を選んだ?」

シンの中心を掴んだまま先端を指で擦り、息継ぎの合間に擦れた声でずっと心に溜めていた言葉を吐き出した。
自分でもどんな答えを求めているのか分らず、シンが答えを口にする前に怖くなって唇を塞ぐ。
シンの指が光輝の頬に触れた時、重い扉が開く音に動きが止まった。
扉の向こうに立っているゴウは絡みつくように抱き合った二人を一瞥して溜息をつく。
「小僧、お前の出荷が決まったぞ……」
よく響くゴウの低い声が光輝の頭の中で何度も何度もその言葉を繰り返した。

それからシンに抱かれる事は無くなった。
出荷されるまでの期間、ユーザーに近いタイプの調教師を使ってユーザーからの注文を徹底的に教え込まれる。
それほど注文の多いユーザーでは無かったようで、セックスよりもマナーや言葉遣いの教育に時間の多くが割かれる事になった。
外の日差しが差し込む部屋で学校の授業のような退屈な講義を聞いていると、シンに連れ去られるずっと前、まだ学校にも家の中にも居場所があった頃の日常に戻ってきた錯覚に陥った。
その間、シンが姿を現わす事は無く、気付かない内にシンの姿を探してしまう自分に苛立ちを感じていた。
憎悪の対象は彼だけでは無いはずなのに、光輝の心を揺さぶるのは凍てつくようなシンの冷たい眼差しだけだった。


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